街路空間における滞在行動に関する研究
日本建築学会大会学術講演梗概集2001年9月 吉野真也 奥田宗幸
1. 背景と目的
人々は街路において、腰を下ろし周囲で起きる出来事を眺めたり、休息したりする傾向がある。人の滞在行動を促進したり、制限する空間構成要素及びその利用のされ方を把握することは快適で賑わいを持った街路を設計する際に非常に有用だと考える。本研究では、滞留行動の分布・滞留状況と空間構成要素の対応関係から、空間構成要素がいかなるとき、街路利用者の滞留行動が発生するのかを実施調査した。
2. 研究の概要
<事例選定条件>
1.歩行者専用街路またはそれに準ずる街路であること
2.商業地域(又はそれを含む区域)に面する街路であること
とした。
<実施調査と分析用データの作成>
デジタルカメラにより滞留行動を撮影し、その位置を地図にプロットした。プロットした点が5ヶ所を越える部分を滞留箇所とし、そこで物理的要素を実測した。
<分析と考察>
街路全体の視点と滞留箇所における部分的な視点から、滞留行動の分布・滞留状況に影響すると思われる空間構成要素の項目を挙げ分析・考察した。
3. 街路全体にみる滞留行動をアフォードする構成要素
街路からセットバックした部分、街路上に点在する構造物周辺、公共性の高い建物の外部空間、テイクアウト可能な食物サービス周辺に滞留行動が集中し発生しており、それら構成要素が滞留行動をアフォードしていると考えられる。
4. 滞留箇所にみる滞留行動をアフォードする構成要素
座具として利用できるもの周辺とそれらが近接している箇所、腰掛けた際の背面の設えとして植栽を有する箇所などに滞在行動が多く発生しており、それらが滞留行動をアフォードしているといえる。
5. 滞留行動をアフォードする手法
<街路全体における手法>
・人がとどまれる場を生成すること(構造物を点在させる、凹凸をつくる)
・着座する場所を多様に用意(街路の外縁の手すり、植栽帯の配置)
・飲食しながらの滞在行動を可能にする(テイクアウト可能な食物サービス) などがあげられる。
<部分的な箇所における手法>
路面との差異を生み出し、座面を用意すること、植栽帯を背面に配し背面の仕上げから滞留
アフォードする手法などが考えられる。
6. 総括
実施調査を基に街路における滞留状況とそれに影響を与えている空間構成要素を街路全体からのマクロ
な視点、滞留行動が多く発生した滞留箇所でのミクロな視点から把握することが出来た。滞留状況と空間
構成要素の様態との対応関係から空間構成要素の持つアフォーダンスを抽出し、設計段階でこれらを用いることで、これれまでの設計とは異なる人間の行為を主体にした手助けとなるだろう。
7.感想 空間の構成要素も大切であるが、設計の際は、その街路を、通勤・通学経路として用いる人のことも考え、安全性や快適性など、他の要素も考慮することが滞留行動を促す要因としては大切である。
歌代有起
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます