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Weekend Strummer

ウィークエンド・ストラマー。
世間知らずのオジサンが脈絡無く語る、ギター・アフリカ・自閉症。

コンチの音

2024-11-29 13:53:18 | モザンビーク

以前にもご紹介しましたが、モザンビーク・ザンベジア州の稲作農家はコンチというカタツムリの貝殻を使って稲を収穫します。
貝殻の開口部分の縁は薄く、稲穂の穂首部分を押し当ててひねると切ることができるんです。もちろん金属製のナイフのように鋭いものではないので、スパッと抵抗少なく切れることはないのですが、繊維質豊富な稲の穂首を切断するには十分な道具となります。
この時発生する「ブチッ」という音が巻貝の殻に反響して独特の音になります。言葉で説明するのが難しいのですが「コッ」と「ポッ」が混ざったような音です。炎天下での労働時に発生するにしては場違いなくらいかわいい音なんです。
穂首だけを刈って収穫する方法は、稔った穂だけを選んで収穫できるので丁寧ではありますが効率的ではありません。短時間で終わらせるためには多くの人手が必要になります。
そのため複数の働き手が雇われますが、それぞれが持つコンチの大きさによって収穫時に発せられる音が微妙に違うんです。音階や音質の違う、しかしどれも間抜けでかわいい音がリズミカルに聞こえてくる。汗をかきながら真面目に健気に働いているにもかかわらず、BGMはユーモラスなコンチの音。そばで聞いているとなんだかおかしくて、自然とニコニコしてしまいます。

 

 

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稲の脱穀法いろいろ

2024-09-29 12:49:19 | モザンビーク

今夏の米不足騒ぎ。猛暑や豪雨などの異常気象のせいらしいですが、もしそうだとすると今後しばらくは稲作も不安定になるのかもしれません。
ところで稲の収穫には、日本ではコンバインが多用されます。コンバインは稲を刈り取り、内部で回転するドラム(脱穀用の爪が付いた筒)で脱穀すると同時に、ドラムの回転で生じる風で未熟籾や土などの軽いゴミを吹き飛ばし、稲籾だけを収穫する機械です。刈り取りと脱穀を同時に済ませ、また、設定にもよりますが、脱穀した後の稲わらを細かく切り刻んで田に散布できたりもするので、すごく便利です。

最近はアフリカでも便利な農業機械が普及しつつあるようです。
ですが、私が赴任していた頃のケニヤではコンバインはまだまだ珍しく、多くの農家は鎌で刈り取った稲を数日間乾燥させた後、穂首の部分を岩に打ちつけて籾を落としておりました。

束にして持った稲を足元にある岩に叩きつけるんです。穂を打ち付けるのではなく、岩の角で穂首を折る、むち打ち脱穀法。このくらいの稲束であれば、だいたい4回くらい打ちつければほとんどの稔実籾は脱穀できます。
脱粒しやすいインディカ種の稲だからこそできる脱穀方法です。日本の品種(ジャポニカ種)は脱粒性が低く、岩に打ちつけたくらいでは脱穀できません。
インディカ種の中でも脱粒性は品種によって違うので、農家にはより脱穀しやすい品種が好まれるようになります。3回で脱穀完了する品種を作ってよー、などと農家に言われたこともありましたっけ。そんなに脱粒性が高い品種を育種して作ったところで、今度は収穫前に吹く風程度の刺激で簡単に籾が落ちてしまい、収量は激減してしまうでしょう。

モザンビークでの脱穀方法は、収穫した稲穂を棒で打つ方法です。
刈り取って積み上げた稲藁を長い棒で叩きます。なんかもう力任せ。コレデモカ! という勢いで何度も何度もぶっ叩きます。この方法でももちろん脱穀できますが、籾は稲わらの中に落ちて行くので、経過が目視できません。なので、すでに脱穀が完了しているのに叩き続ける、なんて、非効率的な作業にもなりかねません。

大変そうだなぁ、疲れるだろうなぁ、と思い、傍らにあった岩を設置してケニヤ式脱穀法をデモンストレーションしたら、おお、こいつぁいいぜ、と大人気。周囲の農家みんなが真似し始めました。

お礼のつもりでしょうか、傍らにいた農家の娘さんが手のひらを差し出して「良いもの見せてあげる」。

え? なになに? なに見せてくれんの?
覗き込んでみたらネズミの赤ちゃんでした。

「さっき稲わらの中で捕まえたの。生まれたてみたい。柔らかくておいしいわよ」
せっかく見せてくれたので「おおっ! こりゃあうまそうだね!」と、ノリノリで褒めておきましたが、正直言ってあまり食欲は感じない。

 


7年前のおハナシです。

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途上国の水事情

2024-06-26 16:23:19 | モザンビーク

モザンビークで農作業に従事するときには、飲料水を持っていくことにしておりました。自分で飲む水はもちろん用意しますが、重要なのは一緒に働く農家の分です。空のペットボトルに水道水を詰めて、作業に参加する農家の人数にもよりますが多い時で20リットルくらいの量をクルマに積み込みます。

農家が普段飲む水は村内に掘られた浅井戸から汲む水で、薄く土色に濁っているのが常でした。言うまでもないことですが、深い井戸から汲む水ほど純度が増して透明となり、衛生的となります。だからと言って、深い井戸を掘るのはそのぶん労力がかかりますし、掘ったら掘ったで毎日重い水桶を地下深いところから汲み上げなくてはならなくなり、相当な重労働となってしまいます。というわけで、村の共同井戸は自然と浅くなり、村民が毎日飲む水は濁った不衛生な水。
ろ過する装置なんて作れません。沸騰させれば雑菌は死滅するはずですが薪は貴重な資源なので、常用の飲料水を更に安全にするために消費するのは惜しい。とりあえず飲める水はすでに確保できているんだし。先祖代々愛飲してきた濁り水ですが。

そういった背景から、町の水道水は大人気です。私がキリマネから運ぶ水は透明にきらめいて清潔感にあふれ、無味無臭。農家の面々は作業の合間に回し飲みし、余った分は作業後に奪い合いになるほどです。

しかし私自身が愛飲していたのはキリマネの水道水ではなくて、店で買ったミネラルウォーター。きれいに見えるとはいえ、水道の消毒程度はあまり信用できなかったんです。

村の浅井戸(ポリタンクを棒の先に括り付けた長柄杓で、女性が水を汲んでいる)

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キリマネ市名誉市民、その後

2023-04-01 23:23:46 | モザンビーク

キリマネ市名誉市民賞を頂いて、およそ1年になります。
副賞として、そこに住むことを条件に市内の高級住宅の終身居住権もいただきました。ベッドルームが5つもあり、小さいながらもスイミングプールとテニスコートまである邸宅です。
この副賞を、てっきり妻が大喜びしてくれるだろうと思っていたのですが、「今後の娘の暮らしなどを考えると福祉に厚い日本にいた方が安心だし、私自身、熱帯暮らしはもう充分経験したから、あなた独りで思う存分満喫したら」と超クール。せめて愛犬バタコだけでも連れていきたい、と願ったのですが、急な環境の変化に対応することが高齢のバタコにどれほど大きな負担になるのか考えたことがあるのか、と強く反論され、結局バタコの親権も得られませんでした。
というわけで、孤独なキリマネ暮らしであります。広い邸宅に私独り。暑いはずのキリマネがなんだか寒々しい。悲しき熱帯。

孤独ではありますが、割と多忙な時間を過ごしております。
はっきり言って名誉市民がこんなにも忙しいものとは思いませんでした。単なる名誉職だから、もらうものもらってあとは何もしなくていいんだろうな、と無責任に軽く考えていたんですが、さにあらず。私には昨年のサイクロン(アナ、デュマコ、ゴンベ)の被害に遭った地域を訪れ、被害状況を聴き、復興状況を視察し、被災者たちに希望に満ちた言葉をかけて慰める、という活動が求められます。
実質的に何かができるわけではありません。それでも被災者たちにとって珍しい存在である日本人が笑顔で訪問することは、彼らを力づける一助となっているようでした。

被災地訪問の合間にも、市内で開かれるメイデイなどの行事式典に参列したり、スポーツ・イベントなどにも招かれたりと、出番は数多くあります。
そういった忙しさにようやく慣れてきた矢先、新たなるサイクロン・フレディが発生しました。瞬間最大風速60mの突風が吹き荒れ、例年の雨季のひと月の降雨量の4倍に相当する600ミリの雨が降り、ザンベジア州内の被災者数は20万人を超えました。

これはまた忙しくなるぞ。
洪水で幹線道路が侵食されて通行不可能となったため遠隔地には行けず、キリマネ市を中心に被災地訪問を開始しました。
ところが不思議なことが起こりました。
道路が開通していない遠隔地であるモペイアやモクバにも「私」が訪問しているようなんです。
というのも、昨日、帰宅後に点けたテレビのニュース番組で「モペイアの被災民を慰問する名誉市民」が紹介されていたんですが、それ、私じゃなかったんです。別人だったんです。映像中の字幕には私の名前が出ているのですが、映っているのは確かにアジア人ではあるものの、全くの別人。

モペイアはキリマネから通常でも4時間くらいかけて訪れる場所で、いまは洪水で道路が分断されており、とてもじゃないけど訪問できない地域であります。思うに、その地域に住むアジア人労働者を私の影武者として雇ったのではないかと。多くのモザンビーク人にとってアジア人の顔つきには馴染みがなく、個人の区別がつかないようなんです。私は長髪にヒゲヅラという、かなり特徴的な風貌をしているのですけどねえ。

テレビのニュースで紹介された、被災民を前に堂々と演説する「私」の言葉はポルトガル語ではなく、英語でもなく、もちろん日本語でもない、どこかよその国の言葉でした。
通訳を介して語られているにもかかわらず、どうも私のスピーチよりもウケが良いようで、かなり悔しい。

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しめ縄ココナツ

2022-07-23 17:51:27 | モザンビーク

マンゴーの実が落ちないことを願って幹に藁(わら)を巻く慣習がモザンビークにあるのをご紹介したのは昨年11月。
先日、久しぶりに同じ農家を再訪問する機会がありました。
件の立派なマンゴーの樹は相変わらず太く頼もしく生えておりましたが、結実するのは10月後半でしょう。しめ縄のように見えた藁はすでに取り払われておりました。
その代わりに見つけたのが、敷地を囲むように生えている3本のココナツとオレンジの樹に巻かれた藁でした。




昨年はマンゴーに巻かれていたけど、今年のこれは何? と尋ねると、実が病気にかかるのを防ぐために巻いている、とのこと。ココナツにもオレンジにも、結実後に実が割れてしまう病気があるそうで、それを防ぐためのおまじないだそうです。

コイツラ、去年はマンゴーの幹を伝う雨水を止めるとか、花にたかる虫を防ぐとか言ってたんだよな。訊くたんびに違う答えを返してくる、いい加減なヒトタチであります。でもま、いっか。俺もいい加減だし。

誰がいつ巻くの? と尋ねてみると、これは年長の女性の役目なんだとか。どうも閉経した女性にはある種の能力が宿ると信じられているようです。もう妊娠しなくなった女性=子を守る役目を終えた女性が、果物の実を守るために樹に力を注ぎ、藁を巻き付けて結ぶことでその力が外に漏れないように封じ込める、と言うことなのかもしれません(知らないけど)。
日本の神道の巫女は20代後半で定年を迎えるそうですが、モザビではその逆で年季の入ったオババにこそ霊験が宿る(のかどうかは知らないけど)。
そういう霊験あらたかなオババは、もしやシャーマン的なヒトなのかと思って、近所にそういう特殊能力のあるオババがいてそのヒトに来てもらうの? と尋ねてみたら、
「ううん、うちのおばあちゃんが巻くの」
けっこう近場で安易に調達しているようです。
残念ながらおばあちゃんは外出しているらしく、会えませんでした。もしも在宅中であれば実際にどう巻くのか、実演してもらえたのになぁ。

しめ縄みたいに見えるんだから材質は稲藁だろう、と思い込んでおりましたが、これも間違いでありました。稲じゃないんだって。なんかそこらにある雑草。
葉だけを見るとショウブみたいな。
けっこう近場で安易に調達しているようです。





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