goo blog サービス終了のお知らせ 

Weekend Strummer

ウィークエンド・ストラマー。
世間知らずのオジサンが脈絡無く語る、ギター・アフリカ・自閉症。

キャッツ・アイ CE-1000S

2010-04-14 02:25:54 | ギター

ずいぶん前のことですが、某所でギターを拾いました。
かなり古いギターでした。
錆だらけの弦が数本だけ張られており、長期間弾かれていなかったのは明らか。
すっごく汚いギターでした。
表面はタバコや蚊取り線香などの煙のヤニで茶色に変色し、その上にまぶしたように埃が付着。触るとにちゃにちゃ感が手に残ります。その感触は、程度は違うけれど洗いそびれたキッチンの換気扇に似ていて、生理的な嫌悪感があります。
チューナーペグはどこかに強くぶつけられたのか曲がっており、6個のうちに真っ直ぐ回るものはひとつもない。まるで寝癖。
ブリッジ下は長年の弦の張力で変形して丸みを帯びて出っ張っており、なんとなくメタボ。
寝癖だらけの髪に出っ張った下腹と脂っぽい顔、と、外見上の特徴を述べると、やはり第一印象は寝起きの中年オヤジ。
逆さにして振るとサウンドホールからいろんなゴミといっしょにゴキブリの死骸までボヨヨンと出てきました。
今まで良い扱いを受けてこなかった不幸なギター。
なんだか不憫に感じてしまい、もらって帰ることにしました。
どんなギターか知らないけれど、せめてきれいにしてやろう。

帰宅後。
固く絞った雑巾で拭くと表面を覆っていたヤニと埃が取れて、本来の木目がだんだん見えてきます。やはり傷だらけではありましたが、意外に細かくきれいな木目。サウンドホールの断面を見ると、おお!意外にも単板です。
一般的に、合板に比べて単板は鳴りが良いとされており、表板単板仕様は高価なギターの第一条件です。
側板と裏板はローズウッド。これも良い木目です。
特に裏板は、これも単板であることがわかりました。裏も単板となると、かなりの高級ギターです。
少々コーフンしてきました。すごくいい拾いものをしたみたいです。
指板にはレモンオイルを塗って磨きました。これもいい材料。黒檀です。
時間をかけて磨いたら、とてもきれいなギターになりました。
飴色に焼けた表板にも、至る所に付いた傷にも、貫禄があふれていてカッコイイ。
少々大きめのサウンドホールから内部を覗くと「CAT’S EYES」の文字。キャッツ・アイ。東海楽器のブランドです。
ネックブロックにはCE-1000Sと書かれており、インターネットで調べてみたら伝説のブルーグラス・ギタリスト、クラレンス・ホワイトのマーティンD-28を模して作られた特別仕様のモデルだと言うことがわかりました。シリアルナンバーから見ると1980年に作られた個体らしい。
新品の弦を張ってみると、大きめのサウンドホールからは明るく乾いた音が響きました。
うーん、これはいいギターだー。もうけたー。

ひん曲がったチューナーペグは新しいものを購入して自分で付けました。
残念ながらブリッジの位置が中心にはなく、どうも1ミリばかり高音弦側にずれているようです。たった1ミリのズレですが、演奏にも影響するんです。弾いているとき、時々1弦がズッコケる。
チューンナップのクォリティには定評のある浜松のバナナムーンで新しいナットを作ってもらいました。弦の溝を全体的に低音弦側に0.5ミリずらしてもらったんです。
フレットもかなり磨り減っていたので打ち直してもらいました。
やはり素性が良いギターなのでしょう、プロの手が入って更に弾きやすくなり、出音の輪郭もハッキリするようになりました。

1980年前後、東海楽器は日本におけるマーティン社の総代理店であり、自社のギター製造のために技術提携契約もしておりました(現在の総代理店はクロサワ楽器店)。
マーティンの工場で研修を受けた職人が帰国後に作ったギターは、当然のことながらマーティンそっくりの音が出るギターとなり、日本でこんな良いギターを作られたら本家のものが売れなくなってしまう、とマーティン社が大いに慌てた、という、ちょっとマヌケなエピソードを聞いたことがあります。
私が拾ったギターはまさしくその頃のもの。

ぶっこわれギターを拾ってみたら名器だった、というのは全てのギター弾きの夢です。
長くやってりゃ、良いこともある。




コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ピー・マイ・ラオ(ラオス正月) | トップ | Noと言えない自閉症児 »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
はじめまして。 (京都のしがない笛吹)
2014-03-01 16:17:08
初めて投稿、失礼致します。私も一昨年に京都のとあるリサイクルショップで同じモデルを手に入れました。状態は最悪で玄はサビサビでペグは回らずおまけにブリッジはクレバスみたいな亀裂が入っていました。今は交換出来るものは交換、直す所は直して時折ライヴにも使用しております。やはりクラレンスホワイト、トニーライスの名を世に知らしめた最初のギターだけあり音色も明るくズン!と来る所が何とも言えません。これからも大切に扱って行きたいと思います。因みにシリアル#000480です…
返信する
コメントありがとう (Weekend Strummer)
2014-03-02 04:26:04
おお! 同様の経験をお持ちの方からコメントを頂けるとは、嬉しい限りです! サウンドホールの大きさが影響しているのか、音圧がありますよね。好きなギターではありますが、日本に置いてきてしまっており、現在手元にないためシリアルを確認できません。悪しからず。
返信する

コメントを投稿

ギター」カテゴリの最新記事