蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

レヴィストロースを読む 神話と音楽 ボロロ族の歌 3

2017年10月18日 | 小説
前回投降、2で取り上げた神話2(M2)が67頁に要約されています。
<Un abus d’alliance (meutre de l’epouse incestueuse, privant un enfant de sa mere) complique d’un sacrilege-qui une autre forme de demesure=中略=provoque la disjonction des poles ciel (enfant) et terre (prere)=中略=Baitogogo retablit le contact entre morts et vivants , en reveklant les ornements et le parures corporelles, qui servent l’embleme a la societe des hommes , et de chair spirituelle a la communaute des ames>(67頁)
訳(ヒーローバイトゴゴの行為について):同盟の破壊(近親姦を犯した配偶者を殺害して、その結果、息子から母を取り上げた)、居屋の地下に妻を埋めその痕跡を隠したやり方はさらなる冒涜、すなわち死者の再生(村の中央に埋めて掘り起こして川に流すが決まり)を否定した。母が殺されたとも知らずさまよう子が鳥に果て、森に化けた父とは天地に分離した。
それ以降を要訳すると;
一方森になったバイトゴゴは水を創造して空と地の交流を創造し、かつ生者と死者の交流も道筋を立てた=森に化けたとは精霊、村に戻ったのは精霊です(=投稿子注)。かつての共同酋長のイツボレに乗りうつって、別の部(セラ)に訪問します。贈り物をふんだんに用意し、(イツレボに憑依した)己も服飾を華麗に仕立てます。この身の飾り作法が死者と生者との交流儀礼での取り決めとなります。

写真:ボロロ族の死者をいたわる儀礼列。中央に金剛インコの尾羽で飾った男。レビストロース自身の撮影、同氏の著作から

この要約はレヴィストロースが「神話構造」で伝える第二分節(articulation)その物です。(第一がelements対proprietes、第二はsequence対code。Sequenceは状景のシーン)森の奥で兄と相姦する妻、隠れて目撃した子。それを聞いて義理の兄を殺害するバイトゴゴ…と劇場仕立ての圧巻の筋ですが、それを追わずに(ideologie側の)codeを追っています。彼なり、得意の構造主義の進め方を楽しむと;
取り上げたcodeが「allience同盟」と「disjonction離反」です。
同盟にはバイトゴゴの婚姻と親子関係があって冒頭、姦淫で破断される。バイトゴゴは地と精霊、人と死者の同盟を築いた。数えると四例の同盟。一方、破断は投稿子が数えるにやはり四例(夫婦、親子、型破りの埋葬、ヒーローと村人の別離)。破断が先に出てくる。同盟とは、かつての楽園状況で、それがM1M2では近親姦で破断されて、ヒーローが再び同盟を創造する。新たな同盟には決まりがあって、服飾、飾り贈り物が規定されている。セラ部の酋長は「贈り物が少なければ殺す」と不吉な予言、贈り物の多寡も同盟の条件である。

神話3「ボロロ族、洪水の後」に入ります。
<Apres un deluge, la terre se repeupla a noiuveau, Meri, le soleil, eut peur et chercha comment il pourait reduire le nombre=中略=il les tua a coup de fleches, Ce qui lui valut le surnom de Mamuiauguexeba,cuase la mort>(59頁)
訳:洪水の後、人は世に満ちた。Meri(太陽)は恐れ、どうしたら減らせるか考えた。
太陽は全ての族民に大河を、壊れやすい小舟で渡るようし向けた。案の定、小舟の浸水に族民は難儀した。びっこの(=contre-fait=原文のママ)アカルイオボカドリ(ヒーロー)は遅れて着したので免れた。激流に流された者達は縮れ毛、静水に溺れた者達は直毛。アカルイオボカドリは彼らを引き揚げ、太鼓を叩いて蘇生させた。まずBuremoddodogue族の者を蘇生させて、そのあと7のgueの接尾語を持つ者達を選んだ。7の者達にはお礼の贈り物に手厚さを求め、約束出来ない者達を殺した。この殺戮行為によりアカルイオボカドリは殺戮者(マムイオゲセバ)の名が冠せられることになった。

洪水神話にはsequenceに分離した要約は表さず、レヴィストロースは「連続」と「不連続」の原理を持ち出して、神話の核心(shemes、スキーム、62頁)に迫ります。それはボロロ族の社会の起源であると。川渡りの試練=アカルイオボカドリの奸計で民族的に間引きされ、8の支族に分離されたのがボロロの始まりとM3が語る。分離とは不連続、そして分散=discretの語も使われる。投稿子はこの語感がなじめず、連続・不連続と殺戮の関連が、感覚としてつかめなかった。一昨日(16日)、あるネットコメントでこれがすっかり氷解した。
10月16日は月曜、経済評論でネットで人気の上念司氏がこんなコメントを披露していた。前日15日に帰米し、同地の話題を紹介した。カリフォルニア山火事がマスコミで大きく取り上げられていたと。「火事は消えませんね、燃えるところ全てが燃えてから消沈します。先住民族(イロクオイ族か)はこうならないように小さな山火事を毎年起こして、惨事を未然に防いでいたのですから」と述べた。(Youtube、上念氏を参照あれ)
この言葉が天啓でした。尊師がM2で開陳したcodeがはconjonctio/disjonction。M3には殺戮と民族の分散。そして近親姦もトカゲの生喰い、魚のおお喰らい(M1,M2)、贈り物をしなければ殺される(M3)、これら一連の流れが、加州の山火事、その上念氏のコメントで、全て理解に至った。

(ボロロ族の歌 3の了 10月18日 首題過去投稿(1、2)は10月13、16日)

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