淳一の「キース・リチャーズになりたいっ!!」

俺好き、映画好き、音楽好き、ゲーム好き。止まったら死ぬ回遊魚・淳一が、酸欠の日々を語りつくす。

ゆきのまち映画館の黄昏 33 

2010年11月13日 | Weblog
 冬はすぐにやって来る。
 村を雪が覆った。わたしたちは春から夏、そして秋の間に溜め込んで置いた獣の肉や野菜や果物や山菜などを、隣の大きな倉の中に保存して、それを毎日大切に食べた。
 でもそれだけではとても心細い。わたしたちはよく晴れた冬の朝、三人で近くの湖まで出掛け、分厚い氷が張った湖の上で一日中ワカサギを釣った。
 釣りに夢中になるのはいつもあの人だけで、わたしと息子は、広い湖に吹き荒れる波風のために、水面に浮いた無数の氷の結晶がくっつきあって成長する、ハスの葉の形をしたハス葉氷を探したり、湖の氷が張ったその上に雪が積もって出来る、様々な形の氷紋を探して歩き回った。まるで、冬の星座を湖全体に撒き散らしたような、何千、何万という数の美しい氷紋たち。
 今こうして目を瞑って考えると、そのどれもこれもが、素晴らしく、そして美しい思い出だ。





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