Weekend Strummer

ウィークエンド・ストラマー。
世間知らずのオジサンが脈絡無く語る、ギター・アフリカ・自閉症。

諸星大二郎の「生物都市」

2021-08-05 15:48:00 | その他

だいぶ前の作品になりますが、諸星大二郎の「生物都市」はショッキングなマンガでした。
40年以上前に読んだ作品でストーリーはすでにうろ覚えですが、以下に要約してみます。

地球外生物の存在を調べるために木星の衛星・イオに向かった宇宙船が地球に帰還します。地球に着陸した宇宙船のハッチが開きますが、乗組員は誰も出てきません。無線による呼びかけにも応答がないので、宇宙船が地球外生物によって乗っ取られた可能性も考えられ、それを警戒して誰も入ることができません。そのうち、船外で奇妙な現象が発生します。金属と生物が融合して一体化するようになり始めたのです。クルマを運転していたヒトはクルマと溶け合って一体化し、キッチンで炊事をしていたヒトはフライパンと融合してしまう。この現象の原因は宇宙船にある、と確信した一人の新聞記者が苦労の末に宇宙船に踏み込みます。そこで見たものは、宇宙船と融合した乗組員たちの姿でした。驚愕する新聞記者に船長が説明します。
衛星・イオには確かに生物がいたのですが、それは菌のようにきわめて微小で空気中を漂うもので、接触した生物を金属と融合させるように作用するものでした。危険を察知した乗組員たちはすぐに出入口を閉めて地球への帰路に就きますが、時すでに遅く、イオ菌(仮称)は宇宙船内に侵入していたのです。地球に近づくにしたがってイオ菌の作用により宇宙船と一体化した乗組員は個として存在せず、意識を共有することによって会話せずともお互いを完全に理解でき、そればかりか腰痛などの身体の不具合もなくなることになったのです。
船長の説明を聞くうちに自らも宇宙船と融合し始めた新聞記者が遮ります。「もう説明しなくていい。僕にも君たちの意識が入り始めた。すべて理解できる」
ラストは地球上の生物がすべて融合し、ものすごく静かな惑星になって終わります。

ところでインターネットが普及し始めたのは私がスリランカに赴任していた頃でした。スリランカのへき地からでも電話回線さえあれば瞬時に日本とやり取りができるようになった時、私はこの「生物都市」のラストシーンを連想しました。
意思の疎通に距離や時間の障害がなくなり、望めば瞬時にやり取りが成立する。
全ての会話が気軽にできて、力まずに説得できるようになる。
あれから30年近く経っても未だいろいろな課題があって「静かなユートピア」からは程遠い状態のインターネット社会ですが、更に時が進めば、理想の状態に近づいてゆくと期待します。

今回、唐突に「生物都市」を思い出したのは、実は理由があります。
新型コロナウイルス対策のワクチンを先月初めと今月初めに接種したのですが、そのたびに不思議な夢を見たんです。
2回とも同じシチュエーションの夢でした。絶望する結末となる筋立てで、目覚めた時の気持ちはちょっと重くなるものでしたが、現実離れしていてスリリングで、とても面白い内容でした。それもそのはずで、舞台となったのが「生物都市」の世界観に酷似していたんです。
何かと何かが融合した怪物めいたものに追いかけられて逃げ回る、という内容です。捕まると取り込まれてその怪物の一部になってしまう。
二夜ともほぼ同じ内容だったのが不思議です。そして、二夜ともすごく見応えのある夢だったんです。
発熱や悪寒、歩けなくなるほどの下肢の筋肉痛など、今回の接種では副反応に大いに苦しめられたのですが、苦しんだぶん、この夢はかなり楽しいご褒美に感じられました。
いや、この夢見がワクチン接種への反応だったとしたらの話ですけど。

コメント
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