蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

イザベラは空を飛んだ 第7回

2010年11月15日 | 小説
甲州街道駅前コンビニの駐車場(5章)の場面が続きます。

携帯メールからリサに一報したケイジに思わぬ内容で返事がありました。友達と夜も添い寝で過ごしているから一人じゃないと。驚くケイジにサチコが続きを読み聞かせる。
>「だってリサには私の替え玉がいるんだろう。そいつの名前が出ているメールなんて、読む気がしないな」
「私の言い方が悪かった、謝る。
替え玉の名はコドクだって。コドク一郎、コドクタケシとかで無くって、一人で悲しんでいるコドク状態なのよ。リサさんにはコドクが親友、リサさんは一人でコドクと二人。友のコドクと添い寝するまでの仲なのよ。
三人目はいないから安心して読んで」
「なんだ、俺が抜けてもコドクが友だから、もう独り身でないのか。どっかの唄の文句にもあったぞ。そんならその携帯をよこせ」と電話器をもぎ取った<

唄の文句とはムスタキ作詞作曲、レジアニの歌う「マソリチュード=私のコドク」(シャンソン)かも知れない。

たこ焼きバンに戻った良子、ケイジが気になってたこ焼きに専念出来ない。いいこと思いついたと、メールを読むケイジのその携帯にメールを仕掛ける。
>「私自慢のたこ焼きを試してくださいな。私のたこ焼きは皮がクリスピー、中身はジューシーでトローリとっても美味しいって評判ですよ。トローリと美味しいのは、たこ焼きだけでないわ。私のことかも知れません」<

ケイジに現抜かしてメールに没頭の良子。焼き作業に注意を向けない。タコ焼きの反乱が起こる。

>生地の監視はおざなりで、適当にこね回していただけだった。怒りとは放置されたタコ生地の復讐であり、玉になりきれない半加熱の生地の生焼け憤りであった。
一斉に反乱したのだ。丸まることを逃した生地が、流動化して鉄板全面で怒りの湯気を吹き立てていた。良子には、肉体に迫り来るケイジへの恐怖があったが、とりあえずの危機は焼き鉄板上の洪水である。タコ生地の反乱と流動化の惨禍、それらを目の下に目撃し、すっかり動転しちまった悲鳴だった。
「きゃー、あらまたいへん、タコ玉を失敗してしまった。でも失敗は成功の礎(いしずえ)と言うわ<

タコ生地の反乱をとっさの機転で鎮圧した良子、しかし貞操の危険が迫る。彼女の身体に迫るのはケイジではなく、店長だった。なぜ店長は身体を要求するのか。危機迫る良子がケイジに発した2通目のメールは、助けを呼ぶのでなく「混濁したコンビニ駐車場から逃げて。あなたまで悪に染まる必要ない」だった。

良子のクリーミーな身体、店長の魔手から逃れられるか。全文(PDF)にアクセスしてください(左ブックマークの部族民通信をクリックしてください)PDFは14枚、原稿用紙換算で35枚です。

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イザベラは空を飛んだ 第6回

2010年11月11日 | 小説
イザベラのHP掲載、好調に進んでいます。本日6回めの掲載を案内します。
PDFで23頁、原稿用紙63枚分。永いのでブログには掲載できません、部族民通信
のHPに飛んでください。左ブックマークをクリックです。

6回目のあらずじは、

伊藤が読み上げる筈のリストラ指名者、しかし手が震えて読めない。
常務藤森が用紙を取り上げ、読み始める。
本文から
>リストラ三人の指名が終わった。さらなる特別の一人を予告していたのだが、その四人目の名の前を前にして、藤森はしきりに首をかしげた。口元が不器用にまごつき、その名前が出てこない。コップの水を飲み一旦おいて、気を取り直したか藤森は一気に「伊藤ノブヒコ」と読み上げた。
「役員さん、今なんて言いました。三人目までは良く聞こえた、全く持って立派な選択ですな。育ててやろうとした私だって、奴ら三人にはうんざりですわ。大事なときに必ず失敗する間抜けですよ。 
最後の一人の名が聞き取れなかったのですが。誰ですかな、四人目の馬鹿とは、楽しみなのではっきり言ってくださいな、きっとケが付くはずです」<

なんと伊藤がリストラされたのだ。
しかし彼は起死回生の手段でひっくり返し、ケイジにリストラをなすり付けた。
さて場面は変わって5章 甲州街道駅のコンビニの駐車場
販売車でたこ焼きを売るのが良子である。その目の前で浮浪者がサチコのカンフー蹴りを喰らう。あわてて飛び出す良子、

>サチコが「私のトリプル蹴りをまともに喰らったおじさんは、その場でバタンキュウよ。だけどこの人、息吹き返して今幸せそうに眼を閉じている。フツーの人ではないわ」
 その時ケイジが両の掌、二本の指をヴィマークに開けて答えた。眼を閉じながらも会話を聞き逃さない。店長は聞き耳を立てる男に、そしてその指先マークに、さらに苛立った。良子に向かって
「おい良子よ、気持ちだけはしっかり持つんだ。聖とか修験者なんかがどこから湧いてきたのだ。丘の上には真言の寺も権現の社だってない。駐車場前の階段の先にあるのは、とっくに廃れた小稲荷だ。そんな場所から聖(ひじり)やら験者が出てくる理屈がない。きっと社に昼寝の宿借り、ただの喰いはぐれだ…」<
と良子を叱責する。

良子も店長も職場復帰した。しかし駐車場には3人の兵士の休戦監視体制ができあがった。
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イザベラは空を飛んだ 第5回(後半)

2010年11月08日 | 小説
先週11月5日に5回前半のHP掲載をお知らせしました。後半の案内です。
PDF9枚、原稿用紙換算23枚と短いので1回で読み切り可能です。

後半(3章事業所、緊急の会議)は舞台が現代に戻ります。ケイジの勤務する会社の府中事業所。
休み明けの火曜日の朝、
部長(伊藤)が額にバッテンの絆創膏を張って出社してきました。頭が痛い、それでも俺は働くんだと、これみよかしの喋りまくりですが、アルバイト女性が「アルバニアの貫通頭」と笑いました。
本文から
>男が頭に鉄砲弾を受けた。しかし幸いなことに、その弾が後頭部から抜けたんです。本当に幸いな事は抜けた銃弾ではなく、その人の脳髄だった。彼は死ななかった。
一時的に気絶しただけで、しばらくして起きあがった。額に、全く部長さんと同じ位置、同じ形状の十字絆創膏を貼って、十字交差する中央が膨らむのも同じ。
彼は幸福の人生での不幸と悲しみ、そして不幸な事故での幸福だと喜んだ<

頭が軟弱ほど生き残れる、お堅い頭の持ち主は死ぬなどの会話のあと玄関が騒がしい。常務(藤森)が抜き打ち訪問して、緊急会議を開く。リストラの通告です。

>藤森の目付きに気付きながらも、伊藤は読み上げに入らない。手先の震えで、書面までがブルブル震え、内容を読む事はできない。そしてブルブルと独り言を吐いた。周囲を取り巻く部員達にも聞こえる声の大きさであった。
「いつもこんな重要なタイミングでへまをするんだ。何でこんなに手が震えるんだ。名前が読めない、これでは俺が対象になってしまう<

今世紀初めにいろいろと喧伝された経営者ジャックウエルチ氏の経営哲学批判も入れています。
ウエルチ哲学はリーマンショックで影も形も無くなりましたが、その頃の風俗そしてリストラの悪見本として取り入れました。

全文は部族民通信のHPです、よろしくVisitしてください(左のブックマークから)
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イザベラは空を飛んだ 第5回(前半)

2010年11月05日 | 小説
ネット連載中のイザベラは空を飛んだ、好評判(と勝手に決めつけています)に励まされ、第5回の掲載です。全文は部族民通信のHPにてPDFで公開中、ぜひそちらにも訪問してください(左のブックマークをクリック)
これまでは1回の掲載でPDF20枚近くありましたが「ネェ、トライブスマン、チョット長すぎんじゃん」の声を受けて短くしました。で第5回の前半でPDF11枚、原稿用紙換算で31枚。
あらすじは

リサの夢(前回から続く)
リサは夢の中では馬借宿の下働きのイサラ。ある夜半、山伏の一行が旅路を迷い宿に泊まる。弥勒菩薩の化身と称する稚児聖の手さすり療治で馬借座長の息子が完治した。イサラは夜伽を命じられる。馬子にもならぬ「下女にも衣装」で見違えるほどの上玉になった。

>イサラは洗い下ろしの上布の絣、透けて肌が見え隠れる単衣を着せられて、恥ずかしさで頬まで真っ赤に染まった。柵に籠められていた牝馬が、種付け場に牽かれるようだ。
「旦那様、ご覧なされ、娘十五は磨きあげ。奥に待つ聖とやらもお気に入りですわい」
カネはイサラの顎をあげ顔を見せた。黒かった顔が白くなっていたのは、白粉の効果だけではない。色黒は地でなく、埃と煤の重なりだった為。
えいと襟をめくり下げ、首筋と胸を乳首まで露出させた。どの部位も白く、ほんのり桃色が入る。耳たぶを横に引き耳裏にも、汚れ一染みも無いのを与次郎に披露させた。そして目玉を剥いて白目を見せた。頬を押し赤い口腔を開口させ白い歯揃いを見せた。値踏みとは器量定めに身体あらため。娘も馬もやり方同じ<
馬借宿ならではの身体改めで、夜伽に放り出されたリサの前世。

さてイサラは稚児聖(ケイジの前世と目される)と夢の中、たとえ夜伽でも結ばれるのか。
HPで読んでください。

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イザベラは空を飛んだ 第4回の案内

2010年11月02日 | 小説
長編物語「イザベラは空を飛んだ」第四回の部族民通信HP掲載の案内です。

(これまでは)リサとケイジはバイパスのコーヒー店ステラリで待ち合わせた。時は春、金曜の夕刻、五度目のデートなら行き着く先は互いに了解している。
ところがアニエスと自称する老女の闖入、覆面パトカーの追跡、リサへのナンパ攻撃など思わぬ妨害をようやく乗り越えて、千年の聖都市バビロンならぬリサの部屋にたどり着いた。

これからが4回目のあらすじです。
リサの部屋で一息つくケイジ(3章 サンセールは赤に限る、リサの部屋で)リサは奥の部屋に入って身だしなみを整える。決戦の直前、勝負の分かれ目、誰も見ていない部屋でのリサは何をしているのか、
本文から>そして誰にも見せない秘密の行為に入った。この夕べの生暖かさに触発されたのだろうか。
鏡に向かっていた彼女が、突然スカートをたくし上げたのだ。思いっきり、一気にたくし上げられたスカートは、もはや足も腿をも隠していない。
剥き出した太腿が鏡に写った。生白い腿に何かしらの染み、あるいは汚れがあるかを丁寧に確認し、そのむっちりとした肉付きに安心したリサは、内腿の肉身に指先を押し込んだ。その柔らかさの具合を確かめた。内腿の肌は、およそ他のどの部位よりも白い。生身が透けるほど白い肌にくるまれている、その柔らかさを自分の指先で確かめたかった。
それは指の先を窪みで受けた、まるで白い綿菓子ほど柔らかかった<
 
では柔らかな太股の運命とは、これは言わずもがなで、愛し合う二人ならば、行き着く先は何時も同じ。

本文から>ケイジに覆い被さるようにリサがケイジを抱く。見上げる彼の目には余裕が無かった。自身の役は処刑執行と知っているためなのか。抱きつきながら「堪忍して」と哀願するリサをどう処遇するのか決心が付かない頼りなさがあった。この舞台で逡巡は正しいのだろうか。全く正しくない。
行け、進め、ケイジ。ここが愛の分水嶺だ、お前が行動しこの恋を達成するのだ。土壇場でうごめくのがリサと誤解するな。土壇場に引き出されたのはお前なのだ。だから行け、進め、狂えケイジ。<
 
やはり狂いがないと愛は成就しない。はたして彼らは分水嶺を越えたのか。

 舞台は変わりリサがその夜に見た夢(4 馬借座、板倉本田の人足宿)に移ります。
 
(本文から)>野麻のボロ単衣、筒袖とすり切れアンギンの前垂れ、裾は膝で止まり、痩せたくるぶしの裸足。油気ないボサ髪を後ろに結び、頬も鼻筋も日焼けに黒い。
過去のおのれの姿はみすぼらしい痩せた少女、馬停めの裏庭で働く馬借宿の下働きであろう。リサにはそのみすぼらしさには少しも違和感が無かった。
「ああ、あの時のことだったのよ」とおぼろ覚えにこの様を思い出す事が出来た。きっとリサの前世の記憶なのだ。とすると目の前の夢の背景に察しがつく。
―この風景を思い出したわ。
舞台は中世、海につながる宿場街。私は貧しい少女で、馬借宿に年限奉公に出されていたのだ<

全文PDFで16枚(原稿用紙換算41頁)。全文は左のブックマークから部族民通信に移動してください。
(今後も火曜、金曜(ないし土曜)に掲載を継続する予定)
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