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Weekend Strummer

ウィークエンド・ストラマー。
世間知らずのオジサンが脈絡無く語る、ギター・アフリカ・自閉症。

ニャマチョマ

2012-02-25 14:03:24 | ケニヤ

知らないヒトにとっては、ふざけたようなタイトルであります。ニャマは「肉」、チョマは「焼く」を意味するスワヒリ語で、ですからニャマチョマは「焼肉」という意味になります。味付けも何もせず、肉を炭火で焼いただけのもの。単純。シンプル。そのまんま。どんな肉でも焼けばニャマチョマになりますが、たいていはヤギの肉が使われます。

ケニヤ国内どこでもお目にかかれる食べ物です。特に酒場のそばには必ず、と言っていいほどニャマチョマ屋があります。

今日も立ち寄る夕暮れ時の酒場。入店する前に、先ずは隣のニャマチョマ屋に行きます。店によっても違いますが、注文を受けてから焼き始める店が多いので、先にオーダーしておく必要があるんです。

骨のないところ、300グラムほど焼いてくれる? 隣の酒場にいるから、焼けたら届けてね。

で、酒場に出勤。

カウンターに寄りかかってウィスキーを注文。ニャマがチョマるまでに1時間ほどかかるので、ソーダで薄めたウィスキーを意識してのんびりゆっくり、口に運びます。ペース配分を間違えてグイグイやっちゃうと食欲を忘れるほど酔ってしまうので、店内にあるテレビや、すでに酔っ払ったケニヤ人などを眺めつつ、すするようにウィスキーを楽しみます。

グラスを三杯あける頃、お待ちかねのニャマチョマが届きます。なぜか白衣を着けたニャマチョマ屋のあんちゃんが、目の前でひとくちサイズに切り分けてくれます。塩をもらい、ついでに唐辛子も2、3本刻んでもらいます。

さてさて。肉をつまみ、塩と唐辛子をちょっと付けて口中に投入。

時間をかけて炭火で焼いた肉にはヤギ特有の臭みもなく、口に含むとスモーキーな香ばしさが広がります。ジューシーではありませんが、その代わり脂っこさもない。だからくどくない。筋っぽい割にはさほど硬くもなく、ジャーキーとステーキの中間の食感です。奥歯で少々念入りに噛みしめると、原始的な肉そのものの旨味がじんわりと染み出してきます。こういう食べ物には強い酒が良く合うんです。

バーテン、すまんがウィスキーをもう一杯。

 

これは某日の昼食時に注文したニャマチョマ。ひとくちサイズに切り分け中。

 

ランチなので炭水化物も摂ります。カラフルなテーブルでしょう? 黄色は皮を剥いてローストしたポテト。グリーンはイリオという豆芋料理。赤はピリ辛トマトサラダ。まな板の角に白いのは塩。よく見ると肉にハエが数匹たかっていますが、気にしない。

 

さらによく見ると、ヤギの体毛が残っています。ワイルド。

 

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カバのバカ

2012-02-16 10:47:34 | ケニヤ

ビクトリア湖は世界で3番目に大きい湖です。

なぜか太陽黒点の数とその水位が連動しているそうで、太陽黒点が増えると水位が上がる、ちょっと不思議な湖です。

二十代半ばの3年間、この湖に面したキスムという町で暮らしました。

同じ頃にこの町の水産局に勤めていた友人(日本人)がおり、時々、彼が操るモーターボートで湖に漕ぎ出し、ノンビリした時間を過ごしたものです。

普段は陸で生活している者が水上に出ると、すごく新鮮な気分になります。特に海とは違って波がない湖では、水面が穏やかで広々としていて、開放感があるんです。

しばらく走って船外機を止め、湖面を渡る風の中でタバコを吸いました。当然のことながら水の匂いが濃厚で、そのせいかタバコの煙もどこか湿っぽく、実はあまりうまくない。

煙越しに湖上から見るキスム。毎日生活している賑やかな街がどこか小さく見えて奇妙な光景でした。

ふと見ると、近くの岸に家族で憩うカバがいることに気がつきました。

 

お、カバだ。やーい、バカー!

 

そんなこと言わなくてもいいのに、湖上の開放感からか、ついつい飛ばすオヤジ・ギャグ。

親カバがその太い首を曲げてこちらを向きました。

聞こえたとしてもまさか通じたとも思えませんが、しかしその表情はあまり穏やかとは言えないものでした。もっとも、カバが笑うのは見たことがありませんけど。

しばしこちらを注目していたカバのデカイ顔がザンブと水中に沈みました。

「カバが潜るのは移動のためなんだぜ」

水産局の友人の説明を聞いて、ちょっと緊張しました。

意外にもカバはあまり長い時間浮いていられず、ヒトが泳ぐように水面近くを移動することはないんだそうです。一旦潜って湖底まで行き、底を蹴って前進するとともに浮上。水面に出たら呼吸をしながら目標を再確認してまた潜水→湖底をキック→前進および浮上。というサイクルを繰り返すことで、つまり湖底と水面をジグザグに往復しながら移動するんですって。

だからカバが潜ったら、その次はどこに浮き上がるか、注目しておく必要があるんだそうです。浮上地点を確認してカバの目的地を推測しておかないと、いきなりボートをひっくり返される羽目になるかも知れない。ずんぐりした体型からユーモラスな印象が強いカバですが、やはり猛獣であり、襲われたらただではすまない。子連れカバは特に凶暴であるらしい。

 

そんなことを話しているうちに、モコっと水面が盛り上がるように、カバが顔を出しました。確実にボートに近づいています。

 

おー、こっち向かってるよー!

 

一瞬こちらを見たカバはすぐに潜水。我々への接近行動をしつこく続行するようです。私にバカと言われて怒ったのでしょうか? 

んもー、本気にすんなよー。そんなだからバカって言われちゃうんだよ。

カバに目標にされている、と知って少々緊張が増しましたが、我々はまだまだ余裕でありました。ボートには文明の利器・エンジンが付いているんですから。いざとなりゃスターターのヒモ引っ張ってエンジンを始動。スクリュー回して、あらよっ、と逃げることができます。

 

突然ガバッと浮上したカバはちょっとビックリするくらい接近していました。

 

やべっ。そろそろ逃げようぜ。

友人がエンジンのスターターを勢いよく引きました。

・・・・始動しません。

おい、ふざけんなよ、こんな時に。

こういうジョークをするオトコではないと知りつつ、少々引きつった笑顔でかけた言葉に、やはり友人は全く反応せず、黙々とスターターを引いています。しかしエンジンは始動せず、バルルルル・・・・。と、軽やかにかわいい音を立てるのみ。

 

マジかよー、何でこんな時にエンジンが壊れるんだよー!

 

いざとなったらボートを囮(おとり)にして、その隙に岸まで泳いで逃げようと考えた私は、友人と船外機を残してズリズリと舳先に後ずさりしました。昔から逃げ足だけは速いのです。

幸いにもカバがボートに到達する直前にエンジンが始動して逃げ切ることが出来たのですが、この日以来、決してカバを馬鹿にすまいと固く決心した私です。

 

舳先から友人を撮ったフィルムを後日現像したところ、必死にスターターを引く彼とタイミング良く湖面に浮上したカバの笑顔が写っておりました。(下の画像は無関係です)

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男はシェーンに憧れる

2012-02-08 04:44:28 | 映画の話

お約束どおり、ケニヤからの更新です。

今回のケニヤ訪問は20年ぶりになります。当然ではありますが、ナイロビは20年前の記憶と比較すると大きく変化しておりました。市の中心部から郊外に向かって開発が進み、なんだかサバンナが狭くなったように感じますし、中心部では高層ビルが増えて青空が狭くなったようです。

さて、ナイロビに到着するまで、ロンドンでのトランジットも含めて成田から26時間もかかりました。オジサンはさすがにくたびれた。

移動中の機内で見た映画が「DRIVE」。犯罪行為を軸にストーリーが展開するので暴力的なシーンが多く、15歳以上R指定の映画ですが、これはカッコ良かった! 暗い機内の座席で、私は拳を握って画面に注目しておりました。

あらすじを簡単に説明すると、主人公は自動車の整備工として勤めるかたわら映画撮影時のカー・スタントマンとしても有能な男性です。彼は要請があれば犯罪行為のアシストもしています。つまり、その卓越した運転技術を駆使して犯罪者を犯行現場から逃がす、という役割です。ある日偶然知り合った若い母子と交流するようになり、主人公の孤独な生活に守るべき対象が生まれます。映画のクライマックス、危機に陥った母子を守るため、主人公はたった独りで犯罪組織に立ち向かって行くのでした。

人妻とのロマンスや幼い少年との交流など、優しい雰囲気の場面もありますが、寡黙な主人公についての余計な説明は一切なく、全体的にとてもハード・ボイルドな作品です。

「ある分野で特殊な技術を持つ孤独な主人公が、偶然知り合った既婚女性とその家族との友好的な交流を通じて心の平和を手に入れ、危機の際には身を挺して彼女たちを守る」と要約すると、これは往年の名作西部劇「シェーン」とかなり重なります。

特にラストシーンで強調される自己犠牲の精神。死を覚悟しながらも悪漢に立ち向かう潔さ。男らしさを最も効果的に表現できるのが「自己犠牲」ですが、シェーンのストーリーはその原点と言えるものかもしれません。

これまでも「刑事ジョン・ブック」とか「遥かなる山の呼び声」など、シェーンのシチュエーションを借りた映画は多く作られてきました。しかしその二作品と比較しても、この「DRIVE」はシェーンのスピリットをとても強く受け継いでいると思います。

「DRIVE」。日本では3月末に公開されるそうです。

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