今月初旬に発売された山下達郎のニュー・アルバムを購入し、繰り返し聴いています。
収録されたどの楽曲も以前のアルバムで聴いたことがあるようなアレンジ(編曲)になっていて、それを懐かしさと呼ぶかマンネリと呼ぶか、意見の分かれるところだと思います。
これは私の想像ですが、テクノロジーの進歩によって新しい録音機材が続々と音楽作製現場に導入され、音楽オタクのヤマタツは新しい機材で自分の音楽を変化させることに熱中しているのでしょう。同様のアレンジであっても音響効果を色々と変化させることで、本人は昔と違うことをやっているつもりでしょうが、果たしてリスナーにその想いが届いているのかどうか、私は知らない。
以前話題にした「雨」という単語は、意外にもアルバム中2回しか出てきませんでした。その代わりに頻出していたのが「光」です。14曲中9曲に使われておりました。「光」は、思い出してみれば以前のアルバムにも「雨」ほどではないにしろ頻繁に使用されていた単語で、いつの間にかタツローのお気に入りワードは雨から光に交代したようです。
雨も光(自然光)も人間の力ではコントロールできない運命的な響きがある言葉ですが、「光」はやはりポジティブな印象が強い。タイトルからして「希望の光」ですから、かなり健康的なアルバムです。
こだわりの単語が替わったことで「作詞の視点がそれだけ広がった」と同時に「こだわりが希薄になった」とも言えるかも知れません。
ですが、アルバム中2曲目「Never Grow Old」では、タイトルや歌詞カードには「grow(育つ)」と記されておりますが、タツローは「glow(輝く)」と歌っているようで、こんなところにも新しいキーワードに対する彼の強いこだわりが感じられます(たぶん私のコジツケだと思いますが)。