蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

神話学第4巻裸の男Homme Nuの紹介 1

2024年06月06日 | 小説
(2024年6月6日) レヴィストロースの神話学Mythologiquesは本巻を持って完結します。この集大成を飾る基準神話はイシスの冒険Le geste de Isis(北米西側山岳地に住むKlamaths、Modoc族などの伝承)となります。4巻全体の基準に位置するM1(~7)火と水の起源、南米ボロロ族伝承、との似通いが(本書)では強く指摘されています。内容では近親姦、父子の対立、英雄の死と再生など筋道の進行(Codage)で同一。かつスキームSchème (伝えかけ、メッセージ)の共有が挙げられます。


本書紹介のスライド、出版年、出版社など。表表紙はデルヴォーが本書刊行に合わせて描いたオリジナル。

裸の男の鳥の巣あらし(部分)

本投稿では1 イシス神話の紹介 2 本巻のほか神話との比較、何故に本巻の基準たらしめるかの論証 3️ M1神話との整合性―を述べていくつもりです。まずはイシスの冒険 :   
M538 Klamath族伝承 le geste de Aishishイシスの冒険(本書42頁)
あらすじ:姉と弟、きっかけで契りを結ぶが逃げる弟。姉は怒り村に火を放つ。焼け死んだ母の胎から引き出された兄妹は、母の死をもたらした火付け犯人は叔母、今は湖底に棲む水鳥アビと教わり、網に捕り殺す。妹は兄に「私は貴方の何」と詰問し、配偶の返答を得て夫婦に結ばれ子イシスを設ける。イシスは雄々しく成長した。義父の策略は樹上の鳥の巣から雛を盗ませる、着衣のままでは登れない、裸になれと命じた。この場面が題名「裸の男L’Homme Nu」の謂れ。義父との諍いは埋まらないまま、それぞれが世界創造に励んだ。
以下、原文も交えたいくつかの情景を楽しんでください。


Modoc族、撮影は20世紀初頭と思われる(ネット採取)

Il y avait une fois une Indienne, mère de plusieurs enfants, dont une fille, pourvue d'une longue chevelure rouge qui épousa quelqu’un du côté. Mais elle revenait souvent dans sa famille, car elle était amoureuse de son plus jeune frère et elle exigeait que ce fut lui qui la raccompagnât. むかしむかし一人のインディアン女がいた。幾人かの子もち。そのうち娘の一人は赤い髪を長く垂らす娘だった。彼女は近隣に嫁いだ、夫を持つ身分にもかかわらず、何かにつけては実家に戻る。狙いは弟であった。末弟の美少年ぶりは近隣に響き渡り、母は滅多なことで外には出さず、家の中でも地下の穴蔵に住まわせていた。
姉が実家にたち寄りすぐに嫁ぎ先に戻る。弟が旅の供となることになった。太陽は中空にかかる、今出立して夕べが暮れる前に戻るが旅程、なればと母は同行を許した。道すがら何故か日がとても早く暮れてしまった、この季節ではもっと遅いはずであるのに(別バージョンでは太陽に早く沈めと姉が脅した)。
一度だけ、野の窪みに二人は宿る。寝入った弟の脇に姉が滑り込む。
Une fois ; ils durent camper en chemin pour la nuit et la femme vint se glisser près de son frère endormi. Il s'éveilla et fut choqué de la trouver contre lui. « Quelle folle ! Vouloir devenir l'épouse de son propre frère ! ». Il se leva sans bruit mit une grosse branche à sa place, et rentra au village.
女は身をすべらし弟は目覚めた。姉を己の上に見て、ただならぬ衝撃を受けた。なんと愚かな行い、血を分けた汝の弟の妻になろうとはとなじる。姉は寝入り、太い幹を身代わりに置き弟は逃げ出した。
村に戻るやつぶさに出来事を語る息子、その一部始終を聞く母は大惨事を予兆しおののく。姉の目覚めは昼下がりとなった(早く隠れろと命じた分、翌日にも太陽周期は速まっていた。太陽周期律を乱したしっぺ返しの罰)。
Le soleil était déjà haut quand la femme se réveilla. Furieuse de se voir abandonnée, elle alluma un immense incendie qui s'étendit et consomma ses frères et leurs épouses, mais non sa mère qu'elle avait voulu épargner. Enfouillant parmi les cendres, la vieille trouva le cadavre de Sturnelle, une de ses brus qui, enceinte, avait pris soin d'abriter son ventre sous un mortier.
女が起きた時には既に太陽は高く登っていた。一人だけ、捨てられたと気付いて怒り狂った。村の建物に火をつけ、それは村中全体が焼かれた。彼女の兄弟、その配偶者も焼け死んだ。母親はなんとか生き残った。母親は灰をかき分け「まきばどり」の遺骸を見つけた。嫁の一人の、妊娠していてその腹を臼の下において腹だけは助かった。
La belle-mère, put extraire deux enfants, un garçon et une fille. Pressentant que celui-ci serait le porterait de sa méchante tante, elle colla les enfants avec de la résine et fit une créature unique à deux têtes et de sexe masculin. Elle recommanda au garçon de ne jamais se pencher pour voir son ombre et de ne jamais tirer une flèche vers le ciel.
母親は遺骸から2人の子を引き出した。男子と女子。男子の顔を見ると、邪な叔母のお気に入りの面影に気付いたので、この子に女の子を張り付けて一人にして二つの頭の醜い男子を作った。そして子には絶対に自分の影を見てはならない、空に向けて矢を放ってはいけないと申しつけた。
神話学第4巻裸の男Homme Nuの紹介 1 了
追:ブログとYoutubeを並行して投稿する計画です。内容に変わりはありません。Youtubeでは部族民(渡来部)の音声解説となります。

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