建築・環境計画研究室 (山田あすか)

東京電機大学未来科学部建築学科

建築・環境計画研究室

この研究室は,2006年4月に立命館大学にて開設され,2009年10月に東京電機大学に移りました.研究テーマは,建築計画,環境行動です. 特に,こどもや高齢者,障碍をもつ人々への環境によるサポートや,都市空間における人々の行動特性などについて,研究をしています.

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【連載1-5】実録 保育所選び第一弾(その2・選択のポイント整理)

2010-10-30 06:21:15 | 研究日誌
前回,我が家の保育所選びの経過を載せました.
今回は実際に保育所を選んだときに気にしていたこと・気になったこと(環境評価のポイント)の整理です.
個人的な「こうだったらいいのに」が入っていますので,純粋に研究成果(研究の成果から確実・
客観的に確かだと言えること)だけでは構成されていません.親御さんそれぞれにお考えや体験
からくる「こうしたい」「こう育てたい」があったりと思います.
納得できるところだけご参照ください.

1.条件
受け入れ月齢:
 ・0歳児からの保育希望だったので,1歳~受け入れ(0歳児保育なし)は論外だった
 ・0歳児保育でも受け入れ月齢には差がある.
  産休明け(つまり最短2カ月*),3カ月,5カ月,半年など保育所によって異なる.
開所時間
 ・厚労省が定める基準の保育時間は11時間.11時間を超えると延長保育と呼ぶ.
 ・この他,前後に延長保育の時間あり.A市の公立保育所では7時15分~19時の11時間45分保育.
 ・我が家の状況では普段片親・フルタイム就労(→残業はできません),土日休日出勤もあり,
  だったので,保育時間が長ければありがたかった.しかしこどもの月齢を考えれば12時間保育が
  限度だろうと思われた.
  (実際,預けはじめてしばらくは,保育所から帰ってお風呂につけるともうこどもは寝ていて,
  朝も寝ているところを起こして連れて行くので,平日は夜間の入浴・授乳・着替え・排泄処理
  だけで,「うーん・・育児というが,わたしはこの子になにをしているというんだろう」状態
  だった.あ,でも夜泣きはあったし傍からいなくなると敏感に察して泣いていたので離れられる
  ことはなかった.
  でも考えてみたら初期乳児ってたいがい寝てるしそんなものか・・? そのうち,離乳食が本格
  化し,もう少し起きているようになり,やることというか,起きていて一緒に過ごす時間が
  増えた.)
送迎
 ・A市では基本,市内交通は自家用車社会だったので,駐車場などの条件はどこもあまり差異なし.
  (布団の持ち帰りなど,荷物が多いので公共交通や自転車,歩き限定指定の保育所通所は
  実際けっこうツライ.ベビーカーや自転車を保育所に置いておけるならまだいいが,それもでき
  ないところが多い.一旦ベビーカーや自転車を家に置いてこないといけないなど)
 ・送迎に時間がかからないのは,自宅近くか勤務地近く.送迎に時間がかからなければ,実就労
  可能時間が増える.自宅から勤務地の間に保育所があれば動線効率的には最高・・それはよく
  わかっていた.しかし.
*法定産休期間は8週間.この期間内に雇用すると,雇用主に罰則あり.
 ただし医師の許可がある場合には6週間で復帰可能(仕事の内容や体調を総合的にみて判断).

2.周辺環境
・騒音や排気ガスなどの心配がある,主要幹線沿いではないこと
 保育所前または周辺の道路に歩道がなかったり,(それなのに)通行量が多いと,お散歩に出る
 頻度が低くなることも.行き帰りのちょっとした距離でも小さいこども連れで,たくさん荷物を
 もって,だと危ないことがあります.こどもどうし,お友達を見つけて走り出したりしますよね.
・住宅地の真ん中だと,騒音などの問題で,園庭があっても思いっきり遊べない状況に
 おちいることがある..これは見学すればわかる.
 周辺の住宅との関係が良好(住宅があとからできたのなら,文句の言いようもない.基本的には)
 であればこどもは思い切り遊んでいる.
 た・だ・し.
 「うるさいくらい元気な声が響いている保育所」=「良い保育所」ではない.
 本当にこどもたちが個々の遊びに夢中になって,遊び込んでいたら,意外と静かなもの.
 (プールとかは大はしゃぎでしょうが)
・周囲に散歩に出られる環境があること(公園,広場,遊歩道など),周囲に自然があること

3.園庭
・園庭はあるに越したことはない!
・あっても設えがまったくないなら残念なことです.
 こどもの興味や関心をひきそうな遊具,思い切り挑戦できる遊具やつきやま,小屋,砂場,泥場,
 木登りできる木に草むら,水場,ビオトープ,せせらぎや池..などなど.
・植栽や自然の要素はとても大事.
・「開けたスペース」で遊ぶのは学齢の4~5歳児.3歳児くらいまでは設えがあることが重要.
・小さい子の遊び場所と,大きい子の遊び場所が何となくわかれている(ゾーニングができている)
 と,こどもが年齢(身体能力や遊びの発達段階)に応じて遊べます.
 混在していると,おたがいにそれぞれのペースで遊びきれない.ごく小人数の場合は,混在して
 いることが効果的なこともあり.
・小さい子の部屋の前や近くに,小ぶりの遊びスペースが見えたら,「お,いいな」です.
・ケガを気にしてか,園庭にあまり挑戦的な遊具がない保育所もあります.
 そういうところで育つと,身体的にも精神的にも成長の余地が阻害されて,もったいないと
 個人的には思います.ケガさせたくないから,ケガしなそうと思う環境を・・という育ちだと,
 なんでもないところでケガしそうかなと個人的には思います.自分のこどもについては,後遺症が
 残らないくらいのケガならしといた方がよかろう.次に気をつけるべし.というスタンスの筆者が
 書いてます.
 ケガするかもというポイントをあえてつくっている保育所は,それこそ「ここでケガしないように」
 と,こどもたちに注意する点やコツを伝えていますし,見守りもしています.(見えない溝がある
 とかは論外ですもちろん!)適度な危険や挑戦を埋め込んである環境のほうが,かえって安全なの
 かもな~と,思いますがどうでしょう.
・キャラクターものの遊具があると個人的にはマイナス.そういうもの(記号,外から与えられる価値)
 に頼らないと保育できないのかなと思ってしまいます.
・むやみにカラフルな色彩も個人的にはマイナス.赤・青・黄・緑くらいの原色には抵抗ないのです
 が,そこに彩度の高いピンクや黄緑やらがまざると・・チープに感じませんか・・?

4.園舎
・園庭,外部に出やすい(安全性や,外遊びの機会を増やす)
・0,1歳児(~2歳児)の部屋は,それ以上の年齢のこどもの部屋(活動スペース)から少し離れ
 ているか,離れることができる
・室内には遊びのコーナーがありこどもの主体的な遊びの展開を助ける仕掛けがある
 (がらんとした保育室では保育者主導の遊びが展開してます.たいがい.)
・部屋にいろいろな「遊びのきっかけ」が見えることは大事.しかしごちゃごちゃしているのとは
 ちがう.意図を明確に伝えるには背景がすっきりしていることも大事.
 「いろいろあるな」と「なんでもかんでもあるなー」の違いというか・・気の利いた雑貨屋と,
 ド○キの違いというか(ド○キはあれはああいう商品陳列作戦なのでいいんです.気が散るように
 演出されているんです.でもこどもは「気が散る」環境では遊び込めない.なにかを「選ぶ」こと
 ができて,選んだあとはそれに「集中」できる環境づくりが大事だと思います)
 それぞれのコーナーでの遊びの趣旨がわかるし,それぞれのコーナーでの片付けの仕方がわかる
 ような設えが良いと思います.
・季節の植物や生き物,装飾やこどもの作品などが展示されている:こどもとの会話のきっかけ,
 保育所での様子を知る手がかり,親の環境感応力を高める仕掛け
・ここでもキャラクターものがあると..個人的にはマイナス.
・「くまさん」や「うさぎさん」のいかにもコドモらしさを演出する装飾,それが当たり前な感覚を
 疑うことは?(単純・チープデフォルメを普通と思っていると,芸術的感覚が阻害されると思うん
 ですが・・)1年中おなじ装飾,セロテープの切れ端でベタベタになった窓,枠どりもなくベタッと
 貼られた絵・・当たり前じゃないですよそれ.
 そこから,愛情や思いやりや,こどもの作品に対する尊敬や尊重の気持ち,良い環境でこどもを
 育てようという意欲を感じますか?
・で,しかもその装飾はどんな高さにありますか.こどもの目線の高さ? 大人の目線の高さにあっ
 たら,その装飾は保育者が自己満足するためか,保護者(管理者?)に頑張ってるでしょアピール
 するためかと言われてしまうかも...
 (小さい子を抱っこして,見せるために高い場所に装飾があることもあります.あとは寝てる子の
 目線から見えるためとか,遠くにいる子から見えるためとか.「だれのための」「なんのための
 装飾か」が読み取れて,それに納得できればOKと思います.)
・玄関先や廊下に大人が滞在できるスペースがあったり(保育者とゆっくり話していったら/こども
 が遊ぶ様子を少し眺めていったら/保護者どうし少し話していったら,などの空間的メッセージ)

5.プログラム
・音楽や英語,絵画,体操,記憶力開発などの幼児教育プログラムをウリにする保育所もあります.
・できる子,やりたい子にはいいのですが,向き不向きもあるので・・個々のペースが尊重されつつ,
 それができないことが人格や存在価値の否定にならない組み立てがされていれば,いいと思います.
 ある方法でしかできない・あるものごとを一面的な価値として押しつけられるのはイヤですね.
・例えば音楽プログラムなら,いろんな楽器があって,タンバリンジャラジャラ鳴らして踊っている
 ような,まずは楽しむことが最優先!というパートから,ハーモニカのようなかなりの技術習得を
 目指す(それを楽しむ)パートまであるような組み立てならいいのかな.
・いずれにせよ,我が家ではそれはあまり重視しませんでした.こどもはシッカリ身体を動かして,
 大笑いして,じゃれあって,集中して遊んでいるのが一番...いいよ,山手線の駅名なんか知ら
 なくて.

6.規模
・見学のレポート中にあったように,規模はとても大事.大きすぎると「集団」としての扱いになり
 がちです.
・個人的には1学年1クラス程度までっていいと思います.それだと,園全体でだいたい70~90人
 (0歳児5人,1歳児8人,2歳児12人,3~5歳児15~20(25)人)くらいでしょうか.

7.その他
・【保育士さん】
 公立保育所の方が基本的にベテランさんが多い.私立園は若手で比較的回転率が高いことが多いで
 す(ぶっちゃけ,人件費の問題で若手を採用して若いウチだけしかできない仕事な感じの経営のと
 ころもあります).
 でもベテランさんだからいい,若手だから悪い,ということではありません.ベテラン保育士さん
 に「いまどきの若いママさんはこれだから」みたいな見下した対応をとられてハラが立ったとか,
 若手でいま求められている保育観・子育て観をきっちり身につけて熱意をもって接してくれ,感覚
 も近くて話しやすかったとか,保護者さんの声いろいろです.
・【保育理念】
 (良きにつけ悪しきにつけ,)私立園の方が独創的・特徴的な保育理念を掲げていることが多いで
 す.公立園の場合はどこも似ているというか・・県や市ごとに特徴があることはあります.「人権
 教育に力を入れています」とか.好き好きですね.
 総じて,私立園の方が「ウチに来たなら,ウチのヤリカタで」を主張するかと思いきや,公立園で
 は融通が利かなくてという声もあったりなので,このへんは保育理念もさりながら,現場の保育士
 さん次第という部分も大きいかも.
・【保護者さん】
 公立園&認可保育所の方が,いろんな保護者さん,つまりおこさんも,がいる傾向・・みたいです.
 上記のように,私立園の方が保育理念への共感ということで一定のフィルターがかかることも影響
 しているのかも.
 幼保一体型施設の調査をしているなかでは,「保護者の働き方がいろいろだと,園全体の行事への
 参加姿勢やなんかが違うので,トラブルや溝のもとになることもある」という話もあります.
 いろんなご家庭があるというのは,こどもの発達環境としてはいい面もあり(いろんなおこさんが
 いるということを肌で感じて育つということなので),難しい面もありということでしょうね.
 程度問題という部分もあるかと思うので,このあたりも「どっちがいい」ということではないで
 しょう.
 *例えば以前いっていた公立園では,「いろんなご家庭があり,いろんなおこさんがいるので」と
  いう理由で,「父の日」「母の日」「敬老の日」関連のイベントや制作が一切ありませんでした.
  「クリスマス」「ハロウィン(これはまぁ比較的レアケースかも)」などの,たしかに特定宗教
  に関連するイベントや制作もなしです.
  対する,宗教法人が運営する私立園では毎日お祈りの時間があったり,お説法があったり.
  いま行っている私立認証保育所では先日ハロウィンパーティがありました.ハロウィンなぞつい
  ぞ縁のなかった我々夫婦ですが,「なんでも祝っとこうというのはむしろ日本人らしいねえ」と
  ひとしきりノリました.(ケルト民族の収穫感謝祭が起源とか?ハロウィンはやるのに新嘗祭は
  しないんだな.クリスマスは祝うのに花祭りはしないんだな,そういえば・・)あんまり深い
  信念も信仰もないものですから・・・
  (あ,だけど「お盆休み(お盆なので職員シフトの関係でできれば自宅保育にご協力を期間)」
  はありましたね.ご家庭の事情もあるのでといいつつも職員にも事情もあるということですね)
  それから,こどもたちのおもちゃの人形.赤ちゃんのお世話遊びというジャンルがあるわけです
  が,肌の色がいろいろな人形がいる園をみてきました.「いまのところ多くの」日本人(アジア
  人)の肌の色だけの人形の園もみてきました.色鉛筆を色別に分けてたてておく鉛筆立ての文字,
  「はだいろ」ではなく「うすオレンジ」と表示・・とか.地域や園にもよりますが,そういう時
  代なんですねえ.

【連載1-1】こども施設研究者@建築計画分野による保育所・幼稚園選び 
【連載1-2】認可保育所と認可外保育所 1
【連載1-2.5】認可保育所の利用資格
【連載1-3】施設の設置基準
【連載1-4】実録 保育施設選び・第一弾
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