joy - a day of my life -

日々の体験や思ったことを綴ります(by 涼風)。

『トップファンドマネジャーの負けない株の黄金則』

2006年01月01日 | Book
『トップファンドマネジャーの負けない株の黄金則』という本を読みました。著者は資産運用会社社長の藤野英人さん。以前にも『スリッパの法則』や『金のなる木は清い土で育つ―清豊の思想』という藤野さんの本を読んだことがあります。

株について詳しくない私がこの人の本を読むのは、難しいテクニカルな話がないこと。また、運用のテクニックではなく、株式投資の思想をこの人が語るからです。

著者は国内や外資系の証券会社でトップ・クラスの成績を収めたファンド・マネージャーだったそうです。面白いのは、典型的なゼロ・サムゲームに思える株式投資の場でトップだった著者は、株式投資の心がまえとしてとても道徳的なことを語ること。ビジネスの現場に疎い僕には、「本当にこういう純真な人が抜群の成績を収められるのだろうか?」と思ってしまいます。

著者が主張することの一つは、株式投資は、基本的に「失ってもいい」額までしか投資してはいけないということ。つまり、生活を賭けて株で儲けようとするのは、よくないということ。

この「失ってもいい」額(という表現を著者は用いていませんが)だけを投資に回すというのは、それだけ株式投資というのは心の落ち着きがなければうまくいかないからだそうです。

藤野さんによれば、プロのファンド・マネージャーでも株売買の成績は5分5分。6:4なら天才。7:3なら神の領域だそうです。つまり、基本的には株というのは上手く行かないものなんですね。それにもかかわらず株で「儲ける」ことが第一目的になってしまうと、心の落ち着きを失い、取引に失敗して大損してしまうそうです。

では、「儲ける」ことが株の目的ではないとすれば、何のために株売買があるのかというと、藤野さんによれば、それは、「株とともに生きる」ためだそうです。つまり、長期的に株を保有し、その会社の成長をゆっくり見守ることを愉しむために、株の売買はあるということです。

この本には『黄金則』という言葉が題名にありますが、藤野さんは株の値の動きの法則についてはほとんど述べません。そのことは、藤野さんが短期的な売買で「儲ける」ことは(藤野さんにとっての)株取引の目的にそぐわないからです。

そのような「チャート分析」の代わりに、藤野さんが一般投資家に薦めるのは、会社の分析です。というより、企業の活動に興味を持つことです。

藤野さんは言います、プロのトレーダーだからといって一般の人より企業の情報に詳しくない、と。

たとえば、男性のトレーダーはパンティストッキングの新製品について知らないし、どんなストッキングが売れているかも知りません。調べればそのときの売上高No.1は分かるでしょうが、これから売れそうな商品・消費者が求めている商品は、トレーダーではない女性にかないません。

このことはほんの一例です。本当なら毎日買い物する主婦(夫)は生活用品に関する膨大な知識をもっています。また、消費者が求めている商品がどういうものかも、知っています(自分を振り返ればいいだけなのですから)。働いている人だって、自分の会社・業界についてプロのトレーダーよりも知っています。

また最近はインターネットが発達しているので、会社の新製品や業績の関する資料は簡単に手に入ります。藤野さんは、インターネットの発達で、手に入る情報量にプロと素人との違いはなくなったといいます。

ただ、「株」というと私たちはなんだか難しそうなイメージをもち、そのために独自の勉強をしなくちゃと思い込んでしまうのでしょう。でも本当は、株とは会社が出しているのだし、その会社の動向を左右するのは、自分達の消費欲なのだから、自分達の消費欲を見つめて、これから流行りそうな商品を考え、そのニーズに合致する企業について調べるということをした方がホントはよいのでしょう。

藤野さんが一般の人に薦めているのは、本当はみんながもっている身の回りの企業活動に関する情報を掘り下げましょう、ということのようです。そこに宝の山がありますよ、と。


こういう発想は、じつは本田健さんのアドバイスと近いのかなぁと思わされます。

本田さんは講演会で、普通の人は就職を決めるときに、せいぜい「商社」「銀行」「メーカー」といったことぐらいしか思いつかない。自分の好奇心とは関係なしにブランドで就職先を決める、と訴えています。

彼によれば、普通の人は、そして社会全体が、自分の好きなことをしてお金を儲けるという発想をもっていないので、働くことは何か我慢すること、自分の好奇心とは関係のないこと、とらえてしまうのだそうです。

本田さんはそういう社会の風潮に対して、好きなことをしてもビジネスとして成立させることはできるんだと唱えています。彼のまわりには、お好み焼き屋さんをチェーンにして成功したりしている人もいるそうです。

本田さんの意見には賛否両論あると思いますが、多くの人が働く先を決める際に、自分の身近な好奇心を考慮せずに就職先を決めがちというのは、ありそうな話だと思います。

私たちのまわりには、実に多くの「商品」「サービス」があふれています。にもかかわらず、「就職先」とか「株売買」といった領域になると、そうした身近な消費活動の自分の知識を用いずに、株教室やリクルート産業の教えに従って好きでもない会社に入ったり株を買ったり、ということがあるのかもしれません。

この藤野さんの本は、もっと自分達の生活に密着した企業活動に目を向けて、その中で自分の好きな企業を調べ、またそこからこれからの社会の変化を担う企業とは何かを考える、そういう活動として株売買を考えようとしているのだと思います。

藤野さんの中には、地に足のついた生活世界とつながった企業活動というものを考える、その一環として株売買があるようです。

金融という生き馬の目を抜く世界の典型に思えるステージで成功している人がこういうことを述べているという事実は、とても印象的です。


涼風


参考:

「『金のなる木は清い土で育つ―清豊の思想』」 “joy”

将来性 『スリッパの法則 プロの投資家が教える「伸びる会社・ダメな会社」の見分け方』 “joy”

藤野さんのBlog“RHEOS REPORT”

元旦の朝

2006年01月01日 | 見たこと感じたこと
あけましておめでとうございます。

年末の寒波が嘘だったように、気持ちよく晴れたお正月になりました。


元旦の午前というのは、子供の頃であればお年玉をもらい、楽しくテレビを見ていました。あのころはレコード大賞も紅白歌合戦も、そして元旦の「初笑い・・・」といった番組もとても楽しく見ることができました。

さすがに今はそういうものを見ることはほとんどありません。かといって机に座って真面目に本を読んだりするのも、ちょっとしっくりこないです。

いつもは楽しいことでも、元旦の朝にまで同じ事をするのは、ちょっと気が引けるのです。例えて言えば、テレビゲームの好きな子が元旦の朝にテレビゲームをするようなものでしょうか。テレビゲームが好きでも、元旦の朝に早速テレビゲームするのは、さすがにその子も気が引けるんじゃないでしょうか(僕はテレビゲームはまったくしないけど)。

それでも、元旦の静かな朝はいいですね。12月31日の日中はなぜかとても重苦しいものに感じます。たとえ晴れていても、空気も空も、重いものに感じます。その一年にたまったことが大晦日にどっと世界に押し付けてくるような感じがするからでしょう。

それに対して、元旦はなぜかとても軽やかに晴れています。同時に、ピンと張り詰めた青空と空気が広がっている印象があります。まさに始まりで、“これから”という感じがするからでしょうか。

今年一年もよろしくお願いします。


涼風