そのころ、世に数まへられぬ古教授ありけり。

この翁 行方定めず ふらふらと 右へ左へ 往きつ戻りつ

9月19日(木)つづき

2019年09月19日 | 公開


「なりもよく あさげのたまご やきあげて ははゐぬいへの ひとひはじまる」
「ときはなるまつえびと ははめすべしと たくはふるしじみ かひなくなりぬか」

「かくのみに ありけむものを かくのみに ありけるものを かくのみにあり」

ひとり病院へ赴く



「ことわりや 入院病棟 一階に しつらへてあり 霊安室は」
「そのをりは はこびいだすに 便ありて 霊安室を この場所におく」

またの日
「たまきはる いのちつくつく 法師ぜみ よさむとなりて けさはきこえず」
「あれこれと ゆゆしきことの うかびくる われがこころの あさましや はた」
「香奠や ことぶきいはひ 電子マネー カードにはらふ ひもまぢかきか」

「月内の介護計画キャンセルの意向 ケアマネージャーにつたへつ」
「二時半に こよとの指示を 主治医より 看護師介し いひおこせくる」
「ただひとり ちもてつながる いもうとに ともにいかむと いざなひてみる」
「楽観も 悲観もいまは なしがたし なるにまかする ほかてだてなく」

「『死にたまふ母』のうたうた よみかへし むべむべむべと おもひやるけふ」
「たましひの わがみにそはぬ なげきとて 定家はははの 死をうたひけり」

右往左翁