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Weekend Strummer

ウィークエンド・ストラマー。
世間知らずのオジサンが脈絡無く語る、ギター・アフリカ・自閉症。

小笠原のカカ

2011-07-01 18:36:50 | その他

小笠原諸島が世界遺産になったそうです。

私にとって小笠原の父島は少々馴染みがある場所です。もう20年以上前になりますが、アルバイトをしながら数ヶ月間滞在したことがあるんです。

楽しみだったのが水曜の夜。

夜8時頃、私のように本土からアルバイトに来ていたヒトたちが浜に集まって、打ち上げられた流木を叩いて遊ぶんです。と、文章にするとなんだかバカみたいですが。

どこか貫禄を感じさせるほど潮や砂に磨かれて乾燥した流木を選びます。細めの流木を二本拾ってスティック代わりにして叩くと、タンスカカンカン。結構良い音がするんです。大きく太い流木にはチェーンソーで切り込みを入れて中をくりぬく。ここまで加工するともう流木じゃありません。立派な楽器です。叩くとゴンゴン響きます。

その流木楽器、いわれは知りませんが「カカ」と呼ばれておりました。形状も音色も名称も、すべてが妙に原始的な楽器です。

前の週に浜に積んでシートをかぶせておいたカカを、その晩その場所に集まった名前も知らない10人くらいが一つづつ手に取ります。リーダー的立場のヒトを中心にして、なんとなく輪を描くように、それぞれが自分の位置を決めてカカを安置。

当時、何もお手本にするものはなく、誰かがベースとなるリズムを刻み始めると、それを邪魔しないように他のヒトたちが自分のカカを叩いて参加していくだけ。流木ですからひとつひとつの形状も材質も質量も、そして当然音色も違います。基本的に暖かみを感じさせる木の音が何種類も混ざり合い、更に波音とうまく絡んで耳にとても心地良く響くんです。輪の中心にいるリーダーが奏でるソロは手数も多く、単調になりがちな他のメンバーのドラミングの中でスパイスのようにきらめいておりました。

他には誰もいない砂浜で、名前も知らないメンバーで、誰かに聞かせるためではなく、その場限りの演奏を純粋に楽しむ。いま思い出しても、あれはかなりクォリティの高いセッションだったと思います。

アルバイト期間が過ぎて私が島を去るときには、そのメンバーが漁船をチャーターしてカカを運び込み、私が乗る「おがさわら丸」を追いかけながら演奏してくれました。強く吹く風や船のエンジン音にかき消されて、カカの音なんかほとんど聞こえやしないんですけど、とっても感動的なシチュエーションでありました。

感動を味わったその数時間後、太平洋の波にもまれて人生最悪の船酔いを経験することになる私でありました。

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