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水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

「羅生門」の授業(3) 第1場面 心情説明

2015年06月10日 | 国語のお勉強(小説)

 

7 どうにもならないことを、どうにかするためには、手段を選んでいるいとまはない。選んでいれば、築土の下か、道端の土の上で、飢え死にをするばかりである。そうして、この門の上へ持ってきて、犬のように捨てられてしまうばかりである。選ばないとすれば――下人の考えは、何度も同じ道を低回したあげくに、やっとこの局所へ逢着した。しかしこの「すれば」は、いつまでたっても、結局「すれば」であった。下人は、手段を選ばないということを肯定しながらも、この「すれば」のかたをつけるために、当然、そのあとに来るべき「盗人になるよりほかにしかたがない。」ということを、積極的に肯定するだけの、勇気が出ずにいたのである。
8 下人は、大きなくさめをして、それから、大儀そうに立ち上がった。夕冷えのする京都は、もう火桶が欲しいほどの寒さである。風は門の柱と柱との間を、夕闇とともに遠慮なく、吹き抜ける。丹塗りの柱にとまっていたきりぎりすも、もうどこかへ行ってしまった。
9 下人は、首を縮めながら、山吹の汗衫に重ねた、紺の襖の肩を高くして、門の周りを見回した。雨風の憂えのない、人目にかかる恐れのない、一晩楽に寝られそうな所があれば、そこでともかくも、夜を明かそうと思ったからである。すると、幸い門の上の楼へ上る、幅の広い、これも丹を塗ったはしごが目についた。上なら、人がいたにしても、どうせ死人ばかりである。下人はそこで、腰にさげた聖柄の太刀が鞘走らないように気をつけながら、わら草履を履いた足を、そのはしごのいちばん下の段へ踏みかけた。

Q9「下人の考えは、何度も同じ道を低回したあげく」について、
  (a)「低回」の意味を記せ。
  (b)「下人の考え」は、何と何の選択肢の間を「低回」しているのか。
A9(a)思いにふけりながら行ったりもどったりすること
  (b)盗人になるか、飢え死にをするか。

Q10「この局所」の具体的内容は何か。
A10 盗人になるよりほかにしかたがないということ。

Q11「大儀そうに立ち上がった」とあるが、この時の下人の心情を70字以内で説明せよ。
A11 主人からひまを出され 、生きるために手段を
   選ぶいとまはないと思 いながらも、積極的に
   盗人になる勇気を持て ず、どう行動していい
   か迷っている。67字

〈心情説明問題の答え方〉
 人の気持ちは、なんらかの事態に遭遇した時に意識されます。
  交際を申し込んだらOKだった(事態)→うれしい(気持ち)
  試合に負けた(事態)→くやしい(気持ち)
 気持ちの部分だけを30字も40字も説明することは難しいのです。
 字数は多いときは、「どんな事情で、どんな心情をいだいているか」の、「事情」部分をきちっと説明しないといけません。
 「何がどうした、何がどんなだ」だから「こう感じた」。
 評論文の問題で言えば、因果関係(原因→結果)の説明問題に性質が似ています。

  (原因)事態・事件・事情・出来事の説明 → (結果)心情・気持ち・思い 


Q12「きりぎりすも、もうどこかに行ってしまった」は、どういうことを表現しようとしていると考えられるか。2点述べよ。
A12 時間の推移を表す 新しい展開を予感させる


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