メタルバンドのボーカルのジン。レコード会社の目にとまりプロとしての道を歩み始めたものの、プロデューサーの望むような楽曲をつくることができず、メンバーともうまくいかなくなり挫折する。
そんなとき、弟のヒデが「聞いてほしい」とデモテープをもってくる。おまえらみたいな素人の音楽を聴いているヒマはないんだよと言いながら、耳にしてみた瞬間に、そのクオリティの高さに気がつく。
CDを出したいという弟のために兄の松坂桃李くんが奔走する。自分の夢を弟に託すことにしたのだ。
菅田将暉くん演じるヒデは、しかし、歯科医師を目指して大学に通い、音楽も本気で続けていきたいという気持ちを厳格な父親に話せない。
GReeeeNとしてCDデビューを果たしたあとも、「もうこれでやめる … 」と兄に言いに行く。
音楽で生きていきたいと願い、家を飛び出してまでその夢をかなえようとしながら、才能の限界を感じざるを得なかった兄。
音楽好きでしょうがないのはたしかだが、歯科医師になる目標も果たしたいと思い、またそれを願う家族を裏切ることもできないと悩む弟。
兄に、弟分の才能があれば、すべては、まるくおさまったのだ。
数々の名曲を生み出したヒデの才能が並々ならぬものであったことは、誰もが知っている。
一番の理解者は兄だろうが、なぜ俺ではなかったのだろうと一番切なかったのも兄かもしれない。
いくら好きなことでも、人生ささげていいと思っていることでも、「才能」の多寡は厳然としてある。
才能とはなんて暴力的なものなのだろう。
コード進行もシンプルで、歌詞もよくよく読めば普通のことしか言ってないのに、「キセキ」がなぜこんなに心をうつのか。一つ一つの言葉の背後に、氷山のように隠れているたくさんの人の思いが伝わってくるからとした言いようがない。
お芝居も歌もいける菅田君の才能がまたにくたらしい。