「古都逍遥 京都・奈良編」「花の詩」「日常のこと」や花や風景写真

 京都・奈良を中心に古刹・名刹や「花の詩」等の紹介。花や風景写真、オリジナルの詩、カラオケ歌唱など掲載しています。

「平岡八幡宮」(ひらおかはちまんぐう)

2006年10月05日 08時58分30秒 | 古都逍遥「京都篇」
 今は昔、白玉椿伝説がある。「願い事をすると、白玉椿(白い花の椿)が、一夜で花開き、願い事が成就した」という。
 白玉椿は茶道においても、茶花としてふさわしい花と愛され、また、奈良東大寺二月堂のお水取りには欠かせない花でもある。そして古き頃より吉兆の花として武将たちに賞用されてきた。

 樹齢200年を越えてもなお美しく白玉椿の花を咲かせる神社があると知り出向いた。
 京都の北、大覚寺に通じる道、福王子の交差点を京北町に向かう周山街道に入り高尾方面へ行くと右手に見えるのが「平岡八幡宮」、それである。同社は高尾山神護寺の守護神として、弘法大師が平安初期(809年)12月10日、自ら描いた「僧形八幡神像」を御神体として、宇佐神宮(大分県宇佐市・全国4万社余の八幡宮の総本宮)より勧請、創建された、山城国最古の八幡宮である。

 3月には椿祭りが催され、寝殿内の天井に描かれた44枚の極彩色の花絵が公開される。この花絵は、江戸時代末期、文政10年(1827)、画工、綾戸鐘次郎藤原之信によって描かれ、内陣鴨居にも、同じ極彩色で紅白のし袋から、紅白梅、紅白椿が描かれている。
 これらの天井画は、室町時代、足利義満の御所(室町第)が「花の御所」と呼ばれていたことから義満再建時に描かれた可能性もあると宮司は話していた。

 交通:JRバス、市バス8系統高雄行き、平岡八幡宮前下車、京都駅より約40分
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「平安神宮」(へいあんじんぐう)

2006年10月03日 21時09分50秒 | 古都逍遥「京都篇」
 京都の近代文化のメッカである岡崎公園に目にも鮮やかな巨大な鳥居を配する「社」がある。もはや説明には及ばないその社は「平安神宮」である。
 当宮は平安遷都1100年を記念して、皇紀2555年の明治28年(1895)に遷都の生みの親ともいえる第50代桓武天皇を祭神として創建したもので、平安と名が付くものの近代の建造物である。
 建設の発端となったのは、維新動乱による京都の衰退ぶりは目を覆うものがあった。官軍と幕軍の度重なる戦乱で市街地は荒廃、しかも維新によって首都が東京へ遷ったことにより京都の人々は大きな失意に陥っていた。
 人々は東京に負けるな都の誇りを示そうと立ち上がり、京都復興への市民の熱い思いが結集され数々の復興事業を展開した。この熱意が結実し平安神宮が創建されたのである。特に応天門と大極殿は、平安京大内裏朝堂院にあった原型を8分の5に縮小して復元した。そして昭和4年、古都の意地を誇示するかのように巨大な鳥居が造られた。
 その後、皇紀2600年にあたる昭和15年には、市民の懇意によって平安京有終の天皇、第121代孝明天皇の神霊を合祀し、「日本文化のふるさと京都」の親神として桓武天皇とともに、広く崇敬を集めることとなった。
 このとき、本殿・祝詞殿・内拝殿・翼舎・神楽殿(かぐらでん・儀式殿)・額殿(がくでん)・内外歩廊斎館(祭典の為参篭する館)・社務所などが増改築され、これまでの社殿も大修理が行われ。
 本殿の奥の神苑は約3万平方㍍に及ぶ日本庭園で、季節には桜や花菖蒲が美しい花を咲かせる。

 主な建造物を紹介しておこう。
◇本殿: 七間社流造・銅版葺・素木造り、昭和54年建造。
◇内拝殿:切妻造り・銅版葺・一部丹塗素木造り、同年建造。
◇大極殿(外拝殿):寝殿造り・碧瓦本葺・丹塗、高さ16.7㍍・桁行33.3㍍・梁 行12㍍、明治27年建造。
◇蒼龍楼:屋根中央と四隅に望楼を設けた二重閣、碧瓦本葺・丹塗、同年建造。
◇白虎楼、神楽殿(儀式殿):入母屋造・碧瓦本葺・丹塗、昭和15年建造。
◇応天門(神門): 二層楼碧瓦本葺・丹塗、高さ19.3㍍、明治27年建造。
◇大鳥居:明神形・鉄筋コンクリート造・丹塗、高さ24.2㍍・柱真真18.2㍍・柱 直径3.63㍍・笠木長さ33㍍、昭和4年建造。
◇尚美館(貴賓館):木造屋根入母屋造桧皮葺(京都御所より移築)、大正元年。
◇泰平閣(橋殿):木造寄棟重層造り総桧皮葺(同移築)、同年。
 当宮のもう1つの魅力は、第七代目小川治兵衛作庭の神苑(庭園)で、明治時代の代表的な池泉回遊式庭園(国指定名勝・昭和50年指定)として広く内外に知られている。
 社殿を取り囲むように東・中・西・南の四つの庭からなり、春の紅しだれ桜、初夏の杜若・花菖蒲、秋の紅葉、冬の雪景色と四季折々に風光明媚な趣を見せ、訪れる人の心を平安へと誘ってくれる。
 入り口を入ると、雅人たちがそぞろ歩いたであろうと思われる平安時代の庭へとタイムスリップする。「野筋」(のすじ・入り組んだ細い道)と「遣水」(やりみず・幾重にも流れ込んでいる小川)の様式が取り入れられ、特に「平安の苑」は平安時代に著された書物(伊勢物語・源氏物語・古今和歌集・竹取物語・枕草子)に記されている200種余りの植物が、その和歌や一節の紹介とともに植栽され、万葉の草花を楽しむことができる。

 細道をさらに進むと翔鸞池(しょうにんいけ・昭和56年完成)に出る。周囲を木立にかこまれ一角には滔々と水の流れ込む滝があり、安らかな心地にしてくれる。池の辺には花菖蒲(200種・2000株)が群生し、初夏から秋口にかけては池の水面に睡蓮と河骨(こうほね)が彩りを添える。 西神苑から小川沿いの林間を抜けると、視界が開け蒼龍池の風景が広がる。池に浮かぶ珊瑚島までは臥龍橋(がりょうきょう)と称する飛び石が配置され、周囲には杜若が群生。この池は、天正年間に豊臣秀吉によって造営された三条大橋と五条大橋の橋脚が用いられている。この橋を渡る人には、「龍の背にのって池に映る空の雲間を舞うかのような気分を味わうことができる」という小川治兵衛の作庭の意図が織り込まれているという。飛び石を5~6個渡ってみたが、足元が危うい年齢の私は、渡りきれず引き返してしまった。

 東神苑に歩みを進めると一大パノラマな景観に一瞬足が止まる。北から南を望むと、栖鳳池の辺に建つ尚美館や釣殿の泰平閣越しに東山連峰の華頂山を借景とした雄大な眺めが広がり、また中国の伝説の仙郷「蓬莱山」をあらわした「鶴島」と「亀島」は松を頂いて池に浮かぶ。
 浮舟をも思わせる泰平閣で休むと、広大で池に周囲の風景がとけ込み、雅やかな舟遊びが味わえる。特に春ともなれば対岸の紅しだれ桜が池を包み込むように煌き、言葉を失うほどの絶景である。

 10月22日に開催される京都三大祭の1つ時代祭は、平安神宮の創建と平安遷都1100年祭を奉祝する行事として、明治28年に始まった。
 時代祭行列は、当初は6列、500名の規模であったが、現在では明治維新時代、江戸時代、安土桃山時代、吉野時代、鎌倉時代、藤原時代、延暦時代の7つの時代を18の行列に分けられている。また江戸時代婦人列、中世婦人列、平安時代婦人列は京都の五花街が輪番で奉仕されるなど、総勢で約2000名もの人々が参加する1大行列である。

 所在地:京都府京都市左京区岡崎西天王町。
 交通:京都市営地下鉄東山駅1番出口、徒歩5分。またはJR京都駅、市バス5・100系統で京都会館美術館前下車、徒歩すぐ。
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「野仏庵」(のぼとけあん)

2006年10月01日 16時23分45秒 | 古都逍遥「京都篇」
 宮本武蔵が吉岡一門と死闘を繰り広げた一乗下り松に程近い所に、京都随一の名刹「詩仙堂」がある。京都を訪れの人は、この詩仙堂を堪能すると、「曼殊院」や蕪村の隠遁の地「金福寺」へと足を向けてしまう。「野仏庵」は、この詩仙堂のほんの10数歩、坂を上がったところに佇んでいる。雨が降る日にここを訪ねれば、一段と情緒を覚えるにちがいない。詩仙堂の入り口から概観を見ると、土塀から藁葺きの屋根をのぞかせ、紅葉と孟宗竹が風にそよぎ、葉ずれの音が爽やかだ。

 藁葺きの門を入ると竹の根もとと、石畳の正面に石仏が迎える。右に折れると苔に身を包み込んだ不動像が滝に打たれて立っている。奥へ、弁柄塗りの主屋が重厚な構えで建ち、呼ぶ鉦を軽く叩くと家主が顔を出し中に招いてくれる。屋敷は京都近郊にあった淀の庄屋の旧宅を移築したもので座敷の造作が豪華である。茶席の陶庵席は、丹波須知村から移築されたもの。この一つに雨月席があり「雨月物語」の作者、上田秋成ゆかりの茶室である。秋成は茶を愛し、特に煎茶を好んだという。内部の襖絵は秋成の友人呉春の筆による。床には秋成の筆の「猫恋妻」の歌幅がかけられている。

 野仏庵は、湯豆腐の老舗「順正」の創立者で、古美術愛好家で知られる上田堪庵によって設立された。漢詩人・書家として名高い石川丈山が隠遁した。庵の正門は、明治・大正・昭和の元老、公爵西園寺公望が、維新前夜、新撰組に追われ丹波須知村に潜んださいの寓居の門を移したもの。
 庭に下りれば藤原時代のものと伝えられる多宝塔が過ぎし歴史の思いを偲びながら威風堂々たる姿で立ち、楓に覆われた細道には無縁仏が無数に居並び、無常の現世を静かに見つめていた。その奥に茶室があり、四季折々の花を咲かせ、本庵の庭とはまた風情を異にしている。
 
 交通:JR京都駅から市バス5、特5で一乗下り松下車、徒歩10分。  
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