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日々の体験や思ったことを綴ります(by 涼風)。

“The Goal” Eliyahu M. Goldratt

2006年01月29日 | Audiobook
“The Goal: A Process of Ongoing Improvement”というCDブックを聴きました。邦訳は『ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か』という題名で大ベストセラーになっているのでご存知の人も多いのだと思います。

じつは私は去年までこの本の存在を知りませんでした。英語のCDブックで語学を勉強しようとして探していて初めてこの本に行き着いたのです。

CDは分厚い書籍の全文を朗読しているので9枚にも上ります。物語仕立てで工場が利益を生み出すプロセスを解説しているのですが、プロの声優が何人も出てきて、ラジオドラマのような感じです。

ただ正直に言えば、私はこの9枚のCDを去年の秋から何度も聴いてきましたが、結局内容を聴き取ることができませんでした。そこでいい加減疲れてきたので、降参して翻訳に手を伸ばしたのです。

翻訳を読んでその内容の面白さに引き込まれたのですが、正直に告白すると、この本の内容を一回読んだだけでは理解できませんでした。工場の生産ラインについての常識がいかに利益獲得を阻んでいるかを物理学の教授が元教え子に教えるお話なのですが、うまく頭がついて行かないのです。


私が理解できた範囲を思い出すと、通常の工場生産の常識には

・労働者にはつねに労働を課して怠業を防ぐ

・各ラインで作業をつねにスピード・アップ(効率化)する

というものがあります。

しかし、この発想に欠落しているのは、工場の各生産ラインはすべて連関しているにもかかわらず、各ラインで作業スピードに差が不可避的に出てくることです。

このスピードの差を理解せずに、たんに各ラインでの作業のスピードを高めようとすると、スピードの遅い箇所(=「ボトルネック」)で生産が滞り、大量の未完成部品が出ることになります。

つまり、工場の生産スピードを決定するのは、最もスピードの遅い箇所(=「ボトルネック」)であり、それを考慮せずに他の箇所のスピードを上げようとすると、投入した資材のわりに少ない完成品しか得られないことになります。

ここから、工場を円滑に運営するには、この「ボトルネック」を発見し、その「ボトルネック」のスピードを上げる努力をしながら、同時に「ボトルネック」のスピードに合わせて他の箇所の資材投入と作業を進める必要があります。

こう書くと「当たり前じゃないか」と思いそうですが、「既存」の工場運営では、各ラインのスピードの差を考慮せずに、とにかくすべての箇所で作業のスピードを高めようとするので、結果的に「ボトルネック」でいつまで経っても処理されない大量の無駄な部品を作る羽目になると言うことです。


もちろんこの分厚い本は、そういうことだけではなく、企業会計の常識がいかに工場の円滑な運営を妨げているか、チームの運営にとって必要なリーダーシップとは何かなど、なかなか深い問題が扱われているのですが、そうした含蓄すべてを理解することはできませんでした。もっと理系的な思考ができると、この本の言いたいことがよく理解できるのではないかと思います。

ただ面白かったのは、企業にとって目的である「利益を生む」ということについて、会社の常識がそれを阻むことがあることが分かりやすく描かれていることです。

速い工場生産を達成するには、全体のバランスを考慮して、各部署の連関をスムーズにする必要があるのですが、それを無視してとにかく各ラインで「一生懸命」社員を働かせればそれでいいという風に人は思い込みがちであるということです。

もう一つ、このモデルとなった工場の再生が、工場長の離婚の危機と克服と同時に描かれていること。神田昌典さんの『成功者の告白』でも、配偶者・家庭との関係がビジネスと強い相互影響を有していることが強調されていましたが、この本でも、工場にとって本当によい運営とは何なのかを主人公が考える過程で、自分は何のために働くのか、自分にとって結婚とは何なのかを考えることになります。

私たちは、往々にして「究極の目的」というものについて考えず、その場その場のことに「一生懸命」になり、後になり「何かを見逃していた」と思うことがあります。

この本は、たんに企業経営のテクニカルな指摘だけではなく、バランスをとること、目的を見失わないことなど、大切なことを指摘しているように思います。


涼風

参考:「ザ・ゴール~The Goal - CD 9枚で良書がドラマとして蘇る。」『CD、テープを聴いて勉強しよう!! by ムギ』

   “The Goal”Memo