Weekend Strummer

ウィークエンド・ストラマー。
世間知らずのオジサンが脈絡無く語る、ギター・アフリカ・自閉症。

キリマネ市名誉市民、その後

2023-04-01 23:23:46 | モザンビーク

キリマネ市名誉市民賞を頂いて、およそ1年になります。
副賞として、そこに住むことを条件に市内の高級住宅の終身居住権もいただきました。ベッドルームが5つもあり、小さいながらもスイミングプールとテニスコートまである邸宅です。
この副賞を、てっきり妻が大喜びしてくれるだろうと思っていたのですが、「今後の娘の暮らしなどを考えると福祉に厚い日本にいた方が安心だし、私自身、熱帯暮らしはもう充分経験したから、あなた独りで思う存分満喫したら」と超クール。せめて愛犬バタコだけでも連れていきたい、と願ったのですが、急な環境の変化に対応することが高齢のバタコにどれほど大きな負担になるのか考えたことがあるのか、と強く反論され、結局バタコの親権も得られませんでした。
というわけで、孤独なキリマネ暮らしであります。広い邸宅に私独り。暑いはずのキリマネがなんだか寒々しい。悲しき熱帯。

孤独ではありますが、割と多忙な時間を過ごしております。
はっきり言って名誉市民がこんなにも忙しいものとは思いませんでした。単なる名誉職だから、もらうものもらってあとは何もしなくていいんだろうな、と無責任に軽く考えていたんですが、さにあらず。私には昨年のサイクロン(アナ、デュマコ、ゴンベ)の被害に遭った地域を訪れ、被害状況を聴き、復興状況を視察し、被災者たちに希望に満ちた言葉をかけて慰める、という活動が求められます。
実質的に何かができるわけではありません。それでも被災者たちにとって珍しい存在である日本人が笑顔で訪問することは、彼らを力づける一助となっているようでした。

被災地訪問の合間にも、市内で開かれるメイデイなどの行事式典に参列したり、スポーツ・イベントなどにも招かれたりと、出番は数多くあります。
そういった忙しさにようやく慣れてきた矢先、新たなるサイクロン・フレディが発生しました。瞬間最大風速60mの突風が吹き荒れ、例年の雨季のひと月の降雨量の4倍に相当する600ミリの雨が降り、ザンベジア州内の被災者数は20万人を超えました。

これはまた忙しくなるぞ。
洪水で幹線道路が侵食されて通行不可能となったため遠隔地には行けず、キリマネ市を中心に被災地訪問を開始しました。
ところが不思議なことが起こりました。
道路が開通していない遠隔地であるモペイアやモクバにも「私」が訪問しているようなんです。
というのも、昨日、帰宅後に点けたテレビのニュース番組で「モペイアの被災民を慰問する名誉市民」が紹介されていたんですが、それ、私じゃなかったんです。別人だったんです。映像中の字幕には私の名前が出ているのですが、映っているのは確かにアジア人ではあるものの、全くの別人。

モペイアはキリマネから通常でも4時間くらいかけて訪れる場所で、いまは洪水で道路が分断されており、とてもじゃないけど訪問できない地域であります。思うに、その地域に住むアジア人労働者を私の影武者として雇ったのではないかと。多くのモザンビーク人にとってアジア人の顔つきには馴染みがなく、個人の区別がつかないようなんです。私は長髪にヒゲヅラという、かなり特徴的な風貌をしているのですけどねえ。

テレビのニュースで紹介された、被災民を前に堂々と演説する「私」の言葉はポルトガル語ではなく、英語でもなく、もちろん日本語でもない、どこかよその国の言葉でした。
通訳を介して語られているにもかかわらず、どうも私のスピーチよりもウケが良いようで、かなり悔しい。

コメント (2)
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