建築・環境計画研究室 (山田あすか)

東京電機大学未来科学部建築学科

建築・環境計画研究室

この研究室は,2006年4月に立命館大学にて開設され,2009年10月に東京電機大学に移りました.研究テーマは,建築計画,環境行動です. 特に,こどもや高齢者,障碍をもつ人々への環境によるサポートや,都市空間における人々の行動特性などについて,研究をしています.

*当ページの文章や画像の無断引用・転載を禁じます*

就学前乳幼児教育・保育施設における,乳幼児の空間認知能力や活動規模を踏まえた建築空間の適正規模の研究

2010-03-18 15:23:16 | □研究・設計業績(論文/プロジェクト等)
[図:山田あすか・宮本朋和,こどもの「環境と空間」研究会シンポジウム2009.03.13での発表pptからイメージとして抜粋]

調査フィールドは保育所,幼稚園,幼保一体型施設.
活動の展開の実際や,設えとの対応のなかで,どれくらいの面積・気積がこどもたちの成長・発達のための空間として適しているかを探る.

カテゴリ「研究日誌」に,2009.03.14に行われたシンポジウムでの報告概要がありますので参照してください.


(2010.03.18追記)
2008-2009年度でいただいていた厚労科研の期限が終わり,研究は一旦終了しました.
ここから,査読論文として投稿するという日々が続くわけですが・・ひとまず.
以下,この厚労科研の主査:佐藤将之先生(早稲田大学)による研究全体の成果抄録です.

・・・・・・・・・・・・・・・・・copy right@佐藤将之,山田あすか,橋本雅好,古賀誉章,倉斗綾子

厚生労働科学研究費補助金(政策科学推進研究事業)研究成果抄録(H21年度終了課題)

研究課題名:保育・生活場面の展開と心身や空間把握能力の発達からみた保育施設
      環境の所要規模に関する研究
研究期間(年度):H20~H21
研究代表者:佐藤将之(早稲田大学)
研究分担者:山田あすか(東京電機大学),橋本雅好(椙山女学園大学),古賀誉章(東京大学)

1.研究目的
 就学前保育施設は乳幼児の収容数の量的改善が課題とされ、適切な環境としての整備は発展途上である.児童福祉施設最低基準や幼稚園設置基準の乳幼児が居る施設の設置基準面積をみると、1.65㎡、330㎡といった「畳」単位の最低設置基準が散見され、その算出根拠は曖昧である.そこで本研究では、1)保育施設における保育や生活の場面を把握し、2)保育施設に通う園児の心身や空間把握能力の発達を物理的・建築的側面から明らかにする.それによって、3)保育施設環境の適正規模や諸空間に求められる1人あたり面積の基準を検討することを目的とした.


2.研究方法
 研究の視点として、①)設定された保育・生活場面、②)自然発生的な乳幼児の行動、③)保育者の環境受容と評価、④)乳幼児の心身の発達、を設定し、保育施設における設定と自由場面の双方,また乳幼児と保育者双方の観点を分析の視点に据えた.)アンケート・ヒアリング調査、)観察調査、)空間認知能力に関する実験的調査、によって、 A)保育や生活の場面の展開や B)乳幼児の行動様態を明らかにし、運営の理念や指針に対する視座を得ると共に、 C)運営プログラムを踏まえた保育施設の適正規模や諸室における面積等の検討を行った.


3.研究結果及び考察
本研究の結果及び考察の概要は以下の通りである.

 保育所、幼稚園、認定こども園計6550件を対象としてアンケート調査を実施した.
1)施設面積や園児数などの施設規模は、認定こども園が他の2つよりも大きい傾向があった.保育所・幼稚園では,1クラス増えると延床面積が約100㎡増加する.学齢別保育室の比較では,園児が過ごす環境という面では,幼稚園と保育所の間に大きな差がない.
2)施設の広さ評価では,園庭,遊戯室について保育所が他の施設よりも狭いと評価する傾向が見られた.処遇規模に関する保育者の評価は,担当するクラスの園児1人あたり室面積や現員による影響が見られる.
3)保育スタッフが現在使っている保育室に適すると考える理想人数から算出した保育室の1人当たり面積では、幼稚園保育所の3~5歳児に有意差はなく、2.11~2.95㎡/人となり、現状の最低基準よりも約1.1倍高い値となった.
4)保育スタッフが考える最も適した保育集団の人数では、保育所の5歳児、幼稚園の5歳児、幼稚園の4歳児、の3群が20~25人となった.3,4歳児では幼稚園の方が適切だと考える人数規模が大きい傾向が見られたが,幼稚園現行基準の35人は保育規模として大きすぎると評価されていることが明らかとなった.

 保育所、幼稚園(計40件)を対象として観察調査を行った.
5)保育室の中には,家具などを必要最低限にとどめるものと,積極的に家具を導入してコーナーを設けているものがあった.観察調査によって,実際に使われている面積を調べたところ,保育室内に遊びに対応したコーナーを設け空間を分節化することによって保育室内の面積の有効活用率が増す可能性があることが指摘された.
6)壁際・隅角部および狭隘部の利用率は低い.この傾向は,動的な活動だけではなく静的な活動でも同様であった.

 幼児の心理的自我領域、空間把握に関する実験を行った.
 A)3歳5ヶ月から6歳5ヶ月までの幼児212名を対象に指示物を答える実験を行った.
7)5歳児(年長児)の過半数が指示物を「アレ」と答えるのが675mmにおいて初めて過半数を超え、450mmとの回答割合を比較すると、約600mmで過半数が指示物を「アレ」と答えることが推定できる.この数値は、山田ら(同研究費補助金H19年度終了課題)が行った、保育室内の設え周りで活動する際に周りの設えから離れる距離と近似している.
8)幼児においての「コレ」領域とは、225mm~450mmまでを指し、おおよそ「手の届く範囲」であった.学齢があがるに従ってコレ領域が狭まり、アレ領域が広がる傾向があった.「ソレ」領域は極めて少なかった.
 B)満5歳38名を対象に保育施設内における音環境の把握を尋ねる実験を行った.
9)幼児に対し「何の音」かと聞いてもその音を発するモノを答えるのではなく、その音が発生する場面を構成する「場所」「人」「行為」を答える傾向が強い.つまり,場所や人や行為が音環境把握のための環境の手がかりとなっていることがわかった.保育施設一人当たり面積の最低基準緩和は、人口密度が増えることによってこのような環境の手がかりの喪失につながる可能性がある.


4.結論
 本研究では、保育施設における保育や生活の場面を把握し、保育施設に通う園児の心身や空間把握能力の発達を物理的・建築的側面から明らかにすることができた.保育所、幼稚園、認定こども園を横断的に分析し、設置基準について統合を図ることが現実的、効率的であることを明らかにできた.また幼児の空間把握能力実験では、心理的自我領域を明らかにし、有効面積を算定するための基本データを得られることができた.
 以上に基づいて保育施設の適正規模の検討を行った.下記に政策への反映案を示す.


5.政策への反映
 園児1人当たりの保育室面積など保育所・幼稚園・認定こども園による違いが無かったことから、それぞれの設置基準について統合を図ることが現実的、効率的である.また,様々な活動規模に対応できることや、昨今求められる多様な保育サービスに伴う人数変化にも対応するためには、多様なスケールの空間を提供すべきである.
 例えば、動的活動に使用できる保育室以外の保育面積が確保されていれば保育室の一人当たり面積は現行基準より小さくとも問題はない可能性がある.したがって必要面積の策定にあたっては,保育室のみならず施設全体の面積基準を検討する必要がある.
 さらには、壁際・隅角部の利用率の低い部分をより少なくするためには、小さな空間に分節することが有効となる.単なる面積基準ではなく、室形状や家具配置などの使われ方を含めた有効面積という考え方を基準とすることが有効である可能性が示唆された.
 また、子どもの人数規模に応じて保育者の評価に変化がみられたことから、保育士1人当たり、あるいはクラスの人数規模に関する検討が必要である.
 本研究の成果は,今後の就学前保育施設施策の充実に際し,より良質な建築空間の計画と整備に寄与し,また広く乳幼児の発達環境の構築に資するものとなると考える.


6.研究発表
①論文発表
1) 就学前保育施設の施設状況とその評価 全国保育施設アンケート調査より、倉斗綾子・山田あすか・佐藤将之・古賀誉章、日本建築学会技術報告集第15巻 第31号,pp.865-870、2009年10月【査読付論文】
2) (投稿準備中)幼児の指示代名詞による領域分節に関する調査研究 幼児の心理的自我領域に関する研究、早川亜希・橋本雅好・佐藤将之、日本建築学会計画系論文集【査読付論文】
3) (投稿準備中)就学前保育施設におけるスタッフからみた保育施設規模に関する研究、倉斗綾子・山田あすか・佐藤将之・古賀誉章、日本建築学会計画系論文集【査読付論文】
4) (投稿準備中)活動面積と設えからみた就学前保育施設の保育室必要面積に関する研究,山田あすか・藤田晴彦・早川亜希・佐藤将之・古賀誉章・倉斗綾子,日本建築学会計画系論文集【査読付論文】
②学会発表
1) 保育者と幼児からみたコーナー保育環境の評価に関する研究、白石雄貴・佐藤将之・若盛正城・佐野友紀、こども環境学会2009大会(ポスター発表)、こども環境学研究Vol.5,No.1,pp.63、2009年4月
2) 各種就学前保育施設の概況とその差異について 幼稚園・保育所・認定こども園の全国アンケート調査より、倉斗綾子・山田あすか・佐藤将之・古賀誉章、2009年度日本建築学会大会学術講演梗概<オーガナイズドセッション>、E-1分冊,pp.21-24、2009年8月
3) 幼児の指示代名詞による領域分節に関する調査研究 幼児の心理的自我領域に関する研究その1、早川亜希・橋本雅好・佐藤将之、2009年度日本建築学会大会学術講演梗概<オーガナイズドセッション>、E-1分冊,p.41-44、2009年8月
4) 就学前保育施設における幼児の音環境把握に関する研究、佐藤将之・野口紗生・若盛正城、こども環境学会2010年4月
5) (投稿準備中)活動面積と設えからみた就学前保育施設の保育室必要面積に関する研究,藤田晴彦・山田あすか・早川亜希・佐藤将之・古賀誉章・倉斗綾子,2010年度日本建築学会大会学術講演,2010年9月
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【総研】特別支援学校と障碍幼児保育施設におけるこどもの活動からみた環境構築に関する研究

2010-03-18 09:53:56 | □研究・設計業績(論文/プロジェクト等)

(東京電機大学総合研究所 研究課題(一般研究)2010-2011)

① 研究の背景(着想に至った経緯,研究経過,研究成果との関連および準備状況)
 本研究は,近年変革の途上にある「特別な支援を必要とするこどものための環境のあり方」について,障碍をもつこどもの発達や教育・療育,建築・環境計画の両面から考究しようとするものである.これまで応募者は,保育所に通うこどもや障碍者施設での人々の生活行動特性や,特徴的な居場所あるいは活動場面における居場所選択理由に着目した人と環境との関わり方について継続的に研究を重ねてきた.この研究は,その一連の研究成果を踏まえ,障碍をもつこどもの生活環境を対象としてさらに研究の発展を図ろうとするものである.平成21年度にこの研究に着手しており研究フィールドの開拓や調査手法の検討を行っている.

② 研究の目的
 本研究では,障碍をもつこどもが特別な支援を受けながら生活するなかで成長・発達を遂げる場としての特別支援学校と障碍幼児保育施設をフィールドとして,こどもの生活実態,行動特性,環境との関わりやその発達の様子を明らかにすることを目的とする.

 

研究成果の概要:

(ただいま工事中)

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