淳一の「キース・リチャーズになりたいっ!!」

俺好き、映画好き、音楽好き、ゲーム好き。止まったら死ぬ回遊魚・淳一が、酸欠の日々を語りつくす。

ゆきのまち映画館の黄昏 38

2010年11月18日 | Weblog
 ―別の新しい世界に旅立つ前に、あなた方はもう一度だけ前世に戻り、一番愛しかった人間に逢うことが出来ますー
 その声は何処からともなく聞こえて来た。そしてその声の主は、優しくこうも囁いた。
 ―でもそれはたった二晩だけの夢。もしもそれ以上、その世界で生き続ける人を混乱させると、世界の仕組みが壊れてしまいますー
 あの人は夢の中を漂うように、あらゆる記憶を二晩だけ消され、この街の姿を借りた幻想の世界で、わたしたちとの最後の別れをする。だからこそわたしたちは、今こうしてここに戻って来た。実体を無くしたままで。
 でも一晩過ごしただけで、わたしの胸はもう張り裂けてしまいそうだ。それに、よく現実を掴めないあの子も、父親の姿を見るだけで泣き叫ぶ。わたしには、あと一晩、あの人と向き合って過ごすなど到底耐えられない。
 別れがもっと辛くなる。





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