Weekend Strummer

ウィークエンド・ストラマー。
世間知らずのオジサンが脈絡無く語る、ギター・アフリカ・自閉症。

パーボイルド・ライス

2022-05-27 14:14:29 | その他の国々

ご存知のように、稲は収穫された後、脱穀・乾燥・籾摺り(もみすり)・精米というプロセスを経て、白米になります。
籾すりというのは、籾殻を取り去って玄米にする過程です。玄米にはまだ胚と果皮(pericarp)が付いておりまして、このまま炊いても食べられますが、果皮のせいで効率よく水分吸収できないため、とても固い食感になります。なので、一部の玄米ファンを除いて、この果皮を取り除く作業が必要になります。それが精米過程です。
精米過程では一般的には精米機が使われます。エンゲルバーグ式精米機はシリンダー内で圧力をかけて玄米同士をこすり合わせることで玄米の表面を削り取り、白米にする装置です。シリンダー内の圧力を強めにかけると削り取られる部分が増して、そのぶん白米のサイズは小さくなっていきます。日本酒を作るときに使うコメは純粋な味を追求するがために果皮に近い部分をなるべく削ぎ落として小さな粒にしてしまうそうです。「大吟醸」なんて、50%以下のサイズに磨きこんだコメを使うそうです。
というわけで、コメは削れば削るほど味は良くなりますが(好みはあるでしょうけど)、そのぶん食糧としては量が少なくなってしまいます。

パーボイルドライスは、脱穀した後に籾のまま茹でたり蒸したりして、いったん加熱処理をするお米です。加熱したあとに乾燥させると、ご想像通り、米はものすごく硬くなります。虫でさえ歯が立たないほど硬くなるので害虫が発生しにくくなりますし、精米過程で加えられる圧力で割れたりすることもなくなります。簡単には削れないので、食糧としての米は増加します。また、一度加熱処理してありますので、長期保存しても品質があまり変わらなくなります。
なんか、いいことづくめ。

このパーボイルドライス、スリランカではとても一般的に食されています。
需要が大きいので、精米所が大規模に作ります。
籾を加熱処理する前に水に浸けて2~3日間吸水させるのですが、この水を取り替えずにずっと使い続けるため、水が腐るんです。変な臭いがする。その腐った水を吸収した籾を蒸して、蒸しあがった籾を乾燥場に広げて日光で乾燥させます。完全に乾いた後に精米処理をする、と。

こういうコメを炊くと、たいてい臭いんです。
と書くと、はたしてどんな臭さなのか、知りたくなっちゃうでしょ? 
あれ?奥歯の間になんか異物がはさまってるぞ。爪楊枝で取り除いてみたら、それは朝食時のご飯粒だった、と想像してみてください。
普段のあなただったらそんなことは絶対にしないでしょうけど、そのご飯粒を鼻先にもってきてどんな臭いか嗅いでみた、と想像してみてください。臭いでしょ? 腐臭がするでしょ? 
そういうご飯粒をものすごくたくさん集めてお皿に盛りつけたら、こういう臭いがするだろうな、という感じのごはんです。
私と家内は「歯糞飯(はくそめし)」と呼んでおりました。

ものすごーく臭いんですけど、その腐臭があたかも一種のスパイスであるかのように、どういうわけかカレーに合うんです。しかも飛び切り辛いカレーに合う。
スリランカのカレーは日本のカレーのようにコッテリノッタリしていません。サラサラのスープ状です。かなりの量の油が使われているにもかかわらずあっさりと辛いカレーは歯糞飯にスッと馴染む。
馴染んだカレーと歯糞飯を右手でさらによく混ぜます(手づかみで食べる本場のカレーです)。

お断りしておきますが、歯糞飯は炊いてから少々時間をおいて、十分冷めた状態で盛り付けてください。炊き立てのアツアツなんて素手じゃさわれません。湯気に混じった臭気が立ち込めて臭いがものすごいでしょうし。毒ガス。そしてカレーも出来たてじゃありません。火からおろして数時間が経過し、冷める過程で程よく辛さと味が融合した室温カレーです。

お皿の上でよく混ぜたカレーと歯糞飯を五本指でつまむようにして口元に運び、親指ではじくように口中に投入します。その途端、口に広がるカレーの辛さと鼻に抜ける歯糞飯のかすかな腐臭。この腐臭は変な例えですが魅力的な異性のフェロモンのようにも感じられる。
辛さは強い刺激ですが、ある程度の量を食べれば舌がそれに慣れてしまう。しかし歯糞飯の腐臭は警戒臭であるが故に慣れない。ということは飽きが来ないので食欲が継続するんです。

あー、うまい! うまいけどクサい! クサいけど止められない!

やっぱカレーにはコレです、歯糞飯。

コメント
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