歌、その短い時間に、濃厚なドラマが展開する、それがシャンソン。

３年前・・・歌い始めた頃、最初に感じたのは、
『歌う時間』の中で起きる感情の変化を表現することの難しさ。

演者が、観客とある一定の時間を共有する。

演劇に比べ、『歌』はその時間が圧倒的に、短い。

その歌の前提を説明する『ト書き』もない。

起承転結が、短時間に凝縮されている。

しかも、リズムや音などの制約を抱える。
もちろん、それが助けになる場合もあるのだが、
そこに甘えてしまうことにもなりかねない。

つまり、音の持つ圧倒的なイメージ。
わかりやすい例が、『フレッツ光』かなにかのＣＭ。

棒高跳びやバレーボールのネット、バスケットのゴール、スキーのジャンプ台。
いずれも視覚から、高いと思い、
音楽は、聴覚により『高い』ということをさらに強くイメージさせる。
言葉が、それをさらに強固なイメージにして・・・
最後に「高く・・・ない」で終わる。

何度も見ているのに、私の頭は、勝手に『高い』イメージを持つ。
その要因の大きな部分を『効果音』が占めている。

歌というのは、人間に圧倒的なイメージを与える『音』と『リズム』がある。
その上、『言葉（歌詞）』が加わるのだから、歌う人間は何もしなくても
音やリズムをキチンと歌えばある一定のものが立ち上がってくるということだ。

ここが、大きな落とし穴だと私は、思っている。

その穴に落ちないために、私は『歌詞』にこだわる。
『言葉を発する理由』を自分の中に探す。

私は、私にしかできない方法で、歌へアプローチしていく。
たぶん十人いたら、十人のアプローチの仕方があるのだろう。

音やリズム、歌詞に縛られ、その圧倒的なイメージの中、
感情を一瞬でコントロールする・・・とてつもなく大変なことだ。

短い時間の中にドラマが凝縮されている、それがシャンソン。

これからも表現することを求めながら、呼吸をしていこう。

私を表現することと出会わせてくれた人。演出家、関きよしさん。
１月１３日に逝去され、関きよしさんを偲ぶ会が１３日にある。
私は、仕事で出席することができない。
返信を出すのが遅れてしまった。
いろんなことを思い出していたから。

表現することを自分の経済の中心にはできずにいるけれど、
私は、表現することを試行錯誤し続けています・・・
その姿を見てもらえないことが、少し残念だ。

私が唄っている歌は、３分から、長いもので８分。
その時間に何ができるのか・・・これからも右往左往しながら、考えていきます。
関さん・・・どこかで一杯ひっかけながら、見守っていてくださいね。