Weekend Strummer

ウィークエンド・ストラマー。
世間知らずのオジサンが脈絡無く語る、ギター・アフリカ・自閉症。

強盗の話 その2

2013-02-24 19:02:20 | ケニヤ

ケニヤの片田舎に住んでいた私が深夜に突然襲われる話。続編です。

驚きのあまり、私は座ったままジャンプしたようです。一瞬、尻と椅子の間に空間ができました。破れたドアの向こうから、男が一人、棒を振り上げて威嚇しながら室内に入って来ようとしていました。強盗です。

すぐに立ち上がった私はドアに走り寄り、賊と対峙しました。部屋に入られたら少々面倒になると思ったんです。握ったままだったアーミーナイフを振りかざしながら大声で、

てんめぇー! ふざけたことしやがってコノヤロー! 家の中に一歩でも入って来たらただじゃおかねーからなっ!

と、怒鳴りつけました。全部日本語なので絶対に通じるわけはありませんが、相手にしてみれば、もしかしたら空手などの格闘技も体得しているかもしれない日本人がわけのわからない言葉でわめいているんです。相手を威嚇する意味ではかなり効果的だったと思われます。

賊は若い男でした。特徴のない長袖シャツに暗い色のズボン。あまり手入れをしていないような髪が頭を大きく見せています。夜の闇をバックに白目だけが異様に光っておりました。

振り上げた棒で殴りかかるようなそぶりを見せる賊に対して、私も牽制するようにナイフを細かく動かし、

オラオラー! かかってきやがれバカタレー!

などと、相変わらず相手には意味不明の雑言を叩きつけるようにわめいておりました。 

賊は、もしかしたらこちらが抵抗するとは想定していなかったのかもしれません。それに彼が用意した武器は少々長すぎて、殴りかかるには狭い戸口が邪魔になって大きく振りかぶることができず、いかにも「攻めあぐねて」いるようでした。

いきなり、賊は手にしていた棒を私に投げつけました。私は右手に持ったナイフの構えを崩さぬまま飛んで来た棒を左腕で受け、すかさず攻撃に移ろうとしました。しかしその時にはすでに賊は逃走態勢に入っており、屋外の暗い闇にまぎれていたのです。一瞬、追跡モードに入りかけたのですが、足元に転がる岩を見て、追うのをあきらめました。賊は一人しか見えませんでしたが、こんなに大きな岩を投げつけるなんて、たぶん数人の犯行だろうと思ったんです。幸運にも出入り口を挟んで対峙することができたので1対1で立ち向かう形になりましたが、広い屋外では複数を相手にしなくてはなりません。

破られたドアを苦労して閉め、投げつけられた岩で内側から押さえました。

窮鼠猫を咬む、ということわざどおり、普段の私には考えられないほど勇ましく行動しておりましたが、それもこの時点まで。賊が逃走した後、急に怖くなりました。「窮」の字が取れて、単なる弱いネズミに戻ってしまったんです。

攻撃を受けた左の腕がジンジンと腫れ始めていました。賊が持っていたのは単なる棒ではなく、トラックなどの重量級車両に使われる鉄製のタイヤレバーだったんです。私の前腕はポパイの腕のように変形し、幸いにも骨には異常がないようでしたが、それでもかなり痛かった。救急箱から湿布を出して貼り付けました。その上から包帯を巻きつけると、気分はもう患者。さっきまでは一応は勇者だったのに。かなり弱気になっている私。ふと、

あいつら、また戻ってくるかもしれない。

という考えが脳内に芽生え、そう考えたら一気に不安が膨張し、アタマが爆発しそうになりました。強盗団は私の財産が目当てです。恨み辛みが原因ではないので説得できません。ハナセバワカル相手ではないのです。それまでの私の人生で、こんなに単純明快であからさまな攻撃を受けたことはありませんでした。

こうしちゃいられない、と、短パンにゴム草履という無防備なカッコだった下半身をジーンズとワークブーツに改め、腕の包帯を隠すためにジャケットを着込み、アーミーナイフよりも頼りになりそうな大型ナイフを腰に吊るし、賊の武器だったタイヤレバーを持って武装完了。頭部を守るためにオートバイ用のヘルメットをかぶろうかと思いましたが、外部の音が聞こえにくくなるのでやめました。

室内の様子を外から見えにくくするためにランプの灯りを暗めにして、そのかわり手元には強力懐中電灯を備え、ドアのそばで椅子に座って外の気配を探りました。不寝番です。

あんなに大声を出したのに、ご近所周辺は静かです。誰も外に出てくる様子はありません。川の流れだけがガヤガヤと平和に聞こえてきます。

何かを待つように緊張して耳を澄ますうちに、窓の外が白み始め、朝の挨拶を交わす声など、ヒトが動き出す気配がし、ようやく安心した私は寝室まで行ってベッドにぶっ倒れ、深く眠ったのでした。

(この項、更に続く)

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強盗の話 その1

2013-02-19 05:23:00 | ケニヤ

30年ほど前の話です。

当時の私は二十代の半ば。単純に年齢だけを比較すると現在の半分くらいの年月しか生きていない若造だった私は、ケニヤのある地方の田舎町に独りで住んでおりました(五十代のオジサンになった現在もほぼ同様の境遇にありますが、ほっといてください)。

その町の人口は当時1000人くらいだったでしょうか? 三つの県の境が接する町で幹線道路が通っており、人口が少ない割にヒトの出入りが激しくて賑やかな町でした。しかし賑やかな割には開発があまり進んでおらず、当時は給電も給水もされておりませんでした。

「三つの県の境でヒトの出入りが激しくて賑やかだけど給電施設が無くて夜が暗くて長い」という条件を合計すると、「複数の部族が交じり合う土地で、あまり治安がよろしくない」という意味になります。誰かの家に何者かが侵入して何らかの悪事を働いた、という物騒な噂はしょっちゅう耳にしました。

その町に住む唯一の外国人だった私は少々緊張しながら毎日を過ごしておりましたが、それも初めのうちだけで、我が身に降りかかる実害が無い日々が数ヶ月も続くと緊張することに慣れてしまい、緊張することで何かの危険に備えているつもりになってはいるものの結局は何の備えもできていない、という、言わばごく普通の暮らしぶりに落ち着いていたのです。

小さな借家は幹線道路から少々離れているために自動車の騒音は届かず、その代わり近くを流れる川の音がガヤガヤと耳に心地良く響く、なかなか気持ちの良い立地条件でありました。前述のように給電も給水も無かったので、生活用水には溜めた雨水や川の水を利用し、夜間の灯りはロウソクか灯油ランプに頼る生活でありましたが。

終業後に帰宅するとすぐに夕食の準備に取り掛かります。米を研いだり材料を切ったり、まだ日のある明るいうちにある程度の支度を済ませ、その後は日が暮れるまで窓辺で読書。日が沈むとランプを灯し、準備しておいた材料を石油コンロで調理して夕食を完成させて食べ、食べ終わってしまうとその後は特にすることもありません。ほんの少しのアルコールにほのかに酔ってそのまま就寝してしまう、という毎日でありました。

ある夜のこと。

友人から借りた時代小説が面白く、珍しく夜更かしして読みふけっておりました。時が進み、日付が変わりましたがまだ眠る気にはなれず、ランプに油を足して読書続行。

ふと、何者かが家の外を歩く音に気づきました。ちょうど忍者が登場するくだりを読んでいた私はテーブル上にあったアーミーナイフを手に取って刃を立て、「む、曲者か?」と身構えました。もちろんノリでポーズを取ってみただけなので、真剣味は皆無です。隣に住んでいるオバチャンが夜中にウチのドアの前を通ってトイレに行くことがあるので、きっとその足音だろうと思ったんです。

突然、玄関のドアのノブがガチャガチャと回されました。もちろん施錠してあるので、ドアは開きません。

おや? オバチャン、こんな夜更けに何の用だろ? でも、何も声をかけずにドアを開けようとするなんて、変だな?

ナニ?

と尋ねてみました。「誰?」を意味するスワヒリ語は「ナニ?」なんです、ややこしいですが(ちなみに「何?」と尋ねるときには「ニニ?」と言います)。

ドアの外から

「グッド・イブニング」

と、男声の返事がありました。隣のオバチャンではありません。もともと我が家を訪問するヒトは極めて少なく、加えてこんな夜更けの訪問客というのは今までに例がありません。私の名前を呼びかけもしないということは、たぶん面識の無い人物で、こちらの誰何(すいか)に対して「こんばんはー」と返答するところに余裕が感じられ、ちょっと嫌な予感がしました。

不安に駆られた私が語気を強めて、

ナニ・ウェウェ?! (お前、誰なんだ?!)

と再度尋ねたとたん、大きな音がして玄関のドアが弾け飛ぶように破られました。一抱えもある岩がぶち当てられたのです。

(この項、続く)

 

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ギターを空輸する方法

2013-02-03 04:51:34 | ギター

犬に続いてギターの空輸です。

海外に赴任するたびに愛用のギターを持って行きます。なので、今までに海外にギターを空輸した経験は豊富です。

大事な楽器ですから、やはり他人の手に委ねるのは少々勇気が要ります。特にヨーロッパ諸国で乗り換える必要があるときなど、積み下ろし時の荷物の取り扱いが少々荒いことが多いので、できれば自分の手で運びたい。

客室に持ち込むことができればそれに越したことはないのですが、手荷物として認めていただくには、ギターは少々サイズ・オーバーのシロモノで、チェックイン・カウンターで係の方に交渉しても断られることが多々あります。

以前、チェックインの時には見送りに来てくれた家族にギターを預けてその存在を知らせず、搭乗時にいきなりギターを持ち込もうとしたことがあります。一応許してくれはしましたが、ものすごく嫌な顔をされました。自分でもこれはとてもズルイ行為であった、と反省しております。それ以来、最初からチェックイン・カウンターで預けることを前提に準備しておきます(一応、お願いはしてみますけどね)。

当然ですが、ハードケースを使用し、収納時にはゆるめた弦の下に新聞紙などを挟み、エレアコの場合は内臓電池をはずしておきます(振動ではずれてケース内で暴れたらヤバイので)。

一番重要なポイントは、ヘッドが収まる空間に新聞紙を丸めて詰めることです。輸送中に何か衝撃を受けたとき、ケース内部でヘッドが振動し、そのショックで折れることがあるんです。ですからその振動を抑える工夫をしておく必要があります。

新聞紙を丸めて♪オベント箱にオニギリをちょいと詰める♪要領で詰めていきます。隙間なく、しかしギッチリ過ぎず、多少ソフトに。試しにギターを入れてみて、ヘッドがちょっと浮くくらいの感じにします。更にヘッド上にもいくつか新聞紙玉を載せ、ケースの蓋を閉めるときに若干抵抗を感じる程度に仕上げます。

ケース内部とボディの間に隙間があるようでしたら、シリコンクロスとかタオルとか、柔らかめの布を詰めて動かないようにします。

で、ケースを閉めて、その上からダンボールをガムテープなどで貼り付け、荷造り用のひもでしばります(ケースに傷がつくのが嫌なので)。楽器店でケースが入るくらいのダンボール箱をもらってくると非常に楽です。

荷造りがすんだら「Fragile!!」と朱書きします。チェックイン時にもカウンターでフラジャイル・スティッカーを数枚もらってベタベタ貼り付けます。

これでたぶん大丈夫。今まで、目的地に到着後、ケースを開けて後悔したことは一度もありません。

でもお断りしておきますが、何か好ましくない結果になったとしても、私は責任持てません。

 

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