Weekend Strummer

ウィークエンド・ストラマー。
世間知らずのオジサンが脈絡無く語る、ギター・アフリカ・自閉症。

稲の脱穀法いろいろ

2024-09-29 12:49:19 | モザンビーク

今夏の米不足騒ぎ。猛暑や豪雨などの異常気象のせいらしいですが、もしそうだとすると今後しばらくは稲作も不安定になるのかもしれません。
ところで稲の収穫には、日本ではコンバインが多用されます。コンバインは稲を刈り取り、内部で回転するドラム(脱穀用の爪が付いた筒)で脱穀すると同時に、ドラムの回転で生じる風で未熟籾や土などの軽いゴミを吹き飛ばし、稲籾だけを収穫する機械です。刈り取りと脱穀を同時に済ませ、また、設定にもよりますが、脱穀した後の稲わらを細かく切り刻んで田に散布できたりもするので、すごく便利です。

最近はアフリカでも便利な農業機械が普及しつつあるようです。
ですが、私が赴任していた頃のケニヤではコンバインはまだまだ珍しく、多くの農家は鎌で刈り取った稲を数日間乾燥させた後、穂首の部分を岩に打ちつけて籾を落としておりました。

束にして持った稲を足元にある岩に叩きつけるんです。穂を打ち付けるのではなく、岩の角で穂首を折る、むち打ち脱穀法。このくらいの稲束であれば、だいたい4回くらい打ちつければほとんどの稔実籾は脱穀できます。
脱粒しやすいインディカ種の稲だからこそできる脱穀方法です。日本の品種(ジャポニカ種)は脱粒性が低く、岩に打ちつけたくらいでは脱穀できません。
インディカ種の中でも脱粒性は品種によって違うので、農家にはより脱穀しやすい品種が好まれるようになります。3回で脱穀完了する品種を作ってよー、などと農家に言われたこともありましたっけ。そんなに脱粒性が高い品種を育種して作ったところで、今度は収穫前に吹く風程度の刺激で簡単に籾が落ちてしまい、収量は激減してしまうでしょう。

モザンビークでの脱穀方法は、収穫した稲穂を棒で打つ方法です。
刈り取って積み上げた稲藁を長い棒で叩きます。なんかもう力任せ。コレデモカ! という勢いで何度も何度もぶっ叩きます。この方法でももちろん脱穀できますが、籾は稲わらの中に落ちて行くので、経過が目視できません。なので、すでに脱穀が完了しているのに叩き続ける、なんて、非効率的な作業にもなりかねません。

大変そうだなぁ、疲れるだろうなぁ、と思い、傍らにあった岩を設置してケニヤ式脱穀法をデモンストレーションしたら、おお、こいつぁいいぜ、と大人気。周囲の農家みんなが真似し始めました。

お礼のつもりでしょうか、傍らにいた農家の娘さんが手のひらを差し出して「良いもの見せてあげる」。

え? なになに? なに見せてくれんの?
覗き込んでみたらネズミの赤ちゃんでした。

「さっき稲わらの中で捕まえたの。生まれたてみたい。柔らかくておいしいわよ」
せっかく見せてくれたので「おおっ! こりゃあうまそうだね!」と、ノリノリで褒めておきましたが、正直言ってあまり食欲は感じない。

 


7年前のおハナシです。

コメント (2)
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自転車泥棒

2024-08-31 11:46:32 | 映画の話

ヴィットリオ・デ・シーカ監督によるこの作品を私が観たのはまだ小学生の時でした。
当時の我が家では子供の就寝時間が決まっており、幼い私と弟は夕食後数時間以内に就寝する習慣でしたので、21時に始まるテレビの洋画番組は「大人用の番組」で、ほとんど見る機会がありませんでした。ですが例外もあって、両親が「名画」と評価する作品については「この映画は観といたほうがいいから今夜は夜更かししてテレビを見なさい」と薦めてくれたものです。
「家庭内文部省推薦作品」なんて書くと、堅苦しくて教育的で、途端につまらなそうな映画に思えてしまいますが、当時の私にとってたいていの映画は楽しいエンターテイメントでありましたし、それに子供にとって夜更かしの機会はいつだってワクワクです。パジャマに着替えて歯も磨き、いつでも寝落ちできる態勢を整えたうえでの名画観賞会は、積極的に参加すべき楽しいイベントでありました。
そんな形で「小鹿物語」や「老人と海」、「山」などの名作映画に触れることができたのは、少年期の私にとってとても幸運だったと思います。

ですが、残念ながら「自転車泥棒」は暗い映画です。
第二次大戦後のイタリア。失業した主人公が幸運にもポスター張りの職を得ますが、それは「自転車所有者に限る」という条件付きでした。シーツを質に入れ、すでに質に入っていた自転車を出して仕事を始めますが、すぐに盗まれてしまいます。幼い息子を連れて盗まれた自転車を捜し歩く主人公。見つからない自転車。探し疲れた主人公は、他人の自転車を盗もうとし、しかしその場で取り押さえられてしまいます。多くの人たちからのリンチに遭うところ、息子が涙ながらに慈悲を乞い、放免されます。息子の手を引き、泣きながら帰路に就く主人公の姿にエンドマークが重なってこの映画は終わります。

え? これで終わりなの?
驚きとともに尋ねる私に、父は
「うん、これで終わり」
えーっ! そんなぁ!

自分にとってハッピーエンドではない映画を見た初めての経験でした。
絶対に自転車は見つかるはずだ、と信じて最後まで眠らずにおりましたのに。
こんないたたまれない心境のまま寝床に入らなくてはいけないなんて。
楽しくないまま終わってしまう映画というものが存在するということがどこか理不尽に思え、「あの後、親子はどうなってしまったんだろう」と心配し、ネガティブな後味がその後も長く尾を引きました。
親の庇護のもと、何一つ不自由なく育てられた私にとって、どうも世の中というものは厳しいらしい、ということを教えてくれた映画でもあります。

劇中、オープンエアのレストランで親子が食事をするシーンがあります。男の子が注文したピザのチーズがびよーんと伸びるのを見て、あんなに柔らかく伸びる食品は正月の雑煮に入っている餅くらいしか思い当たるものがなかった私は、一緒に映画を見ていた母親に、
あれはいったい何なのだ?
と尋ねました。
「チーズよ」
まさか! あれがチーズであるはずがない。チーズというものは銀紙でヒトクチサイズの三角形に包装された固形物(給食のチーズじゃねーか)。
非情なエンディングの前に、すでにチーズに裏切られていたのでした。

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人類の子供たち

2024-07-28 16:36:02 | 映画の話

隣の老朽化した家屋を取り壊す工事が行われ、その作業中にどういうわけか我が家のテレビのアンテナケーブルが切断されてしまい、以来半月ばかりテレビ放送が見られない生活が続いております。
それまでは在宅中はテレビのスウィッチをONにしたまま、特に見たい番組が無いにもかかわらず惰性的に見てしまうことが多く、我ながら駄目な習慣だな、と感じておりました。今回は強制的にビーテレ無し状態に突入したのですが特に不便は感じず、却って気分は清々しく、しばらくはこのままでいっか、と近所の電気屋さんへの修理依頼も延ばし延ばしになっています。
ですが、やはり映像は時々見たくなるもので、暑いけれど静かな晩はお気に入りの映画のDVDを再生して楽しんでいます。

「トゥモロー・ワールド」(原題:Children of men)は2006年に作られたSF 映画で、2027年の世界を描いています。(以下、ネタバレを含みます)
2008年以降、複合的な理由により世界中で一切子供が生まれなくなってしまいました。人口が減少しているんだから、余り気味の地面をうまく使って、みんな仲良く過ごせば良いのに、世界中いたるところで紛争や環境汚染によるトラブルが頻発している未来です。
子供が生まれないことで世界全体が未来を諦めてしまっており、緊張感のない恐怖、もしくは安堵感をコアとする不安、のような雰囲気が映画全体を包みこんでいるような印象があります。
ロンドンで、一人の若い移民女性がなぜか例外的奇跡的に妊娠します。しかし彼女は自分の妊娠に気づかないまま時間を過ごし(すでに彼女の周辺で妊娠について見聞することは皆無になっていたので知識が無かったんです)、ようやく気づいたものの誰にも相談できずに時間が経ってしまい、とうとう臨月を迎えてしまいます。その妊娠を、なぜか反政府ゲリラ組織が知ることとなり、政治的に利用されそうになる。政府の軍隊とゲリラ組織の戦闘の間で翻弄される若き妊婦。
数分間に及ぶ長回しが多用されるために暗く残酷な戦場シーンにも臨場感があふれ、その反面、しぶとく生きようとする登場人物たちが魅力的に感じられます。
クライマックスでは激しい市街戦の中、生まれたばかりの赤ん坊を抱いた彼女が安全な場所を求めて移動します。流れ弾を受けて負傷した市民もひどく苦しいはずなのに赤ん坊の存在に気づいて穏やかな笑顔を見せ、銃を構える兵士たちは誰もが驚愕し、口々に「シースファイア!」を叫び、母娘を安全に通行させます。地球上に存在するたった一人の赤ん坊は、世界中の人類にとって唯一の希望です。戦闘を中断した両軍の兵士たちはまるで神を目撃したかのようにひざまづき、優しい表情を浮かべる。母娘が通過した直後には再び銃火が激しく交差することになるのですが。

ああ、映画の世界ではこんなにも赤ん坊は大事にされるのに。
我々の現実世界ではガザやウクライナで今も多くの子供たちがひどい目に合っています。

オリンピックなんてやってる場合じゃない(もともと興味ないんだけどさ)。

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途上国の水事情

2024-06-26 16:23:19 | モザンビーク

モザンビークで農作業に従事するときには、飲料水を持っていくことにしておりました。自分で飲む水はもちろん用意しますが、重要なのは一緒に働く農家の分です。空のペットボトルに水道水を詰めて、作業に参加する農家の人数にもよりますが多い時で20リットルくらいの量をクルマに積み込みます。

農家が普段飲む水は村内に掘られた浅井戸から汲む水で、薄く土色に濁っているのが常でした。言うまでもないことですが、深い井戸から汲む水ほど純度が増して透明となり、衛生的となります。だからと言って、深い井戸を掘るのはそのぶん労力がかかりますし、掘ったら掘ったで毎日重い水桶を地下深いところから汲み上げなくてはならなくなり、相当な重労働となってしまいます。というわけで、村の共同井戸は自然と浅くなり、村民が毎日飲む水は濁った不衛生な水。
ろ過する装置なんて作れません。沸騰させれば雑菌は死滅するはずですが薪は貴重な資源なので、常用の飲料水を更に安全にするために消費するのは惜しい。とりあえず飲める水はすでに確保できているんだし。先祖代々愛飲してきた濁り水ですが。

そういった背景から、町の水道水は大人気です。私がキリマネから運ぶ水は透明にきらめいて清潔感にあふれ、無味無臭。農家の面々は作業の合間に回し飲みし、余った分は作業後に奪い合いになるほどです。

しかし私自身が愛飲していたのはキリマネの水道水ではなくて、店で買ったミネラルウォーター。きれいに見えるとはいえ、水道の消毒程度はあまり信用できなかったんです。

村の浅井戸(ポリタンクを棒の先に括り付けた長柄杓で、女性が水を汲んでいる)

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憧れるのはやめましょう。

2024-05-24 16:02:28 | その他

温暖化が叫ばれる最近は状況が変化しているかもしれませんが、本来、北海道にはゴキブリがいないそうです。気温が低すぎて越冬できないんですって。だから北海道人の多くはゴキブリを見たことがなく、気持ち悪い、などの悪印象もないんだそうです。
ただいるだけで悪者扱いされ、攻撃され続けたゴキブリにしてみれば「ようやく正当な理解者が現れた!」という心境でありましょう。ですが、そんな北海道人も本州に移るとゴキブリが嫌いであるという周囲の意見に影響を受けて、徐々にゴキブリ嫌いに染まっていくのだそうです。
嫌悪感はもともと個人の生理的な感情であるはずなのに、自分では直接は感じてはいなかったにも関わらず、周囲に影響されて同じ反応を示すようになる、と言うのは何とも不思議な感じがします。

さて、今年は空前のカメムシ大発生の年だそうです。主に農作物への被害が心配されておりますが、やはりカメムシといえばその悪臭が有名です。
幼い頃から「カメムシは臭いにおいを出す」というのは知識として持っておりましたが、実際に経験したのは実は成人後でした。
地方にあった某合宿施設に数か月間滞在した時、季節は秋でありましたが、そこここで変わった匂いを経験するようになったんです。
んー? ナンダこの匂いは?
特徴的な匂いではありますがさほど刺激的ではなく、別に邪魔になる匂いではない。過去に嗅いだことがあるような気もしたのですが、なんだかわからない。
そのうちに他の合宿メンバーがカーテンなどに殺虫剤を吹き付けるようになり、わけを訊くと「臭いカメムシを殺しているのだ」と。
なーるほど! これはカメムシの匂いなのか! 
別に嫌いじゃないと思っていたのですが、周囲のヒトに臭い臭いと言われ続けているうちに本当に臭く感じるようになってしまいました。それでも、別に駆除しなくちゃいけないと思うほどの嫌な匂いじゃなかったな。
タイのある地方ではある種のカメムシを捕まえて乾煎りして料理の香りづけとして使用するほどです。情報先行で「臭い」というレッテルが貼られてしまうのは気の毒にも感じます。

そんな私が楽しみに感じているのがスカンクの匂い。スカンクの悪臭はカメムシ以上に有名でありますが、私はこの臭いを経験したことがありません。一説によるとスカンクの臭気を浴びた肉食獣はその強烈な臭いによって獲物となる草食獣に警戒され、近づくことさえできなくなり、獲物が取れなくて餓死してしまうんだとか。
子供の頃、犬のうんこを踏んづけただけで「エンガチョ」と呼ばれて三日ほど仲間外れにされて泣いた経験を持つ私は興味津々。
いったいどんな臭さなのか? いつか嗅いでみたい。

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