主に中古品を商うリサイクル・ショップにも、最近は楽器を扱っているところが増えてきました。思わぬ掘り出し物があるかも、という期待(射幸心ともいう)があり、時間があるときは割と熱心に見て回ります。
先日、近所のリサイクル・ショップで見つけたのはアルトギター。普通のギターよりも高い音を奏でる小ぶりなクラシック・ギターです。
小さめのボディにレギュラーサイズの太さのネックとヘッドがついており、ちょっと頭でっかちにも見えますが、全体的にかわゆい印象。
ボディを覗き込んで見ると内部のラベルには「Yukinobu Chai」の表示がありました。茶位幸信氏は有名な手工クラシック・ギターの製作者です。この個体は1977年に作られたモデルのようです。
一般的なカッタウェイではなく、これはなんというのでしょう、ボディとのジョイント位置が6弦側は12フレットなのですが、1弦側は14フレットで、ハイ・ポジションのフレットにもアクセスしやすいようになっております。何となく洗練されていて、カッコいいデザインです。
店員さんに頼んで、試奏させてもらいました。
小さいボディ。でもボディに厚みがあるので抱き心地はしっかりしています。ちっちゃいけどグラマー。
フレット間が狭いのでオジサンの太い指先には少々窮屈です。また、ネックが短いので、普通に抱えて構えると腕が余ってしまいます。クラギ弾きみたいに左足の腿にギターを置くと、左腕が伸びてポジションがゆったりして弾きやすくなりました。
アルトギター本来の高い音を奏でるためには、専用の細めの弦を使用する必要があるのですが、残念ながらお店の方の勘違いでしょう、このギターには普通のギターの弦が張ってあるんです。
専用弦を張るとどんな音がするのか、聴いてみたくなり、買っちゃいました。新品定価よりだいぶお安くなっておりましたし。
帰宅して、専用弦をネットで注文。翌日、届いた弦を張り、通常のギターより5度高いB・E・A・D・F#・Bにチューニング。
爪弾いてみると、明るくまろやかな音色が出てきました。コロコロリンと耳に軽やかに響きます。
かわいい音です。
やはり高音に独特の響きがあります。じゅうぶん高い音でありながら甲高くはなく、何となく和菓子の穏やかな甘みを連想させる音がします。変な例えですが。
低音弦は聞き取りやすい音域にあるのか、明瞭な音像です。明るくハッキリしていますが、厚みのあるボディのおかげか軽々しくはなく、しっかりと存在感のある低音です。
似た音域をもつモデルにヤマハのギタレレがありますが、音質はまるで違います。ギタレレはウクレレの音ですが、アルトギターはやはり立派なギターの音がします。
春の風は穏やか。時に強く吹くこともありますが、それ以外は桜の花びらを優しく運んだりして、その印象はあくまで暖かい。
木陰では私のアルトギターがコロコロコロリとやさしく鳴っています。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます