60歳からの視覚能力

文字を読んで眼が疲れない、記憶力、平衡感覚の維持のために

視野の構造化

2006-02-23 23:54:07 | 眼と脳の働き
 文字を読むとき、はっきり見ることができるのは7文字ぐらいで周りはぼやけて見えるといいます。
 実際に見ているときは、中心部分がはっきり見えて、周りがぼやけて見えているという自覚はありません。
 しかし、目を動かさないで見ると、目を当てたところから左右4文字以上はなれたところの文字ははっきり見えないでしょう。
 見えていてもどんな形なのか把握できず、読むことが困難になっています。
 目の網膜の中心部に映る部分は解像度が高く、周辺部は解像度が低いためです。
 それでも、目の注意はハッキリ見えている中心部分の像に向けられているので、周辺部がハッキリ見えないことに気がつかないでいるのです。

 もし、周辺部分にも注意が向けられれば、ハッキリ見えなくてもある程度の範囲までは文字を認識することはできます。
 図の一番上の行は、全体にぼやけているだけでなく、無意味な文章でまとまりがない(構造化されていない)ので、読むのが非常に困難です。
 ところが2番目の行の場合は、文章に意味的なまとまりがあるので、周辺部分も注意を向ければ文字が何であるか分かります。
 解像度が低くても文章のつながりから、文字の見当がつくので、自然に読めたりします。
 3番目の行は同じように周辺部分をぼやかしていますが、無意味文なので読み取りにくくなっています。
 
 網膜の周辺部分は視神経が少ないので、いくら訓練をしても解像度を上げることはできませんが、注意を向けることができれば、低い解像度でも文字を把握することはできます。
 よく知っている文字であれば詳しく見なくても、ある程度ぼやけた状態で見ても分かりますし、文章の前後の関係からも自然に分かったりします。
 子供のうちは文字をよく知らないので、一文字一文字を確認しなければならないため、狭い範囲に注意を集中させて読む必要があります。
 成人の場合は読書経験があるので、一文字一文字に注意を集中する必要はなく、ある程度広い範囲に注意を向け、一度に多くの文字を把握するほうが文章が理解しやすくなります。
 それでも、子供のときから一文字一文字読む習慣がついていたりすると、つい狭い範囲に注意を集中させて目を疲れさせたりします。
 視野を広げるというのは注意の幅を広げることで、視野の範囲を構造的に見ることです。
 単に知覚できる範囲を広げるということではなく、認識できる範囲を広げることです。