陽だまりの中のなか

前田勉・秋田や詩のことなど思いつくまま、感じたまま・・・。

こやま きお詩集『父の八月』

2017-12-02 | 詩関係・その他

       

宇都宮市在住、こやま きお氏の第三詩集『父の八月』が刊行された。(因みに、第一詩集『おとこの添景』は第63回H氏賞の候補となった)
 作品35編が3章に分け収められている。叙景であり抒情であり、掌編のようでもあり、そして社会をきっちり睨んだ鋭い眼もある。感情を抑えた表現がこの詩人の性格を表しているのかも知れない。読んでいて気持ちが落ち着き、なるほどと頷く。
 第3章では東日本大震災・原発事故に関連した作品が収められている。その中の「千羽鶴考」は、やりきれない気持ちの表出が見事だ。

   白藍に漣漣と
   海の底に埋もれた何万何千の魂は
   愚直に
   放射能を飲恨したまま
   現世を守っているのだ

     忌まわしい神まがいを閉じこめ
   人々の苦しみや悲しみを
   千の鶴に折り込ませてはいけない
   愛などというもっともらしい大人の理屈を
   鶴に折り込ませてはいけない

   願いを折る 嘘をつくな
   希いを折る 嘘をつくな
   祈りを折る 嘘をつくな
   夢一折
   希望一折 嘘ばかりつくな
   絆をつなぐ千羽鶴など
   大嘘だ

 

 発行:2017年11月25日 / 発行所:株式会社歩行社

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする