Weekend Strummer

ウィークエンド・ストラマー。
世間知らずのオジサンが脈絡無く語る、ギター・アフリカ・自閉症。

Noと言えない自閉症児

2010-04-17 00:39:28 | 自閉症
自閉症である我が娘は、3歳時から「行動療法」という教育を受けています。
その内容を簡単に言ってしまえば、「課題を提示し、クリヤできたらご褒美を与えることで、その課題に対する動機を強化する」というものです。
以下に一例を挙げます。

幼い自閉症児の多くはなかなか他人と視線を合わせられません。名前を呼んでもこちらを向かないのです。視線を交わすのはコミュニケーションの第1歩ですし、それに、呼びかけても顔を見せてくれないのは、親としてやっぱりつらいものです。

行動療法では、名前を呼ばれた時、呼んだ人のほうを向いて視線を合わせることができたら、大げさとも思えるような笑顔で褒(ほ)めちぎり、好物のお菓子をほんの少し与えるんです。
これを繰り返します。当初は10回の呼びかけのうち2回ほどしか視線を向けてくれないのですが、毎日繰り返すうちに向上し、成功頻度も4回、6回と増えてゆきます。
向上するうちにご褒美のお菓子を与えるのをやめ、呼びかけたヒトの笑顔や褒め言葉だけで課題をクリヤできるようにしてゆくと、最終的にはごく普通に「名前を呼ばれたら呼んだ人に注目する」ことが出来るようになるのです。 
他にも数多くある課題を組み合わせ、数時間単位で毎日これを行ないました。
我々健常者が何の苦労もなく自然に覚えてゆく事柄を、娘は多大なる努力と長い時間をかけて身につけてきたのです。

おかげで色々なことができるようになってきたのですが、いまだ困難なのが「No」を覚えさせること。
「Yes」は比較的楽なんです。娘のお気に入りのお菓子を見せ、「これ欲しい?」と尋ね、「Yes」と答えれば与える。で、Yesはすぐに覚えちゃう。
Noを言わせるためには、嫌いな食べものを見せて同じように「これ欲しい?」と問う。娘はこれにも「Yes」で答えてしまいます。Yesと言った以上は無理にでも食べさせます。嫌いなものを前にしてYesと言えば、無理やり食べさせられて嫌な思いをする。そういうことを学習させるわけです。
さて、この方法で娘はNoを覚えたでしょうか? 
実は失敗でありました。
毎回Yesを繰り返し、その度に同じものを食べさせられた結果、Noを覚える前にその味に慣れて嫌いじゃなくなっちゃったんです。
しかたなく、別の嫌いな食べ物を導入してみました。幸か不幸か、自閉症児の多くは偏食傾向が強く、嫌いなものは数多くあります。
ですが、すぐにその味にも慣れてしまう。
嫌いな食べ物をとっかえひっかえ試し、最後にはお酢とかワサビとか、かなり刺激の強いものまで舐めさせたのですが、とうとうNoは覚えられませんでした。
結局、嫌いなものがなくなって何でも食べられる変な自閉症児が一人誕生。
偏食がなくなったのは喜ばしいことなのですが、いまだ目的は成就しておらず、娘は今日もすべてに対してYesを連発。何でも受け入れる心の広い優しいヒトになりました。

幸せだから、ま、いっか?。
コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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Unknown (つおん)
2010-04-18 00:18:49
そうそう、幸せならいいんです。

私の職場での、口癖。。
「すばらし~~!!」
できた時の褒め言葉で連呼してたら、今や口癖。
返信する
コメントありがとう (Weekend Strummer)
2010-04-18 03:01:03
私の褒め言葉は、
「これができちゃうとは、オマエ、ただもんじゃーねーなー!」
とか、
「あんた、スーパーガールだろー!」
とか、
「ちょっとアタマ良すぎるんじゃねーの?」
などと言っているようです。
褒め言葉になっているかどうか疑問ですが、笑顔で言ってるから、ま、いっか?
返信する

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