東京教組(東京都公立学校教職員組合)

教職員のセーフティーネット“東京教組”

23分間の奇跡

2013年07月11日 | インポート

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 23分間の奇跡(ジェームス・クラベル、集英社文庫)は、教育の恐ろしさ、洗脳の見事さを描いた有名な小編だ。今は亡き元都知事、青島幸男さんが翻訳している。
 
 相手(子ども)を理解し、その発言を尊重することで、どんな理不尽な事態(被占領)をも肯定的に受け入れてしまう人間の心情を利用し、それをプラグマティックに実践できることが描かれている。でもどうだろうか、はじめは反発するジョニーの心の変節はスリリングで見事だが、現実はこうはいかないだろう。主人公の少年ジョニーは父をも諭す気持ちになっているが、父が拉致されているという事実の重さは変わらない。ディスコミュニケーションとして考えれば、和解や寛容ではなく、諦念(恨)によって事実を受け入れるしかない。
 著者クラベルのアメリカ合衆国は、敗戦後の日本国民を、この本のように上手に教育(洗脳)し、占領を続けたのかもしれないと考えてしまう昨今だが、諦めてはいけないコミュニケーションとしての民主主義は、日米の憲法にはっきりと記されているのだから。
ノウゼンカズラ