建築・環境計画研究室
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18:07 from web
第一次卒論ラッシュの学生さんたちは,このあと卒業設計に取り組むので,卒論はいったん終わらせておいて..というふたりです.それぞれがもっているデータがおっもしろいので,たくさんいろんな分析や考察をしたいのですが,それをやっていると時間がなくなるので,大筋だけまとめて,
18:08 from web
という苦渋の日々.おっもしろいのに.データを見ているといろいろな分析方法や視点が浮かんでくるのに.それを見ないことにしておいて,というのは蛇の生ごろし...ああ.もったいない.
18:08 from web
そのままなかったことにしないで,ふたりともちゃんと,まとめ直してくださいね.卒計が終わったあとで.
18:09 from web
ふたりとも大学院進学組なことが,救いです.これが卒業組だったら,わたしもっと焦っているかもしれません.
by yamadaasukalab on Twitter
認可保育所の利用資格
特にこどもさんが複数いらっしゃる場合には,認可外保育所より認可保育所のほうが,安上がりに済むかも?
とはいえ,認可保育所の利用には資格が必要です.
認可保育所の定義は,「日々保育者の委託を受けて,保育に欠けるその乳児又は幼児を保育することを目的とする施設(児童福祉法第39条第1項)」です.
「保育に欠ける」子でなければ,認可保育所を利用する資格がないのです.
では「保育に欠ける」とはどういうことでしょう?
最終的には自治体の条例によって異なるのですが,いくつかの判断基準があります.
1.家庭外での就労
保護者が昼間家庭「外」で就労をするため.こどもを保育できない場合
(自営業等=自宅と就労場所が同一住所,を含むかどうかは自治体ごとの基準による)
2.家庭内での就労
保護者が昼間家庭「内」で日常の家事(掃除,洗濯だけでなく他のこどもの保育なども)以外の
仕事(内職等)をするため,こどもを保育できない場合
(自営業はこちらに含む自治体もあります)
3.母親の出産前後
母親が妊娠中か,出産後間もないためにこどもを保育できない場合
(期間は自治体によって異なり,例えば「産前産後2ヶ月ずつ」や「産前半年,産後3ヶ月以内」など)
4.保護者の病気や収監等
保護者が病気であったり,心身の障害,収監などの理由があってこどもを保育できない場合
5.病人等の介護
同居の家族等の介護のため,こどもを保育できない場合
(近居や,遠方だが定期的に介護に通う場合などが含まれる自治体もあり)
6.災害の復旧
火災や風水害,地震などの災害復旧にあたるため,こどもを保育できない場合
7.その他,条例が定める場合 または市区町村長が特別に認める場合
上記に類する事由がある場合
例)保護者が仕事を探す(求職)ため,こどもを保育できない場合
こども本人ないしきょうだいの障碍等のため就園が望ましいと判断される場合
など..このあたりは自治体の考え方や「余裕」によります.
*
「保育に欠ける」かどうかの判断は,最終的には市区町村での条例によります.
厚労省の通達など,待機児童の状況などに応じて,解釈が異なります.
待機児童がとても多い首都圏某地域では,「保育に欠ける要件」に多くの自治体では該当する「家庭での就労」はそもそも要件に含まれない
(上記の「7」の分類にあたり,優先順位が極端に低いのでほぼ就園可能性がない)とか.
同じ税金を払っても,同じサービスが受けられる保障なんてないんですよ~.
居住場所を選択する際には,当然,行政サービスのよしあしも判断基準にすべきですよね.
ちなみに我が家では,待機児童マップなども参考に引っ越し先を選びました..
なお,「自治体ごとの待機児童数」だけでは実態を反映しているとはいえないので,「児童数あたりの待機児童率」や
「保育所1箇所あたりの待機児童数」で考える方がホントのところです.
100の保育所に対して100人が待っている状況と,10の保育所に対して100人が待っている状況では,
単純にいえば入りやすさは10倍違うので.
しかし,ご存じないという方が意外に多くてびっくり,「両親フルタイム共働きでも保育所に入れない地域(保育所)」と
「“いまは仕事してないけど,そのうちするつもりだから(求職:上記7に該当)”でも保育所に入れる地域(保育所)」は,
たとえ同じ市区町村内でも,平気で両方あるんですよ...絶対に保育所に入りたい,ということなら
おうちの場所から考えないといけない,なんてね,考えてみたらおかしくないですかね.
厚生労働省でも,近年の世帯状況や子育てをめぐる環境変化に鑑みて,「保育に欠ける」要件の見直しを行い,必ずしも「共働き」世帯でなくとも,保育所での保育や子育て支援が受けられるようにということを考えています.
また,2011年1月をめどにまとめる・・ということになっている「こども園」構想においては,
保育に欠けるかどうかは就園基準の原則には載らない見通しです.
ただし,保育の必要度という概念は残るでしょう.実質的にはどんな議論になるのか...
・待機児童の状況に応じた就園優先ポイントの継続
(待機児童がいないまたは少ない地域では保育に欠けない子でも就園可能)
・個別契約の場合は,保育料を保護者から必ず得るための「所得ある層をターゲットにした定員枠」と
「保育の必要度に応じた定員枠(保育料徴収のリスクが残る枠)」を設ける?
・上に類して,実質「保育所枠」=「保育に欠ける枠」と実質「幼稚園枠」=「保育に欠けない枠
(欠けなくてもいい枠)」の設定?
など..保育所・幼稚園には公立だけでなく多数の私立園も含まれますので(幼稚園は私立のほうがずっと多い).
児童福祉や就労支援(働く権利の保障)だけでなく,経営的な観点からの保障も考えないといけない,ということも
あります.
どうなりますかね.
*
多くの自治体では,上記のような保育に欠ける度合いの優先ポイントを定めており,そのポイント数が高い世帯から
就園が決まっていきます.
ポイント数が同じだった場合の取り扱いについては,これも自治体マターですが,
・保護者の前年度収入(納税額)が高い世帯が優先
(社会に,より必要とされる仕事をしていると判断される)
・保護者の就労期間が長い世帯が優先
(社会に,より必要とされる仕事をしていると判断される)
・保護者の前年度収入(納税額)が低い世帯が優先
(困窮度が高いと判断される)
・母子,父子世帯が優先
(困窮度および保育の必要度が高いと判断される)
・祖父母の居住地や就労状況等を勘案
(祖父母が近居で就労していない場合は子育てを手伝って貰えると判断される)
・医療,介護,教職等の社会的必要度が高い職についている世帯が優先
(その人が就労できないことで,他の人が働けなくなる可能性が高い職業と判断される)
など..
優先条項のなかでの優先順も自治体マター!
納得できる条例のある自治体を選ぶしかないんでしょうか.
*
「保育サービスによる就労支援」という仕組みの根本は,「社会的分業」です.
児童福祉という観点ではなく,就労支援(による社会的労働力確保&税収アップ)という観点からのお話では,
「働く/働ける人」を効率よく増やすには? という議論になります.
ここに,田中さん(こども:乳児1人)と鈴木さん(こども:幼児2人)がいるとします.
時代は縄文時代です.この時期の仕事は木の実拾いです.
田中さんの夫はイノシシ狩りに出かけています.
鈴木さんの夫は,先月のマンモス狩りで負傷し,しばらく働くことができません.
2人がそれぞれ,家庭でこどもを育てていたら,あるいはこどもを背負って木の実拾いに行くと,
仕事の効率が悪いですね.家庭でこどもを育てていたら,3人のこどもたちの保育のために,
木の実(仕事の成果=食べ物=収入)はゼロです.ふたりともジリ貧です.
田中さんは言いました.
「鈴木さん,明日からウチの子預かっててくれない? そしたらわたし,木の実を拾ってくるから.
そしたら山分けしましょ」
鈴木さんは答えました.
「いいわね~.そうしましょ!」
田中さんはその週,毎日かごに3杯の木の実を拾って,帰ってきました.一日一杯半ずつの木の実のおかげで,
2家族はお腹がいっぱいになりました.
鈴木さんは言いました.
「考えてみたらね,ウチって旦那がけがしてて,ウチの方が経済的困窮度高いじゃない?
だから明日からはわたしが木の実を採ってくるわ」
そして鈴木さんは木の実を採りに行きましたが,鈴木さんは毎日,かごに2杯の木の実を集めるペースでした.
さて,経済的困窮度が高い保護者(世帯)と,収入(かせぎ)が多い保護者(世帯)と,
どちらを基準に仕事に行くことを優先する方が,みんなはよりたくさんのドングリを食べられるでしょうか?
(繰り返しますが,この議論には保育の専門性や,児童福祉の観点は含みません)
0歳児保育の場合,0歳児3人につき1人の保育士をつけることが決まりです.
保育士1人の月収+必要最低限の物品等で,0歳児3人を保育するには30万円かかるとします
(実際はもっとたくさんかかります).
保育料の上限は,収入にもよりますが8万円程度です.最低2万円は,公的補助(=税金からの持ち出し)です.
保育料を上限まで納める世帯が3世帯として,月に6万円は持ち出しです.
保育料は前年度収入(や納税額等)によって決まりますので,前年度収入が少ない
世帯のおこさんを保育することになると,公的補助(持ち出し)が多くなります.
前年度収入が多い保護者のお子さんに替えて,前年度収入が少ない保護者のお子さんを
保育することにして,結果として収入が多い保護者が働けなくなると,自治体の
収入(税収)も落ちます.自治体ダブルパンチです.
そういう話もあります.
(働けないと生活保護になる,という世帯の場合は,生活保護費=持ち出しー税収プラスと,
保育のための公的補助=持ち出し+税収マイナス,のどちらが多いか? という天秤も
ありえます)
保育の優先順位を考えるのも簡単な話ではないですね.
ひとまずは,認可保育所を利用するにはいまのところ.「保育に欠ける」ことが
条件となること,その判断基準は自治体によって異なります.ということです.
【連載1】こども施設研究者@建築計画分野による保育所・幼稚園選び
【連載2】認可保育所と認可外保育所 1
【連載2.5】認可保育所の利用資格
【連載3】施設の設置基準
秋です.
食欲の秋.スポーツの秋.芸術の秋読書の秋,
そして保育所選びの秋です.
秋って保育所選びの時期なのかって?
そうです,4月1日からの入所を希望する場合には,10月初旬~年内あたりで
申請を受け付ける自治体が多いのです.
私立・公立幼稚園も多いです.
*
こどもは年中,生まれているのに,なんだって4月1日からの入所を特別扱いするかって?
1歳になったら(育休の基本期間は子が1歳になるまで.保育所が決まらない等の場合は半年まで延長可能)
日本の制度では,4月にクラス編成が替わり(進級),この時にごそっと定員が埋まってしまうからです.
空きがある状態でクラスがスタートするケースもありますが,5月,6月・・夏前には埋まることが多いです.
0歳児で考えてみると,
受け入れ最短期間は産休明け,満3ヶ月,満5ヶ月,満6ヶ月,など保育所によって(自治体によって)異なります.
4,5月に受け入れ可能月齢になっていないと,次の年の就園を待つことになる(または認可外保育所等を
利用しながらひたすら空き待ち),ということが実際にあります.
産む/生まれる時期によって,保育所への入所しやすさが変わる!
それって不公平じゃないんですか? 同じ税金を払っているのに? 就園優先順位ポイント変わらないのに?
と自治体の担当者さんに質問をしてみたことがありますが,
「あ,やっぱりそう思われますか? でもどうしようもないんですよね..」というご返答でした.
4月を逃すと,就園できなくなってしまうので,まだ産休・育休期間の余裕はあるけど
はやく就労復帰しなきゃ,というお母さんお父さん,多いのです.
ヘンな制度! それもこれも,待機児童がいる=保育を必要とする人に,ニーズを充足するだけの保育所定員が
用意されていないから,ということなわけですが(待機児童の解消については別の視点からの話もあるのですが).
というわけで保育所・幼稚園選びの秋.
いろんな矛盾には目をつぶって秋.
みなさんどんな基準で保育所や幼稚園を選ばれるかというと,
これは東京郊外の多摩市で幼稚園選びの理由をうかがったアンケートの結果ですが
(出典:山田あすか,佐藤栄治:幼稚園利用世帯の保育ニーズに関する報告 −東京都多摩市におけるケーススタディ,日本建築学会技術報告集 第16巻 第32号、pp.255-260,2010.02)
理由の筆頭は「自宅から近いこと」.
え,そんな.
大切なお子さんの成長・発達環境選びの筆頭が「近さ」でいいんですか?
半径3m婚みたいなことでいいんですか?
という戸惑いを一瞬,覚えるわけですがこれが現実.
もちろん,「自宅から近い(無理なく通える)こと」が必須の条件であって,
そのなかに選択肢があったら,園のプログラムや雰囲気なんかを見比べて
選ぶことができるわけですけれども.
あとは,「ここは」という園の近くに住まいを構え,「ゼッタイここの園に行くんだもんね」
というやる気満々のご家庭もあり得ますし実際あるわけなんですが.
しかしですね.
近さというのはもちろん,酸素がたいがいの生き物に必要なように,必須の条件ではあるとは承知しておりますが,
大事なことって他にもありますよ.
環境が整っているところといないところでは,お子さんの伸び方が違いますよ.
環境といっても,物理的環境の話も,人的環境の話も,あるわけですが..
なお,同じ多摩市で「保育所や幼稚園はどこにあったらいいと思うか」を,自宅と就労場所との
関係で尋ねたところ,以下のような回答でした.
(出典:山田あすか,佐藤栄治:子育てと就労が両立する都市空間を考える--多摩ニュータウンを事例に (特集 子どもを育てる),多摩ニュータウン学会,多摩ニュータウン研究(12),pp.38-50,2010.03)
保育所を利用している世帯では,84%が「自宅近くがいい」と答えておられます.
幼稚園を利用している世帯では,共働き経験のある世帯では60%近くが「自宅近くがいい」と答えています.
共働き経験がないが,これから共働きしようかな?という世帯(求職世帯)では50%弱が
「自宅近くがいい」そうです.
(一般に,父母の就労時間数の差が大きい)幼稚園利用世帯,特に共働きをしてみるまえの世帯では,
「職場近くに保育所がある」っていいじゃない? と思っているわけですが,
共働きをしている世帯や(父母の就労時間数の差が比較的少ない)保育所利用世帯では,
「自宅近くがいいに決まってンじゃん!!」という雰囲気..ということです.
・幼稚園利用世帯の場合は,父母のどちらかが近距離での就労(パート就労などをイメージすると
近いと思います)のことが多い=就労場所に近いということと自宅に近いということがそれほど
意味に違いがない
・(保育所を利用して都心部に通うなど)父母の就労場所が異なると,「就労場所近く」となると
片方に送迎負担が集中し送迎の分担がしにくい
・(保育所を利用して都心部に通うなど)通勤に時間がかかる場合,通勤ラッシュ時に子連れ移動!?
なんてトンでもない
などが,こうした回答傾向の差異の背景にあると考えられます.
特に就労を前提とした場合には,「自宅の近くの園がいい」というのはかなり強いニーズだといえます.
ちなみに..
我が家が保育所を選んだ基準は,「環境」でした.
第1子が3歳になるまでは,こどもとふたりで滋賀県に住んでいたのですが(夫は単身赴任),
自宅から車で5分の保育所や,職場から車で5分の保育所は選ばず,
自宅から車で20分,職場から車で40分,の保育所を選びました.
(そのあたりは車移動前提の地域でした)
送迎が分担できるわけでもなく,フルタイム就労で,時間はすごく貴重..
毎日ざっと,働ける時間を1時間,減らしてでもここがいいというところに通わせました.
なぜ,あえて遠くの園を選んだか?
環境が違うからです.
環境の違いが,こどもの成長・発達に大きな影響を与えることを,知っていたからです.
というわけで,すでに10月なので,ちょっと遅いのかもしれませんが数日掛けて
「建築計画分野で」こども施設を研究している立場から(&保育所選びの当事者でもある立場から)
保育所・幼稚園選びについて書き綴ってみたいと思います.
論文なんかにゴリゴリ書いても,よほど特殊なおかあさま・おとうさま方は読まれませんものね.
【連載1】こども施設研究者@建築計画分野による保育所・幼稚園選び
【連載2】認可保育所と認可外保育所 1
【連載2.5】認可保育所の利用資格
【連載3】施設の設置基準
参考にどうぞ:
保育園選び情報サイト
・BJ こっそり教える保育園の探し方
・Benesse:ウィメンズパーク保育園探し