世界的なコーチングのスペシャリスト・アンソニー・ロビンズは
『人生を変えた贈り物』の中で、“thinking”と“belief”と区別しています。
彼によれば、“belief”とは
「確かさの感覚」です。
よく「信仰」という言葉が、何でも闇雲に信じるという意味で軽蔑的に使われることがあります。例えば「平和主義が彼の信仰だ」というように。
しかし、アンソニー・ロビンズにしたがえば、“信じる”とは、のべつまくなしに何の根拠もなく信用してしまうこととは違います。
また“信じる”とは、“合理的な”根拠を与えられて納得することとも違います。理性や計算によって正しいとされるからそれは確かであるとみなすことと違います。
理性や計算による証明によってもたらされる“確かさ”とは、頭の部分だけで納得できるものです。
それに対して“信じる”とは、胸や腹のうちに「これは確かだ」と感じられるものではないかと思います。
アンソニー・ロビンズは、私たちは誰もが自分の信じたとおりの人生を歩むと言います。この場合の信じた通りとは、自分で「確かさの感覚」を感じているものが実現するということです。
よく「物事をポジティブに考えればその通りに実現する」という言い方がなされます。そこから“positive thinking”が推奨されるのですが、しかしにもかかわらずポジティブに考えても上手く行かないのは、それがただ頭でなされるだけの“thinking”になっているからで、自分の胸のうちで「これは確かだ」と感じられていないからなのでしょう。
「5年以内に独立する」
「1年以内に理想の結婚相手を見つける」
「年収を1千万にする」
「学位を取る」
こういった言葉をどれだけ毎朝唱えようとも多くの人が達成できないのは、ただ頭で考えているだけで、それが「確かだ」と感じていないからです。
『こころのビタミン―あなたの夢を実現する』という本の中で、10年前の自分が考えていることを振り返れば、今の自分はそのとき考えたとおりの人生を歩んでいるものだ、という指摘がありますが、それはかなり当たっているのではないでしょうか。どれほど意識的にアファーメーションしようと、日常的にぼんやり思っていることを私たちの人生は実現しているものだからです。
自分が望むことを書いて紙に書くよりも、何を自分は「これは確かだ」と感じているのか、それを探ってみるほうがいいのでしょう。
べつにそれを探ったからといって、頭でのぞむ自分の人生の方向に流れを転換できるわけではないと思います。むしろ、自分が「これは確かだ」と感じていることを探ることは、世間の観念に影響されて正しいと思わされている人生の方向とは違うことを本当の自分は目指しているということが分かる場合もあるのではないかと思うのです。
本田健さんとクリストファー・ムーンさんは、“positive thinking”ではなく、“positive knowing”なんだ、と言います(
『夢を生きる、豊かさを生きる』)。実現するのは、考えていることではなく、すでに知っていることだ、ということです。この知っていることというのが、自分で確かだと感じていることです。
涼風