蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

Murngin族の親族体系をホームサイトに

2021年07月21日 | 小説
(2021年7月21日)本年初から連続投稿していた「親族の基本構造」のMurngin族の体系(第一部限定交換を5月21日から8回投稿)と第二部一般化交換(6月22日から8回投稿)を部族民通信ホームサイト(WWW.tribesman.net)に上肢しました。テニオハの修正、変換違えなどを「加筆」だなんて言い訳しますが、それを施したうえに、紙面の限定がないサイト向けの解説方式を取り入れた。図式です。
ブログ投稿で活用したパワーポイント図を更に増強した。各部、それぞれが25頁。文章を読まなくても図式を見るだけでMurngin族の親族体系が一目、理解に至る。
Murngin族の体系は複雑、かつ規格ハズレ(off patern=報告者のWarnerら)、他のアボリジニと比較できないと評価された。しかしレヴィストロースは例外とされた婚姻形態(たすき掛け交換=部族民)に注目、これを標準(水平交換)と組み合わせると1 女交換を一般化 2子の交換を限定 3男系女系の半族、交差いとこ婚ーこれらを骨格とするアボリジニの親族体系そのものーに還元されると証明した。8のサブセクション、それにまつわる親族用語の多様性などは「見える構造」、これに惑わられては科学にならない..。先達の報告を彼が編み出した「見えない構造」に置き換えた。この思弁の流れをして構造主義とは何かを部族民は理解した。
夏の暑さが豊穣のみなもと、盛夏にあり皆様に体調より優れるを祈念いたします。
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ムルンギン族体系の続き 一般化交換 8最終

2021年07月08日 | 小説
(2021年7月8日)前回(6日)で女の交換を一般化するには水平とたすき掛け交換を交互に組み合わせにて可能。このレヴィストロースの主張を交換サイクル展開図を用い再現した。その起点としてa1(サブセクション、以下同じ)がb1から女(嫁)を貰い、8のサブセクションを一巡する周回があって、もう一つの周回はa1がb2へ女(嫁)を贈るを起点とした。これと逆巡の流れを再現するとa1がb1に贈り、a1はb2から貰うとなります。





前回の図と同じ、赤の実線矢印は水平交換、弧の破線がたすき掛け交換。青破線は子の流れ。黒の丸数字が水平交換の順番、赤はたすき掛けの巡となります。



系統図に組み替えても共時(local line)の女交換が破綻なく世代再生産(decent line)に結びつきます。

これら展開図、系統図の意義とは?前回と併せてレヴィストロースは以下を証明した事につきます。
1 水平交換(あるいはたすき掛け)のみでは女のやり取りが限定交換になる。さらに周回の流れ向きで子のやり取り相手が代わる、階層(クラス)が成立しない。
2 水平交換とたすき掛けを併用することで女やり取りが一般化し、子のやり取り相手が固定する。すなわち階層が安定する。
3 女交換は一般化、子の流れは限定交換(貰った相手に同じ財を返す)。ムルンギンに限らずアボリジニは子の限定交換を保持し、階層の安定を求めたと言い換えできます。階層とは突き詰めて男系の維持です。
上3の内容がオーストラリア・アボリジニ族に共通する親族体系です。

レヴィストロースは4の階層をPRQS、とPR,RP,QS,SQの組み合わせを主張した(本投稿の3,4回、6月24、27日)。この階層の2通り組み合わせは、a1がb1に、あるいはb1がa1にのいずれかを起点として選ぶかの差です。前回に掲載した系統図(本書から)ではPR,RP,QS,SQの階層となっています。しかしこの図の出典は無いからレヴィストロースが作成したと見られる。彼にしてもたすき掛け交換を「optionel選択的、たまにあり得る」とした原典以上の資料を持ち合わせていないから、ムルンギン族がどちらの組み合わせを実践していたかを断定するには情報不足。よって2の組み合わせを思弁からの可能性として提示したと思います。
見える(explicite)モノを論じるだけでは科学ではない、見えない(implicite)背後のカラクリ(構造)を見つけ出す、これが科学だ!と教え、実践し実証した例の一つがムルンギン体系の解析と圧倒される次第です。


ムルンギン族体系の続き 一般化交換 8最終 了

ブログ投降はしばらく休み、ホームサイトの増補、改修に力を入れます。tribesman.netへよろしくご訪問ください(蕃神)。








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ムルンギン族体系の続き 一般化交換 7

2021年07月06日 | 小説
(2021年7月6日)レヴィストロース著「親族の基本構造、Les structures elementaires de la parente」からムルンギン族の親族体系を解説しています。
本書の引用文献はWarnerらの同族報告の民族誌です。発表は1937年とあります。80年を越す昔の報告で、部族民蕃神には元本を(ネットで)回覧する機会など持てないし、そもそもMurnginの検索でネットで何も引っ借りません。故にレヴィストロースの言い分をそのままありがたく頂戴するハメに満足するしか無いのですが:

1 8サブセクション4クラス(階層)の構成で、女を水平対峙のみで交換するとアボリジニ(オーストラリア先住民)にはありえない親族体系が出来上がってしまう。
2 それは女の限定交換、かつクラスの不安定性に集約される。
3 たすき掛け交換を「選択的」と解釈せず、水平交換と相互性を持つ形態とする。相互性をalterneと説明するが、意味は2者が互い違いに出現する。
4 8サブセクションとは4のクラス「発展型」であり、その視点に立てばムルンギン族もアボリジニに固有「女の一般化交換」(=このあたり、アボリジニの習俗を小筆は何も知らない、検証もできない)を実践していると証明できる。

以上の1~4がこれまでの流れ。前回に掲載した図が下に、


パワーポイント図を作成し、ここでは水平交換のサイクル2とたすき2をalterne(相互出現)式に合体させた。


起点が2あってまずはNgarit(a1)がBalang(b1=以下abcdで表示)に女を贈る。赤の実線黒の①です。青の破線②はb1がc2に子を贈る。③~⑧の流れを追ってください。これは水平交換サイクル2の流れを再現している。⑧でa1は子を貰う。流れが周回する意味とは8のサブセクションをすべて絡める。各サブセクションは嫁をもらって子を贈る、あるいはその逆を実行します。そのままでは嫁はいるけど子が消えた(逆も)のサブセクションのみとなります。a1が嫁を貰う起点が必要となります。ここでたすき掛けのサイクルを導入すると;
上の図、赤の破線赤の①から始まって、たすき掛けサイクル(その2)をなぞって女と子の移動が⑧まで続きます。
水平とたすきのハイブリッドの利点は;
1 嫁交換が一般化している(a1はb1に嫁を贈るが、貰うのはb2から)。この仕組みはどのサブセクションにも当たる。
2 子を交換し合うクラスが固定する(a1はd1とのみ子を交換する)。前回紹介した水平交換のみの構成では子を贈る方向でクラスが入れ替わる。
3 子の交換を限定とし女交換を一般化した。実はこれがアボリジニの体系です(度々述べるが小筆はアボリジニには知識がない)。水平たすきの相互性がムルンギンの特異を打ち破る手段です。そもそもともかく、特異が認められたら、特異ホイホイでマンセーする態度は科学ではない(Warnerら)。その奥に潜む見えないimplicite普遍を探るのが科学じゃー御大は小筆などの凡愚に科学とはなにかを諭している訳です。

上の平面図を系統図(下)に書き換えました

これは本書掲載の系統図(既出)

に該当します。この図はWarnerらの報告資料からレヴィストロースが再現した。一見して、あまりにも整然、水平とたすきが相互、並立している。見えないimplicite構造とは美しいのじゃ、なんとか(部族民も)再現したく心して、色々やったらこうなった。青斜め線が水平交換、黄色斜めはたすき掛けの流れ。ついでにもう一図:


元図の二通り(黒と赤)①~⑧を系統図にノンブル打ちしました。

ムルンギン一般化交換7の了(7月6日)続く








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ムルンギン族体系の続き 一般化交換 6

2021年07月03日 | 小説
(2021年7月3日)ムルンギン族の女と子交換の仕組みを調べています。同族は8のサブセクションを2部に分け、4の対峙する組み合わせで女(嫁)を交換します。対峙のサブセクションAとBとすると、Aが女をBに贈るとBはAに女を返さなければならない。この交換をしてレヴィストロースは「限定交換échange restreint」とした。4の組み合わせでこの仕掛けを造ったムルンギンを「異色のアボリジニ」とWarnerら(1930年代のことです)は報告者した。しかしレヴィストロースは「特別」を認めない。彼らの手法は「見えているexplicite仕組みをそのまま解析しただけ。見えていないimplicite構造に気づいていない」と批判した。1930年代に主流だった「機能主義」民族学を「構造主義」の大将が批判した形となった。
では目に見えない構造とはなにか。「ムルンギンもアボリジニに一般である4セクションでもって女を「一般化交換échange généralisé」で交換している。その仕掛けが8のサブセクションは4の階層(クラス)に集約するカラクリなのだ」と大見得をきった。

ムルンギン族の女交換は4の可能性があり、組み合わせも4通りある。
1 水平交換(標準)の1、起点をAからBへ女を贈る。
2 水平交換の2、起点はBからAへ。
3 たすき掛け交換(選択的)の1起点はAからB。
4 たすき掛け交換の2、BからA へが起点。

初めてご訪問の方には理解しにくいのでパワーポイント図を下に。




左右4ごとに分かれた8サブセクションの名称。それを結ぶ水平線が女交換の経路です。弧の破線は子を渡す流れ。NgaritがBalangに女を贈る(一番上の青の水平線)、BalangはKarrmarugに、その嫁が成した子を贈る(青破線)。この流れが8回あって、一の周回が終わる。赤の組み合わせはBalangがNgaritに女を返すを起点として、8の経路が一の周回を作る。ずべてのサブセクションは「女と子を贈ったが、女も子も貰った」でハッピー!上図は水平交換1,2の組み合わせですが、たすき掛け交換の1,2を組み合わせても二の周回が達成でき、部族民はハッピー!気分を満喫する。たすき掛け交換のみ画像は下。


上写真、破線が子の交換の組となります。
RP,PR,SQ,QSの青組とP,R,Q,Sの赤組となりました。レヴィストロースはこれらを階層クラスとしたが、周回の向きで階層が変わる、例でNgaritは子を受け取る向きではBangardiと組み、あたえる際にはKaijarkとクラスを結ぶ。この階層替りの仕組みは水平交換の組み合わせでも派生します。
しかしクラスとは社会構造の中で強固、不変な組織を引き当てます。例えば私(蕃神)は労働者階層に属します、結婚しても階層は変わりません。昨今は逆タマなる挽回があるらしいが、当方の周囲に貴顕の令嬢は見当たらないからそれは無理だろう。圭には慣れないな。若干の筆の滑りを修正し、こんな具合で論じると子の流れの向きで階層が変わるは奇っ怪。そこでレヴィストロースが諭すのが水平とたすき交換のハイブリッドです。
下図(前回掲載したパワーポイント図の切り抜き)は一の周回にNgaritからBalangへの女贈りを起点として、水平交換1の規則で1~8を回ります。二の周回にBalangがNgaritに女を返す(限定交換となってしまう)、ではなくBuralangがNgaritに女を贈る方法(たすき交換の2)を取ります。すると写真上でBalang・Warmutは2者間で子を贈り受ける。階層を形成します。このときの階層はP,R,Q,Sと固定します。Warnerが選択的、どちらかというと非標準としたこのハイブリッドがムルンギン体系を理解するカギとした訳です。




次回はもう一つの可能性(PR,RP,QS,SQ)の階層はどの組合せとなるかうを探ります(2021年7月3日)。続く。


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ムルンギン族体系の続き 一般化交換 5

2021年07月01日 | 小説
(2021年7月1日)前回(6月29日)は>手書き図5は前出2の交換をまとめました。子の交換を鍵にしてサブセクションを4にまとめると。レヴィストロースが想定したPR.QS,SQ,RPの階層が出来上がる。説明を読めばそれ以上はでないけれど、詳細解説は次回(7月1日)に<
で終わっています。手書き図で出したのですが、やはり見にくいのでパワーポイントにおとし、Jpegにファイル変換した図を載せます。





婚姻と子の移動は本書196頁に(文として)記述されている。前回の最後尾にその写真を入れている。それから水平交換の2のサイクルを平面図として展開した(前回)。A1(サブセクション)を起点としてA1=>B1の女(嫁)移動を始まりとして、子の移動とも絡まり、8巡目にA1は子を貰えることになる。水平の第2のサイクルはA1がB1から嫁をもらうが起点となり、8巡目でB1は子を貰える。2の水平交換サイクルを結合して、A1は嫁を出し子を貰い、子を与え嫁を貰うー4の交換活動すべてを成就する。これは8のサブセクションすべてが、同等の立場で行動する。
これは均衡の取れた、対称の親族と交換構造を形成を形成している。一方でたすき掛けで嫁を交換する規則もあると報告されている。Warnerなど報告者はたすき交換は選択的(Optionel)で頻繁には発生しない(風な)説明をした。レヴィストロースはたすき掛けは水平交換と相互性をもち、互換(alterne)の関係にあるとした。
そこでたすき掛け交換のみで平面図を作成した。たすき掛けのみでも、たすきサイクルの1と2をあわせ、前述の条件(8のサブセクションすべてが、同様の立場)が成り立つ。
レヴィストロースの主張は水平とたすきがalterneの関係となっているである。Alterneとは出たり入ったりが互いであるとの意味です。その主張に沿って水平とたすきを結合したのですが(上図)、交互でも系統が成り立つと分かった。下図で平面図を共時性(local line)と経時性(decent line)に分解した。ここでも破綻なく系統が成り立つ。



この意味合いは

1 一旦、たすき交換をしたら(嫁をたすきで貰ったら)子の移動はたすきの流れに合さないと8セクションを巡回しない不都合が生じる。
2 たすき交換は制度化されている(それのみで8セクションを巡回できる)。水平と混在(実際は=相互に=だが)しても親族体系は造れる。
3 レヴィストロースはこれを支える仕組みとして8セクションを4のクラス、2通りに結合した。その一つ(PR,RP,SQ,QSの組み合わせ)が上図である。子のは限定交換である。嫁の限定交換を避けるためにたすきの流れを造ったが、子は限定になった。

次回(7月3日)はもう一つの組み合わせを見る。了(7月1日)


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