Don't Let Me Down

日々の雑感、引用。
言葉とイメージと音から喚起されるもの。

4月になれば彼女は来る

2009-04-07 21:42:28 | 日記

4月になれば彼女は来る
雨で流れの水かさが増すころ
5月、彼女はとどまる
ぼくの腕のなかで安らぐ

6月、彼女は気分を変える
落ち着かず夜をさまよう
7月、彼女は飛んでいく
なんの警告もなしに

8月、彼女は死ななければならない
秋風が冷たく吹きはじめて
9月、ぼくはおもいだす
新しかった恋が、古びてしまったと
<Simon & Garfunkel :”April Come She Will ”>


ぼくの小さな町では
神を信じて育った
神はぼくたちをみつめていて
壁に向かって信仰を誓うとき
ぼくにいつものしかかってきた
主よぼくは思い出す
ぼくの小さな町を

学校がひけて家に帰るときは
工場の門の前を自転車で飛ぶよう走り抜けた
母さんは洗濯の最中で
ぼくたちのシャツを汚れた風に干していた

雨があがると
虹がでた
でもそれは真っ黒だった
その虹に色がなかったからじゃなく
その町のみんなにイマジネーションが欠けていたから
すべてが同じものだった
ぼくの小さな町では

ぼくの小さな町では
ぼくは何者でもなかった
父さんの子である以外は
カネをためて
栄光を夢見ていた
引き金にかけた指みたいにひきつって
死者と死んでいく人しかいない町を離れる
ぼくの生まれた小さな町を

死者と死んでいく人しかいない
ぼくの小さな町
死者と死んでいく人しかいない
ぼくの小さな町を
<Paul Simon:“My Little Town”>


俺は貧しい
身の上話はめったにしない
俺は自分の反抗心を浪費した
ポケットいっぱいのつぶやきで
約束は
嘘と冗談
ひとは自分が聞きたいことだけを聞く
残りは無視する

俺が家族と故郷を捨てた時
もはや子供じゃなかった
見知らぬ人々にまじって
駅の沈黙のなかで
恐怖におそわれた
低いところに横たわり
貧しい片隅を探す
そこではぼろを着た人々が行く
かれらが想像できるだけの場所を求めて

ただ労働者の賃金を求める
仕事を探しに来たのだ
だが仕事はない
ただ娼婦の呼び声がある
7番街で
白状する
そんなに寂しい時には
俺はそこでいくばくかの慰めを得た

冬服を用意しながら
この街から消えたくなる
故郷へ帰りたい
ニューヨーク・シティの冬は
身を切るように来る
俺を誘う、俺を誘う
故郷へと

開拓地にボクサーはひとり立つ
闘いは彼の職業
そしてかれは督促状を受け取る
かれを打ちのめす打撃のたびに
かれが叫びだすまでに切り刻まれる時に
怒りと恥のなかで
“俺はやってられない、こんなことはやってられらない”と思う
しかしこのファイターは戦い続ける
<Paul Simon:THE BOXER>



若かった頃を思い出せ
君は太陽のように輝いていた
輝け狂気のダイヤモンド
今君の瞳にみえるのは
虚空のブラックホール
輝け狂気の瞳
鋼の風に吹きさらされて
幼児期とスターダムの間でめった撃ちされた君
来たれ、
君を標的にする遠い笑い声、異邦人、伝説、殉教者
輝け!

君はあまりに早く秘密にたどり着いた
月に向かって泣く
輝け狂気のダイヤモンド
夜の影にさらされ
むきだしの光にさらされ
輝け狂気のダイヤモンド
鋼の風に乗って
気まぐれで正確な善意を使い果たした君
来たれ、
君の遊蕩者、千里眼、ペンキ屋、笛吹き、囚人
輝け!
<Shin On Your Crazy Diamond>


ウエルカムわが息子、ようこそマシーンへ
どこへ行ってたんだい?
どこだってかまわない
おまえはパイプラインの中で、
おもちゃとボーイスカウトをあてがわれて満足だった
おまえは母さんを罰するためにギターを買ったよな
そして学校は嫌いだった
だれひとりバカじゃないって知っていたから
だから、ようこそ、マシーンへ

ウエルカムわが息子、ようこそマシーンへ
おまえはどんな夢を見た?
どんな夢だってかまわない
おまえはスーパー・スターを夢見た
卑しいギターを弾くヤツさ
彼はいっつもステーキを食らう
ジャガーでドライブが大好き
だから、ようこそ、ようこそ、マシーンへ
<Welcome To The Machine>


そして、君は地獄から天国までを語りえると思った
苦痛から青空までを
君は冷たい鋼の線路と緑の草原を語ることができるか?
ベール越しの微笑を?
君は語れると思うのか?

彼らは英雄と幽霊の取引に君を取り込んだのか?
木々を熱い灰に?
さわやかな風を蒸し暑さに?
変化のかわりに冷たい安楽を?
そして君は戦いを放棄し
駕籠の中に囚われる道を選んでしまったのか?

なんども、なんども思った、君がここに居てくれたらと
ぼくたちは何年も何年も金魚鉢のなかの二つの失われた魂だった
いっしょにあの古いグラウンドを走った
ぼくらは何を見出した?
あの同じ古くからある恐怖さ
君がここにいてほしい
<Wish You Were Here>

*PINK FLOYD:WISH YOU WERE HEREより

”癒し”を売る人々

2009-04-07 08:43:23 | 日記

大新聞は、“「癒し」の儀礼化や産業化”(下記ブログ参照)を煽り立てる言説を展開している。

なんのための“気休め”なのだろうか。

現実を見ず、無思考の人々を増やすためだけに“大新聞”が機能するならば、彼らこそ真剣に生きるものの“敵”と呼ばざるを得ない。


▼ 禅宗の高僧から発起し、医師免許を取った対本宗訓(つしもと・そうくん)さん(54)が、このほど東京下町の内科クリニックで働き始めた。一線で腕を磨いて、いずれは終末期の在宅患者を見舞うような役割を描いている▼研修中、死期を控えた80代の女性患者に接した。面会もなく、テレビも見ず、終日ベッドにいた。「若い時のことを一つひとつ思い出して、なにも退屈じゃありません」。それを聞き、対本さんは察したという。次の世界に移る大切な心の作業なんだと。(今日天声人語)


◆「一千億人のなかで一番」の幸せをかみしめるのか、育児の疲れを「一千億分の一」という奇跡のような縁(えにし)の糸で癒やすのか、数字の使い道は分からない◆青い鳥の住処(すみか)はチルチルとミチルの物語で知っている。知っていながらついつい忘れ、いつも不機嫌な顔ばかりしている。思い出させてくださって、ありがとう――次の世界に移る大切な心の作業1行をここに書く。(今日読売編集手帳)



天声人語について言えば、医師免許をとる“高僧”がいても構わない、ぼくはその人を非難しているのではない(あたりまえだ)
しかし“終末医療現場”で働いている人々は“高僧”だけではない。
すでに現在(日々)寝たきりの人々、死にゆく人々をみとるたくさんの人々がいる。
そこで、どういう具体的な問題が生じているか(死にゆく人々にとって、それを看取る人々にとって)こそが具体的に語られるべきだ。
“次の世界に移る大切な心の作業”とは、いったいなんのことだか、さっぱりわからない。
“次ぎの世界に移る”などという言葉を使うこと自体がインチキではないか。


読売・編集手帳は、あきれてものもいえないが、言う(笑)
いったいこれを書いているひとは、これまでどのような認識をもって自分の人生を生きてきたのか。
自分の子が“世界で唯一”であることを、読者からの投書を読むまで知らなかったというのだ。
その“単独性”は、“自分の子”のみではないし、“数字”で認識できるものでもない。
しかもそれを“気づかせてくれた”読者への感謝の言葉を、“返信に書き落とした”のである。
“青い鳥の住処(すみか)”とは、いったいなのことであろうか!
いったいこの書き手には、“神経”(知能ともいう)があるのだろうか。


ぼくは“くどい”のは好きじゃないが、昨日ブログの引用文を再びかかげる;

★くわえて、いまや不安すらも、さまざまな技術によって解消され撤廃されようとしている。「苦しみは、神経生理学的、臨床学的、心理学的、精神分析的、社会学的、宗教学的、行動学的といった観点から定義されうるものとみなされるようになる。苦痛の経験はこうして、別々の学科に基づいて分解され理解されるのである」。このような近年の傾向は、一方では社会の医学化、医療技術化(略)と、他方ではさまざまな「癒し」の儀礼化や産業化とも軌を一にしている。文字どおり悪や不幸とみなされる苦痛、そればかりか、人間なら誰しも避けることのできない老いや死すらも、この世から全面的に消えてなくなることが求められているのである。