Weekend Strummer

ウィークエンド・ストラマー。
世間知らずのオジサンが脈絡無く語る、ギター・アフリカ・自閉症。

マンバ好みのオトコです

2013-04-01 06:03:30 | ケニヤ

「マンバは女性を襲わない」

ケニヤのギリヤマ族の言い伝えです。マンバとはワニを表すスワヒリ語。男性だけがワニの餌食になる、というのはちょっと不公平な気がしますが、獰猛で何でも食べちゃう印象の強いワニが、実は女性には優しい性格、なんてちょっと意外です。
ギリヤマ族の伝によると、女性だけが乗って川を移動するボートは、決してワニに襲われることはないそうです。ですが、その中に妊婦がいて、そしておなかの子が男である場合は襲撃対象となるんだそうです。ワニの男性嗜好はかなり頑ななようです。なんか恨みでもあるんでしょうか? それともすごくおいしいんでしょうかね、私たち。

ケニヤ山麓東側は雨季に入りました。曇り空が続き、一日に一回はどこかで降雨に遭遇する季節です。未舗装路がぬかるんで歩くたびに靴の底に土が着き、下駄を履いたように身長が高くなり、そして不安定になってコケそうになるという、とにかく不便な季節です。
雨が集まるせいで、灌漑事業地内の水路も水かさが増しています。日々の水田巡回業務中、いつも水門で水位を確認することにしているのですが、ここはかなり気分の良い場所です。水の流れる音を聞きながら川面をそよぐ風に吹かれているのは、雨さえ降っていなければ本当に気持ちが良い。

雨季には珍しく日差しがまぶしい午後。水門の上を水路の中央部まで歩きます。水門は水をせき止めることもできる施設です。上部は橋のように両岸をつないでおり、実際地域住民の多くがこの上を歩いて行き来します。
上流に向かって水門の上に腰掛けます。前述のように雨季で水路の水かさが増しており、また、水門の上流側は下流側に比べて少々水位が高いんです。長靴をはいた足を垂らすと、くるぶしあたりまで水につかります。ゆったりとした水の流れと、長靴のゴム素材を通して足に感じる水圧を、なんとなく楽しんでおりました。
視界のずっと先にはケニヤ山が見え、清々しい景色です。久しぶりの青空と日差しが嬉しい。

いきなり両足がグン!と重くなり、同時にすねに鋭い痛みを感じました。驚いて視線を下に向けると、両足にワニが食らいついておりました。2匹のワニが私の左右の足を一本づつ分け合うように。私の足をくわえたまま2匹とも私の眼を凝視しており、不思議なことに二対の眼と同時に視線が合ったような気がしました。
驚愕に息を呑む、という表現がありますが、まったくそのとおり。心底驚いたときは空気が肺に入ってくるばかりで、吐くことができないんです。声も出すことができないので、当人はパニック状態でも、客観的には非常に静かに驚愕しているように見えるでしょう。
ワニは身体を回転させて、捕らえた獲物を水中に引きずり込もうとする性質があります。このまま水中まで一緒に移動したら、足だけではすまないでしょう。私の全身がやつらの腹の中に収まってしまう。いや、半身づつか。
私にとって幸運だったのはゴム長靴をはいていたこと。水中に引きずり込まれる直前に足を抜き、急いで立ち上がりました。ワニ達はゴム長靴を仲良く片方づつくわえ、おとなしく水中に沈んでいきました。

危なかった! 助かって良かった!

一度は立ち上がることはできたものの、自分がワニに食われそうだったという事実に再度恐怖心がこみ上げてきて、腰が抜けたように座り込んでしまう。私はしばらく座ったままでした。ようやく気持ちが落ち着き、私は裸足のままぬかるんだ道を歩いてクルマに戻り、驚愕のせいで急激に疲労した身体でよろよろとクルマを運転して帰路に着いたのでした。
帰宅してズボンを脱ぐと、両足のすねにワニの歯形がくっきりと残っておりました。哺乳類に咬まれた場合は狂犬病などの伝染病を心配する必要がありますが、ワニには強い免疫力があるそうで、咬まれてもきっと何かに感染することはありますまい。とりあえずマキロン塗っておきました。

事件以来、水門には長居せず、水位だけ確認してサッサと立ち去る私です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本日は4月1日であります。

上の画像は、実は蚤にくわれた痕。蚤の密生地と知らずに歩いてしまった私の靴を這い登り、靴下の上を移動し、ようやく地肌に到達したノミどもがそろって吸血したようです。すっごく痒かった。塗ったのはマキロンではなくてムヒでした。

コメント (2)
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