「バンドジャーナル」3月号。後藤洋先生の論説は相変わらずキレッキレだ。
前号では指揮者の大井剛さんが全国大会の感想の一つとして、吹奏楽独特の「風習」は考え直した方がいいと指摘された。
演奏前に奏者が正面を向いているとか、演奏が終わった瞬間にざっと立つとか、足がきれいにそろいすぎているとか、打楽器パートの過剰な振り付けとか、どれも後藤先生が前々からおかしいと指摘されていたことだった。
後藤先生はそれをふまえ、「プロが絶対にやらないこと」をさせては、吹奏楽のためによくないと説く。
これはやはり、顧問、指導者に向けての強いメッセージだろう。
生徒たちが目標にするのは、やはりコンクールで結果をのこしている学校さんだし、プロの演奏をそんなに多くは聞きに行けない。もちろん教員も、部活以外の仕事の合間に、プロの演奏を聴きにいく機会をつくるのはなかなか難しい。ただ、その「風習」って絶対的なものなの? という眼は持てるし、持たねばならない。
後藤先生は同時に、作り手側にも厳しい。
楽譜を勝手に変えてはいけないと言いながら、変えられるような曲を量産する作曲者側も精進しなければならないと。言い方は厳しいが、音楽に対する敬意にあふれている。
やっかいなことに、プロが絶対にやらないことの集合体が、観客の心を打ってしまうところがあるのも事実だ。それはスポーツの世界にも通じる。