「若くてまだ知名度も高くないけど、とてもいい演奏をする人」と知人がいうので、佐藤俊介というバイオリニストのリサイタルに行ってみた。
何がどういいのかうまくいえないけど、聴いていてとても心地よいと感じる演奏。あたたかな空間、穏やかな時間のなかで「音楽に包まれている」と実感した。
今回の会場は席数約600という小さなホール。残念ながら空席も目立ったけど、そのぶん空間の親密さが増して、作曲当時の演奏会ってこんな感じだったのかな、という雰囲気を垣間見た気がした。
リサイタルにあたり、奏者は「音楽を通じて作曲当時の時代や社会をみたい」という趣旨のことをインタビューで話していた。たしかにその片鱗を感じることができたし、その言葉がきっかけで時代背景にも想いを馳せることができて、単なる鑑賞を超える愉しみを教えられた。
今回のホールは1月に聴いたチョ・ソンジンのリサイタルと同じ、さいたま芸術劇場の音楽ホール。前回よりも音響のよい席で聴いたのか、曲の合間に軽く咳をしたらホール内にとてもよく響いて驚いた。(ハンカチで口を覆ったのに!) チョ・ソンジンはここの音響が気に入ってアンコールを3曲も弾いた、とリサイタル後にネットで読んだけど、納得。自分のくぐもった咳でさえ音楽的に響くんだもの。こんなホールが県内にあるなんて本当にありがたい。
いいホールは鑑賞欲を刺激する。というわけで今は室内楽のコンサートの予定を調べ始めたところ。今年もいい出会いがありますように。