建築・環境計画研究室 (山田あすか)

東京電機大学未来科学部建築学科

【科研(挑戦的萌芽)】日本版CCRCをはじめとする福祉型複合コミュニティのあり方に関する探索的研究(2016-2018)(主任研究者)

2017-05-03 22:17:56 | □研究・設計業績(論文/プロジェクト等)

科研データベース

 

研究目的(概要)

 本研究では,本格的導入が検討されるCCRCを含む介護・看護・生活支援機能の一体的提供による高齢者を含む住人の互助的生活支援コミュニティを,既存の制度の枠組みを超えて“福祉型複合コミュニティ”と総称する。こうした取り組みの拡がりは多様だが,その全体像を把握することで,整備の可能性を拡げ,将来的な国土計画や高齢期のQOLの向上,持続的な地域経営に資する資料とできる。そこで,国内での地域性や運営者の創意工夫に応じた多様な事例を“地方都市と都心部”“新築と改修”“パッケージ型とネットワーク型”といったモデルで捉え,居住者の生活や交流の様子,地域への波及効果などの包括的視点で整理し位置づけ直すことで,今後の整備や制度利用における「選択」や,効果的整備のための資料としてとりまとめる。


① 研究の背景

 諸外国に先んじて人口減少を伴う少子・超高齢社会を迎えた我が国では,高齢期の安心・安全な住まいの確保や,その支援を行う看護・介護体制の整備,また支援に係る人的保証が課題となっている。ことに,地方都市では今後高齢化の進展に伴う高齢者の減少によって地域の看護・介護従事者の失業や地方都市の産業構造の激変と衰退,都心部では高齢者の増加や高水準に生活費による看護・介護者等資源の不足や生活の質の維持不全などが危惧されている。こうした事態の解決策として,都心から郊外や地方都市またその辺縁部への退職後の住み替えによる人口移転やその仕組みづくりが構想されている1)2)。この一環として,看護や介護,生活支援機能の一体的提供によって,退職者に退職期から終末期までの安心・安全で持続的な生活を保障し,同時に地域の人口や雇用・経済・社会保障の安定化を図る事例が国内で散見されるようになった。応募者らはこうした事例の見聞や,これまでの地域密着型高齢者施設等を中心とした研究によって,要介護状態でない高齢者や,地域資源を活用して「自宅」に住まう高齢期の生活を包括的に支援するコミュニティの整備を建築・都市の視点がサポートできると考えるに至った。 1)官邸情報公開site,日本版CCRC構想有識者会議,日本版CCRC構想(素案),<https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/meeting/ccrc/ccrc_soan.pdf>,参照2015.10.27 2)サステナブル・プラチナ・コミュニティ政策研究会 三菱総合研究所 日米不動産協力機構,サステナブル・プラチナ・コミュニティ (日本版 CCRC)政策提言,<http://www.mri.co.jp/news/press/uploadfiles/20150128teigen.pdf>,参照2015.10.27

 

② 研究期間内に何をどこまで明らかにしようとするか

 本研究では,介護・看護・生活支援機能の一体的提供による高齢者を含む住人の互助的生活支援コミュニティを“福祉型複合コミュニティ”と総称し,その全体像を整理する(図1)。福祉型複合コミュニティには,後述するパッケージ化された企画コミュニティから,既存の住生活環境に看護・介護機能を付加することで実態として継続支援環境を具現化したコミュニティまで,多様な可能性が存在する。これらは根拠とする制度や地域,組み込む機能の相違によってそれぞれ異なるものと認識されているが,多様な取り組みを包括的視点で整理し位置づけ直すことで,国土全体の持続可能な発展と高齢期のQOLの向上に資する様々な知見を共有できると考える。こうした観点から高齢期の住生活支援の仕組みを一貫した視点で整理し,地理的条件等の地域性や高齢期の生活者個々の志向の多様性に応じた,今後の拠点整備や制度利用,地域経営の「選択」を支援する資料を作成することが本研究の目的である。

 

③ 当該分野における本研究の学術的な特色及び予想される結果と意義

 本研究課題は,課題の性質上,建築と都市,施設/コミュニティ運営,利用者・居住者の生活や心理という,ソフトとハード,ミクロとマクロの視点から全体像を横断的かつ包括的に捉えようとする点に学術的特色がある。研究成果として想定する,多様な福祉型複合コミュニティのモデルは,整備が進められようとしているCCRCの概念を拡大するものであり,高齢期の安定的な居住と,都市・郊外・地方の適切な人口・社会保障の循環のシステムづくりに寄与すると考える。

 

関連研究メモ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

■福祉型複合コミュニティのあり方

 ・高齢者を支える地域,人口対流,生涯活躍のまち(高瀬金子

 ・集合住宅の改修による福祉型複合コミュニティへの展開(八角

 ・多世代共生住宅の空間構成と多様な住民の生活(鈴木

 ・「認知症カフェ」をはじめとする多様なコミュニティカフェと「地域」の再構築(齋藤

 

■こどもの保育拠点,保育・子育て・子育ちを支える建物や都市のあり方

 ・保育の場づくりと規模(黒巣)*2014修論

 ・保育拠点と都市の環境づくり(小林陽) *2012修論

 ・保育施設の計画の歴史的経緯と今後の展開(青木田邉

 
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