1月末にケニヤから帰国しましたが、実は愛犬バタコはまだケニヤにおります。
もちろん一緒に帰国したかったのですが、動物検疫法がそれを許さなかった。
年一回の狂犬病の予防接種を怠らず、その証明書さえあれば日本に連れ帰ることができると思い込んでいた私は不勉強でした。以前飼っていた犬を海外から連れ帰るときはそれで問題なかったのですが、規則が変わっていたのを知らなかったのです。
予防接種の証明書は文字通り予防接種を施したことの証明ですが、その他に、その予防接種がちゃんと機能しているか否か、つまり、血液中に狂犬病の抗体が規定以上ありますよ、という証明が必要なんだそうです。
その証明書を持たずに入国を試みようとすると、成田空港の動物検疫所でバタコが足止めを食い、最長180日間係留されてしまうのです。その間、きちんと世話はしてくれるのでしょうが、やはり愛情こもった飼い主のケアとはクオリティが違うはずです。それに数十万円に及ぶ半年間の係留費用は輸入者(飼い主)が負担しなくてはなりません。
急遽、抗体証明書を用意することになりました。そのためにはバタコの血液サンプルを用意して日本の農林水産省が指定するラボラトリーで抗体を検査する必要があります。
さて困りました。
獣医師に採血してもらわなくてはなりませんが、エンブで開業する獣医は牛専門のヒトばかりでペット犬のケアができないんです。みんな犬を怖がる。
毎年の狂犬病の予防接種時もちょっとしたドタバタ劇になります。獣医に電話して自宅に来てもらうのですが、到着しても車から降りてこないんです。バタコが怖くて。
ま、侵入者に対してはいつも盛大に吠えるバタコなので無理もないと言えば無理もないのですが…。
仕方なく獣医はクルマの中にいたまま注射を準備して待機。私はバタコを抱きかかえ、そのおケツを運転席の窓に向ける。獣医はそろそろと窓を開けて腕だけ出して注射。
駐車から注射。
で、窓の細い隙間から料金を受け取り、日付を書いてサインをした証明書くれて、そのまま走り去ります。
そんな獣医がバタコの身体に注射器を刺して血液を採取するなんて芸当ができるわけがありません。
ケニヤ山の反対側にある街・ナニュキに好評判の獣医師がいるらしいと人づてに知り、連絡してみました。ナニュキは欧米人が多い街で、ペット犬の数も多いんだそうです。
快く駆けつけてくれた獣医師はバタコを怖がらず、バタコも彼にすぐになついて、うまく採血できました。その医師を通じて抗体検査もしてもらうことになりました。
イギリスにある農水省指定のラボにサンプルを送って検査結果を取得するためにはおよそ6週間の時間が必要です。
その時点で、私の任期は3週間しかなく、バタコを連れ帰るのは不可能。
インターネットで検索しましたら、飼い主不在でも犬の輸出入を請け負ってくれる獣医さんが、ナイロビの南およそ100キロの場所にケンネルを持っていることがわかりました。
渡りに船であります。
私がケニヤを発つ二日前、バタコがケニヤに到着した時と同様、ピックアップトラックの荷台に一緒に揺られて、エンブからケンネルまで5時間の旅。
クルマでの移動が苦手なバタコは私の腕の中に落ち着き、後方に流れ飛ぶエンブの風景をじっと見ておりました。
今週、バタコは日本に帰着する予定です。
証明書その他の準備も万端。あとは到着時間に合わせて成田に迎えに行くだけです。
ケニヤから独りで飛行機に乗って、迷子にならず帰って来れるのかなー。
とうちゃんは心配だー。