Weekend Strummer

ウィークエンド・ストラマー。
世間知らずのオジサンが脈絡無く語る、ギター・アフリカ・自閉症。

給食の思い出

2020-12-01 01:22:43 | その他

小学校1年生最初の学期は午前中で授業が終わるという幼稚園の延長みたいなプログラムだったので、午後の授業が導入された2学期から給食を体験することになりました。
私らの世代の給食の思い出でまず話題に上るのは脱脂粉乳の不味さでしょう。アルマイトのお椀に入れられた「はと茶ミルク」という白い液体は薄甘く、体温に近いぬるさは妙に気味が悪く、こんなもの体内に入れちゃって大丈夫なの?という不信感が強い変な飲み物でした。
私を含め、クラスメイトのほとんどはまるで儀式のように給食開始と同時にこの苦手な飲み物をグーっと一気飲みし、他の苦手でない献立をゆっくり美味しくいただく、というパターンを採用しておりました。そうでもしないとクリヤできないほどの難関だったのです。
ある時、うっかり飲み忘れてしまいました。なぜか儀式を無視して他のメニューをほぼ平らげてしまった。全く視野に入っていなかった。このまま飲まないで済むと思っているわけじゃアルマイト?と尋ねるようにトレイの隅に存在するはと茶ミルク。
ヤバい。飲まずに残すことは固く禁じられています。担任のアオキ先生は普段は優しいのですが、何かの拍子にスイッチが入ってしまうと瞬時にゲンコツが飛んでくる、「ゴジラ」の異名を持つ教師でありました。
給食の後は昼休みで校庭に出て自由な時間が過ごせますが、それはクラス全員が給食を食べ終わったあと、というゴジラ・ルールがありました。

もう時間がありません。どうしよう。叱られたくないし、はと茶ミルクも飲みたくないし。あまりグズグズしていると校庭で遊ぶ時間も短くなってしまいます。
ひらめきました。ミルクを口中に注ぎ、ほっぺたを両側から押せば口中に生じる圧力はポンプのようにミルクを一気に押し下げ食道を通って胃袋に到着するはず。我ながらすっごくいいアイデアです。特急状態で胃袋に向かうはずなので、苦手なミルクの変な味をあまり経験せずに済みそうですし。

よっしゃ、これで行こう!

できるだけ多くのハト茶ミルクを口中に注ぐと、ほっぺたは満タンです。まるで当時の愛読書「シナの5人兄弟」の長兄のよう。
しかし当然のことながら、力任せに押されたほっぺたは水鉄砲となって前の席に座る女子生徒の後頭部にミルクのシャワーを浴びせ、彼女の悲鳴を聞いてすっ飛んできたゴジラは「お前は何てことをするんだ!」と叫びながら私のアタマに中立ち一本拳のパンチを炸裂させ、名案と思われた作戦があっけなく失敗に終わったショックと拳骨の痛さから涙が止まらない私が泣きながら説明しようとしても、しゃくりあげる口からは「だってポンプが(ヒック)、ポンプがぁ(ヒック)」という単語が繰り返し出てくるばかりでゴジラには全く理解してもらえず、昼休み中廊下に立たされた私は、はと茶ミルクをますます嫌いになったのでした。

from The Five Chinese Brothers

コメント
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