Weekend Strummer

ウィークエンド・ストラマー。
世間知らずのオジサンが脈絡無く語る、ギター・アフリカ・自閉症。

スピルバーグのマチズモ その2

2021-09-03 16:43:25 | 映画の話

映画「サンブンノイチ」(2014)ではクボヅカ・ヨウスケ演じるハマショウが「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(1985)への想いを吠えるように語ります。
「映画好きを自称する奴らに限って、俺が一番好きな映画はバック・トゥ・ザ・フューチャーだ、と言うとバカにしたような目で見やがる。面白いけどベタ過ぎない? なんてほざくやつが大嫌いだ! バック・トゥ・ザ・フューチャーが好きで何が悪いんだ!」
全然悪くない。私も大好きです。

およそ10年前になりますが、「スピルバーグのマチズモ」というタイトルで駄文を書きました。詳細はリンク先をお読みいただければと思いますが、あえて要約しますと、
 ・スティーブン・スピルバーグの作品の多くは「マチズモ(男らしさ)の追求」をテーマにしており、その証拠に男性を象徴するものがストーリー上重要なアイテムとして画面に登場することが多い。
 ・「バック・トゥ・ザ・フューチャー」ではタイムマシーンであるデロリアン(スポーツカー)が、ある一定以上の速度を出して走行することでタイムトラベルする、という設定になっていたが、この設定は性交時の男性の射精の過程に似ている。
 ・しかし、この作品の監督はロバート・ゼメキスであり、スピルバーグは製作総指揮という立場で参加しているため、彼のマチズモ追及の意向がどれだけ反映されているかはわからない。

どれだけ反映されているかは不明、と書きつつも、タイムマシーン設定はスピルバーグ発案によるもの、という仮説にずっとしがみついている私です。
だって、他のスピルバーグ作品にもマチズモ追及アイテムはいっぱい登場するんですもん。

バック・トゥ・ザ・フューチャー公開の13年後に正真正銘スピルバーグが監督を務めた「プライベート・ライアン」には、更に強いマチズモ追及色が感じられます。第2次世界大戦を、特に戦闘シーンをリアルに描いたことで有名な作品ですから、画面に登場する人物のほとんどが男性(しかも兵士)ですし、マチズモ追及の極みとも言える作品です。
同作品の冒頭で描かれるのがノルマンディ上陸作戦。作戦中に銃撃されて命を落とし、海岸に折り重なるように打ち上げられた数えきれないほどの米兵の死体が映し出されますが、このシーンは性交時に卵子にたどり着けなかった多くの精子をシンボライズしているように思えます。性交時に射精される四千万の精子のうち、卵子にめぐりあえるのはたった一つで、最も強い精子です。鉄壁の守りに突破口を切り開いて作戦を成功に導いた主人公のチームは「受精に成功した者たち=マチズモの権化」ということになるのだと思います。
また、腕利き狙撃兵同士の一騎打ちのシーンでは、弾丸が敵のスナイパーが構える銃のスコープを通って眼(と頭)を射抜くという、まるで膣を貫通して目的を成就するようなシーンが描かれたりもしています。

というわけで、スピルバーグの作品を観る機会があるごとに、マチズモ的なシーンを探してしまう私です。
その証拠の一つとして、大ヒットしたバック・トゥ・ザ・フューチャーのタイムマシーン設定もぜひともスピルバーグによるものであって欲しかった。そうすれば「スピルバーグ作品=マチズモ追及」という式の強力な裏付けになるんだけどなー、と長年にわたって考えていたんです。

先日、「話題になった映画の裏話」(仮名)、というサイトで偶然見たのですが、タイムマシーンの設定はやはりスピルバーグのアイディアだったそうです。

やった! とうとう見つけた!

もともとゼメキス監督の脚本では冷蔵庫をタイムマシーンに改造することになっていたらしい。多分、冷蔵庫に入って温度設定ならぬ時間設定のダイアルを操作して、再び扉を開けると目的の時代になっている、というシナリオだったのではないでしょうか?
その脚本を読んだスピルバーグが「映画を真似して子供が冷蔵庫に入ったりしたら大変だ」と危惧し、スポーツカーに換えるアイディアを出したんだとか。
劇中、「なんでデロリアンをタイムマシーンにしちゃったの?」というマーティの問いに、「どうせ作るならカッコいい方がいいから」とブラウン博士は極めて簡単に答えます。まるで「単なる思い付きなんだよ」とでも言うように。きっと、これは本当にスピルバーグの単なる思い付きだったのだと思います。そして、そういう何気ない思い付きにこそ、作者の性格が出てしまうものです。

この項、単に「ほらね、私が言ったとおりだったでしょ?」と言いたいがためにアップしました。

コメント (4)
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