蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

神話学第4巻「裸の男」7仏語哲学書の読み方Youtube投稿

2024年07月20日 | 小説
理解じゃないよ解釈
(2024年7月20日) 神話学Mythologiques「裸の男L’Homme Nu」の紹介を続けています。今回投稿7回目となります。
本書51~51頁には歴史神話学の批判を展開しています。結構、難しい文脈に出会いました。一読で分からないのは致し方ないけど、十通り読み重ねても文言行句の理解に至らない。こうしたときには原点に戻る。原点とは構造主義。構造主義とは「モノ」対「思想」です。そこでレヴィストロースの構造神話学とは調査の対象(神話の筋道、挿話など)のモノに思想を織り込んでいるのだと「決めつけ」相手の歴史神話学は「モノはモノ」としている。形而上はレヴィストロース、形而下は歴史神話学なのだ!として読み返して、ようやく部族民解釈にこぎつけた。ぜひ部族民Youtubeに接近してください、アドレスは下に。

本動画に接近なさるお方には部族民ならではの解釈の道筋を受け止めてくだされ。鍵は「理解ではない解釈です」哲学書に目を落とす際の王道です。


動画のサムネイル


動画リンク
https://youtu.be/Q07NLzCJlI4

なお神話学の過去動画リンクは https://youtu.be/3mfMMYr2FPY
第二回 歴史神話学批判 https://youtu.be/fyzi5pPmeXg
第三回 北米神話の共通分母 https://youtu.be/hg9tgW9nDdQ
第四回 2の基準神話を構造神話学から分析  https://youtu.be/gxZVjKElc6E
第五回 反文化の象徴アビ水鳥 https://youtu.be/cZYvkCLbxD8
第六回 神話の肉付け https://youtu.be/Ru-QNeW8y4A


部族民通信のホームサイト WWW.tribesman.net に動画プレゼンテーションのポワーポイント資料が(神話学の頁)に掲載されています。

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L’Homme nu裸の男に読む構造神話学と哲学修辞 下

2024年07月16日 | 小説
(2024年7月16日)Il s'interdit même d'expliquer des dénominateurs communs à plusieurs version, en commençant par celui qu'on a choisi pour identifier le mythe tant il semblait constant et important, à savoir la transformation de la sœur incestueuse en oiseau plongeon. Mais ce qui est plus grave, ce parti pris oblige à même temps à introduire dans le mythe des présuppositions gratuites, ainsi que le salut « de la famille et de la collectivité exige qu'on réussisse à dissimuler le bel enfant ». Nous montrons que la solution du problème l’enfant caché est beaucoup plus simple, à condition qu'on aille la chercher dans la matière des mythes et non dans l'esprit du mythographe en mal d’interprétation : un garçon chéri de ses parents et dissimulé par eux dans une fosse souterraine au milieu de la cabane familiale, offre une image symétrique avec celle d'un garçon haï par son allié, et isolé par lui dans la brousse en haut d’ un arbre : l'enfant caché est donc l'inverse du dénicheur d'oiseaux.
そこ(歴史神話学)では複数の伝播神話に共通する「分母」語ることを自ら封じ込めている。一方で、一の神話を原型と特定し、近親姦の姉がアビに変身するとなど(一見して)重要かつ共通する挿話を(ただ一つの)共通項目とする。この進め方はより深刻な瑕疵を含む。なぜなら原型挿話を選ぶ過程が「自由な=勝手な=前提に」汚染されるからである。子を匿うとは「家族と集団の救済のために」と彼ら(歴史神話学)は語るが、より簡単に説明できる。但し神話記学の誤り解釈に執着せず、神話の中身に入りこまなければならない。愛でられ地下の穴蔵に匿われる少年は、父親に忌避され巨木の頂に捨てられる少年と対称を見せるのである。穴蔵の少年は(南米ボロロ族の)木に遺棄された少年の、逆転伝播といえる。

文言、語の解説(鍵語に網を入れている)4 ;
レヴィストロース主張する共通分母 « dénominateurs communs » がこの引用文にしてようやく出てきた。歴史神話学においての共通分母(らしき)と比較をしている。あちら側は重要神話を特定する際に、共通かつ重要性 « constant et important» の一点のみを見極める。アビ神話群で共通なのは「近親姦姉のアビ変身」という一の分母(引用文での « celui » は複数形のdenominateurs受けるが、単数としての関係代名詞、たった一つの分母)となる。この要素をして、神話群を取り纏める外円として客体化する(歴史神話学の同心円を思い出してください、最大円を神話群の原型とします)。外円内側に同心円として位置する小径要素を選ぶ際に « présuppositions gratuites » 勝手な前提が入り込むのを許してしまう。これは具体的に、月の嫁神話でのヤマアラシが「月に変身する」「太陽に変身する」などの挿話をして小円に閉じ込める。それら選択の基準には「理論背景」はない。自由選択、この自由は「気まま勝手」との意が籠もる―レヴィストロースはかく論難を仕掛ける。
« mythographe en mal d’interprétation » 誤り解釈の神話記学、歴史神話学をです。「愛でられる少年」「忌避される少年」を歴史神話学が説明するとすれば、それらは別々の小円に表せられ数値化の度合いで円の径がさだまる。そのような解釈を否定して、ボロロ族鳥の巣あらし(忌避される少年)の「逆転」伝播と、簡明な持論を述べる。
この逆転事情を考察するに、母と近親婚を犯した少年は忌避される、姉に迫られる少年が匿われる。既遂は忌避され未遂は匿われる。人の心情、道理が反映されている。いずれにも「少年英雄と近親姦」を結ぶ動機motivationが二の要素をつなげている。

神話伝播とは族から民へ、伝達の経路は時間も距離も長い。順列あるいは逆転の法則の元に伝播するという事情とは、送る側受ける側に思考による「動機の遵守、あるいは修正」が入り込むを意味するかと思う。先住民はヒトなれば伝播は「人の思考」に支配され、表のまま、あるいは裏に返すなりの方向性が入り込む。順行と逆転が見られるとすれば、それは分析理性と弁証法の表現です。我々(私だけ)愚衆にレヴィストロースが問いかけた「動機づけと共通分母」の作動原理はカント « entendement » 考える行為に戻れ、ここに「構造神話学」の教義が認められる。了(7月16日)


日野市の散歩カメラ、夕方の京王線、平山近辺


後記;Avant d'en arriver là et de pouvoir faire la preuve de cette équivalence, nous aurons une longue route à parcourir pour connecter entre elles les étapes de la transformation. Nous commençons par exposer l'économie de la distribution du mythe de la dame Plongeon, en nous aidant de la version syncrétique établie par Demetracopoulou.
この相似姓(2の少年の逆転対称)を証明するに変身の長い道のりを辿らなければならない。ここでDewmetra…の統合した業績、それは確立しているから、を採り入れる。
彼女への讃辞で締めくくられます。付表:言葉と意味をまとめた。

(BlogTextは原文は表、を反映しなかった。読みづらさにはご容赦) 
神話は主体 レヴィストロース
Dame aussi présent
aussiやはりここにもーの意味 前の挿話との関連
motivé 動機づけ
dénominateurs communs 共通分母

神話は客体Demetracoloupou
arbitrairement 気ままな定義付け
énoncé empirique 経験からくる主張
objet réel 実体として見える客体
inverse 少年の立場が逆転するも、英雄と近親姦の関連が共通する
groupe 同心円で表される神話群
critères subjectifs 研究者の主観による基準
morcelée 神話の要素を(モノとして)細分する
caprice 語り手の気ままさ
dépourvus de propriétés 登場者には性状が無い
une不定冠詞の連続使用 不定冠詞とは実体、由来が不確か
énoncé simpliste échapper 単純すぎる主張で実質を見逃す
présupposition gratuite 自由な=勝手な=前提
en mal d'interprétation 解釈の至らなさ

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神話学第4巻「裸の男」6神話を充実させる肉質、Youtube投稿

2024年07月14日 | 小説
(2024年7月14日) 神話学Mythologiques「裸の男L’Homme Nu」の紹介を続けています。今回投稿は6回目となります。歴史神話学の批判の文脈でレヴィストロースは「イシス神話群を、単に近親姦と世界の破滅(歴史神話学の解釈)と受け止めてはならない。筋道を豊かにする肉質 « substance » が豊富に認められる」と伝えている。神話の動機づけ(motivation)の仕組みを動的に説明しようとする試みかと感じ入ります。同時に歴史神話学に顕著な「神話要素を個別に摘出し数値化」する、これが客体化の実態ですが、この手法は神話を凝固させるだけ、その批判の続きです。
レヴィストロースは神話学第一巻生と調理、序章において神話の3分節を解説しました。第一分節に登場物(者)protagoniste、第二分節は符丁code、最終分節はスキームschème。音楽表現は神話と同じく3分節で聞かせる、それは音符、メロディ、曲。神話と音楽の類似はひと頃大きく採り上げられた。


近親姦を回避する努力、英雄の沈黙を肉質とした


本動画リンク https://youtu.be/Ru-QNeW8y4A

なお神話学の過去動画リンクは
https://youtu.be/3mfMMYr2FPY 第二回 歴史神話学批判 https://youtu.be/fyzi5pPmeXg 第三回 北米神話の共通分母 https://youtu.be/hg9tgW9nDdQ 第四回 2の基準神話を構造神話学から分析 
https://youtu.be/gxZVjKElc6E 第五回 反文化の象徴アビ水鳥

https://youtu.be/cZYvkCLbxD8 部族民通信のホームサイト WWW.tribesman.net に動画プレゼンテーションのポワーポイント資料が(神話学の頁)に掲載されています。


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L’Homme nu裸の男に読む構造神話学と哲学修辞 中 

2024年07月12日 | 小説
(2024年7月12日)De sorte que l'objet réel sur quoi porte l'analyse se situe au niveau du groupe, et non de telle ou telle de ces propriétés. D'autre part, ce mythe, déjà découpé selon des critères subjectifs dans l'ensemble dont il est pourtant solidaire et dont l'existence n’est même pas soupçonnée, se trouve à son tour morcelé en incident, éléments ou motifs qu'on ne définit pas de façon rigoureuse et qu'on laisse voyager au gré de caprice ou d’oublis qu'il est commode d'imputer aux conteurs : « perdus par une version, récupérés par une autre cédée ou empruntés à différents systèmes mythiques, et toujours dépourvus de propriétés intrinsèques qui pourrait expliquer leur coalescence en vue d'un arrangement déterminé qui donnerait naissance à un mythe » (Demetracopoulou).
(神話要素とは歴史神話学で)具体的な客体であり分析対象に採り上げられ、その客体は集団の中に位置する性格付けのみを受ける。要素が具有する固有性状から分析するなどは決して無い。更に(Demetre..が定義する)神話とは、その集合体を通して確固としているかもしれないが、すでに主観に導かれる判断基準で出来事、構成、目的などに細断されている。その細分仕方も厳格な基準で扱われているとは言えない。辻褄が合わなければ先住民語り手の気まま、忘却に押し付けられる。「一の語りでは失われていて、別の語りに復活している。別の神話群では押し込められたり引き出されたりして、いずれにしても本来の性状は、それがあれば神話が生まれた状況が判明するのだが、すでに失われている」(Demetra...)

文言、語の解説(鍵語に網を入れている)2 ;
対象とする要素をl'objet réel具体的客体と定義する。Réelの語義は実際そこにある、見えるモノとの意が浮きでる。そのモノは特定の神話群groupeでのみ取り沙汰され、神話群が離れると意味をなさない、なぜなら客体だから。Propriétés はレヴィストロースの用語でも神話の登場物(者)にあらかじめ定められている性状です。性格行動基準が定められている、よって自立する主体と言える。Demetra..は、主観的判断基準Critères subjectifsを持ち込み、対象をモノsubjectifと捉える。上記の自律する性状が、神話進展に結びつく仕組みを無視する。
神話をmorcelé en incident細分化しても、その神話の理解に繋がらない。辻褄が合わない事情は語り手の気ままcapricesに責任を帰す。dépourvus de propriétés intrinsèques本来内包する性状、が見えないとするが、その原因は要素を細分しているところに起因する。動機づけを導入し、筋道に法則性を説くレヴィストロースとは正反と言える。
Dans ces conditions, si le mythe soumis à l’enquête offre une unité, celle-ci ne pourrait lui venir que d’une idée directrice qui, pour prendre une forme sensible, doit prélever dans une tradition au demeurant amorphe les images et les incidents les mieux propres à servir à son dessein. Selon notre auteur, cette idée serait celle d'un d'inceste catastrophique qui menace l’ordre du monde, et dont les victimes cherchent à se venger. Mais outre que cet énoncé simpliste laisse échapper toute la substance concrète du mythe―alors que chaque détail, nous le verrons, est rigoureusement motivé―
神話を出来事などで細分化すると、その神話はともかく一つの纏まりを残すだろうが、神話の理解にもたらす成果は強圧的な示唆と化す。ともかく認識できるように(歴史神話学に特有の)進め方で視覚像、逸話などを不整合のまま放置して、神話の意思を探り抜き取る。著者(Demetra …)によればこの意思とは「惨禍をもたらす近親姦であり、被害者の世界秩序への挑戦」であるとする。この単純過ぎる解釈が神話の肉付けを見逃している以上に、それぞれの細目が厳密に動機づけられている神話事情も語られない。


裸の男に先立つ11年前、レヴィストロースは構造人類学でギリシャ神話「エディプス」を解析している。破線矢印が古代ギリシャ人が信心としている動機と肉付け。本図は同書の説明に則り部族民が作成した。


文言、語の解説3 ;
前半はDemetra...の神話解析方法論。不定冠詞 « une » が続く。Une unité, une forme, une idéeなどと4の名詞にかぶさる。不定冠詞とは「とある一つの」の意味で、uniteに冠すると「とあるなにかの」一体。その一体が素性、有り様などで明確に定義できればlaを冠するはずだが、そのように文を作らない。得体のしれない何やらの「一体」。極め付きは « une tradition » とある一つの慣習。この語が歴史神話学の分析手法を「とある」で切り捨てている。
これらの調査はDemetra が手掛け、歴史神話学の規範に沿った信頼おける結果が得らているはず。が、その手法をレヴィストロースが認めないと不定冠詞で表現している。
« toute la substance » は「文脈に内包される全て」が直訳だが、肉付けと訳した。肉付けが果たす役割が « rigoureusement motivé » 厳密な動機づけ、その接合材。神話要素に内含する肉付けの概念も、動機付けの仕組みも説明しない歴史神話学の手法は、この筋立てを支配する機構=構造=を見逃す。反文化の化身アビが、兄弟双子の活躍を導く動機 « motivation » の役割を当てられ、そのつながりは(北米神話では)厳密。アビにも兄弟双子にも、主体性が具わり自律歩調で活動する機構がこの状況に覗える。

部族民は別投稿で「活動から沈黙」の動機づけを述べた。兄弟双子もアビ退治の活動の後に、空に上って星に化身して春の訪れを告げる(M539悪霊退治の双子の星)。

L’Homme nu裸の男に読む構造神話学と哲学修辞 中 了 (7月12日)

追:原文はOffice Wordで作成している、鍵語に網目をかけているのだが、Blog画面では消える。読者各位にはご不便をかけているが、ホームサイトに
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L’Homme nu裸の男に読む構造神話学と哲学修辞 上

2024年07月10日 | 小説
(2024年7月10日)仏語の哲学書はこのように解釈する。汝は「主体か客体か」色分けして解釈にこぎつけた(ガチ構造主義だが読んでくれ)
前文 : レヴィストロース人類学は調査対象の事象、行動などを客体と見ておらず、主体とする。当然、先住民の思考、信仰、社会規則なども主体である。理由はそれらに人の智が宿る。形態に宿る思考、これは構造主義の原点となります。例えば親族とは人の智です。親族と親族外の範囲、婚姻できる親族、できない親族の範囲。それができない親族は系統で、婚姻できる親族と同盟関係を築く。社会基盤をいかに形成するか、人の智慧が親族の思想です。

参考に部族民がかつて作成した言語学意味論の考察のスライドを引用する。

ソシュール意味論の主体客体をひっくり返した「構造主義」意味論

そこいらをうろつく四つ足は人がイヌなる語を与えてイヌになる。イヌが猿でも豚でもない形而上的からくり

一方、行動、慣習などは社会機能の一環とする説、マリノフスキーなど英米系学究が主唱してきた。機能社会学と俗に伝わる。この理論は対象をモノ化している、「機能のみが付帯する客体である」とレヴィストロースは批判する。要素の客体化は構造主義と相容れない。これ故に、批判舌鋒はかくも鋭角的かと―(部族民は)感嘆するのです。
レヴィストロースは神話学全4巻で「構造神話学」を掲げた。彼自身この語を用いないが、本書で開陳される趣旨、理論を読み込むにつけ、この冠語がまさにふさわしいと感じ入る。そしてその矛先は「歴史神話学」に向けられる。機能社会学への批判に展開された思想風景、両論の乖離がここにも覗える。
彼らの理論は神話の要素を固定化する、固定された要素には思考がとりつかないし自律運動を見せるべくもない、ただ数値化される「モノ」である。以下に引用する文列は本書52~53頁から。視線を本に落とし文の列を追えば、満天の星のごとく哲学的修辞が(部族民の)脳みそに煌めきます。
難しいから構造主義の規範を採り入れ、この文脈は「主体か?客体か?」に色分けし読み込み、解釈にこぎつけました。皆様からの批判を仰ぎたくここに投稿します。
以下本文(鍵語に網を入れている)

Chaque fois qu'il apparaît, on peut donc inférer que le mythe de la dame plongeon est aussi présent, que ce soit sous forme directe ou modifiée. L'étude de Démetracopoulou rend de tels services qu'on ne saurait lui faire grief, aucune autre méthode n'étant alors disponible, des insuffisances de celle que cet auteur applique en inspirant des principes de l'école historique. Nous les avons déjà réfutés. D'une part, on définit arbitrairement le mythe, sans envisager un instant qu'il pourrait n’être pas un discours isolé que son énoncé empirique suffit à caractériser, mais un état local ou momentané, d'une transformation qui engendre plusieurs autres, toute régie par une même nécessité ;

それ(兄弟双子が活躍する挿話、前文を受ける)が神話に現れるたびに、アビ婦人も語られる。この連結の流れは否定できない。言い回しは直接的であるし、変化を見せながらの場合も認められる。一方、Demetracopoulouの研究は誰も成果を引き継げないし、いかなる異なる進め方とも両立できないことからして、歴史神話学の教義に着想を受けたその手法は、幾つもの不満足性を抱えたまま残る。その理由を以下に語ろう。
実は、我々(レヴィストロース個人)は歴史神話学をこれまでの書で否定している、(不満足な)論点の実態とはその学派の学究(on=一般的人となるがDemetracopoulou)は、自ら感じ入る所信で、神話なるものを規定する。いかなる神話物語にしても単独孤立していないはずだが、そう思いとどまる瞬時もないし、それと覗える形態をただ経験から決めつけるのみ、それで十分であるとの思い込みに閉ざされている。その上、一の神話はその場とその時系列に位置しているだけで、伝播系統で幾つもの偏移神話を生み出し、それが一の必然性に支配される。この起動原理のもとでの地域的瞬間的な存在であるとする。

文の使えかけとは? 1 ; 
活躍する兄弟双子:北米神話では悪霊退治に双子が登場する。M539では山野に跋扈する悪霊を退治し星に昇天する。夜な夜な叫ぶアビを退治するのは双子漁師。双子とアビには筋立で関連が認められる。レヴィストロースの伝える « motivé » 動機づけである。歴史神話学はこの筋道の有機結合を語らない。
« définit arbitrairement le mythe » 自ら感じ入る所信としたが、意味がわからない訳となった。直接法で言うと「勝手気まま」。アビが語られるからこれらをアビ神話群とするが、この断定はおおよそ根拠のない「気まま」な顕れ。次文の « un discours isolé que son énoncé empirique suffit à caractériser » 孤立した語り口など無いと(思いとどまらず)、sonその者の(前文のonを受け継ぐ、Demetracopoulouのこと)経験からくるだけの「決めつけ」で終止する。

L’Homme nu裸の男に読む構造神話学と哲学修辞 上 了 (7月10日)

追記:他説を批判するレヴィストロースの文は難しい。平易な文で批判すると反論される、そして再批判。その煩瑣を避けるためと勘ぐる。有名なのは「野生の思考」第九章サルトル批判。あのサルトルさえ「解釈」出来なかった(らしい)。
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Youtube投稿神話学第4巻「裸の男」5アビ(水鳥)は反文化の象徴

2024年07月09日 | 小説
(2024年7月9日) 神話学Mythologiques「裸の男L’Homme Nu」の5回目、Youtube投稿の報せです。


動画のサムネイル


歴史神話学の批判の文脈でレヴィストロースは「神話とは筋道に動機づけ、それぞれの神話に共通する主題(分母と呼ぶ)の構造を持つ」と思弁的哲学的に主張しています。神話を構造主義の視点からの解析となります。この思想方向を(部族民として)理解し、2の基準神話(M1ボロロ族とKlamaht族)を比較解析しました。今回、アビ(水鳥)神話を採り上げます。 アビは「夜中に奇怪な声を張り上げる」「首筋の奇妙な紋様」などで(北米先住民に)反文化の象徴とされます。彼女は水平婚(姉弟たわけ)に耽溺し村落に火を放ち、焼け死んだ兄弟の遺骸から心臓を取り出し、首飾りに仕上げます。結局は兄弟双子(北米神話の重要登場者の二重の神)に殺害されます。 アビの死を通して婚姻の手続き(婿の役務、Prestation)が取りまとめられ、系統対同盟の対立が、取り決めと制度確立で解消される文化発展が語られます。前回に採り上げたM1が火と水の創造、儀礼の創造。またM538 (イシスの冒険)では山野と水の創造、系統同盟間の対立解消の預言―で文化形成を説明する流れを、アビ神話は、共にしている。 構造分析(動機づけと共通分母)ならではの神話の理解かと思います。 皆様には動画ご高覧を賜り、辛辣なコメントをいただければ有り難い。 なお神話学第4巻「裸の男」これまでのYoutubeリンクは

第一回https://youtu.be/3mfMMYr2FPY
第二回 歴史神話学批判 https://youtu.be/fyzi5pPmeXg
第三回 北米神話の共通分母 https://youtu.be/hg9tgW9nDdQ
第四回 2の基準神話を構造神話学から分析 https://youtu.be/cZYvkCLbxD8

部族民通信のホームサイト WWW.tribesman.net に動画プレゼンテーションのポワーポイント資料が(神話学の頁)に掲載されています。 なお本動画作成にはマイクロソフト・オフィス365のパワーポイントの新機能(2024年3月から交付された)「動画記録」を用いている。スライドが動画化され、口頭説明(ナレーション)と演者が右下に張り付いています。 チャンネル登録を願います。部族民通信の過去動画(60以上)に容易に訪問できます
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レヴィストロース神話学「裸の男L’Homme Nu」4回目、動機と分母Youtube投稿

2024年07月02日 | 小説
(2024年7月2日) 神話学Mythologiques「裸の男L’Homme Nu」の紹介を続けています。今回投稿は4回目をYoutube投稿した。前回、歴史神話学を批判したレヴィストロースの趣旨は「神話とは歴史神話学が提唱する数値化に凝固するようなような静的、客体ではない。主体性を具え自律運動を見せる」に尽きます。この自律運動の機構を「動機づけmotivation、共通分母dénominateur commun」としました。

上記に沿って北米Klamath族等伝承のイシスの冒険Le geste de Aishisi神話群を、前回、採り上げました。動機づけ、分母ともに明瞭化され神話群の有機的まとまりが浮き出てきた(かと勝手に思っている)。 時間的地理的に近い北米族民の伝承であるからに、こうした繋がりが出てくるのは当たり前―とのご意見はあるかと。そこで時間と地理の隔たりも大きい南米神話と北米神話の有機結合を試みた。2の基準神話(M1ボロロ族、火と水の創造とM538イシスの冒険)の筋道の進行、挿話の共通項を上記(動機づけ、分母)手法で解析するとした。
また動機づけと分母を思考に展開すると弁証法と分析理性となる(と勝手に信じる)。先住民の思考はレヴィストロースが「野生の思考」で紐解いたように、近代人のそれとは変わらない。カントは人が考えることは先験であると教えたが、先住民にもこの理性が具わる証が神話となります。

本概要説明の結語では「我(部族民)ながら良くできた」平和裏に悦に入っている。皆様には動画ご高覧を願い、かつ辛辣なコメントをいただければ有り難い。


Youtube動画のサムネイル


本動画のYoutubeリンク  https://youtu.be/cZYvkCLbxD8 なお神話学第4巻「裸の男」

第一回動画(近親姦が生む英雄)のリンクは https://youtu.be/3mfMMYr2FPY 。
第二回 歴史神話学批判 https://youtu.be/fyzi5pPmeXg
第三回 北米神話の共通分母 https://youtu.be/hg9tgW9nDdQ で接近できる。
WWW.tribesman.net に動画プレゼンテーションのポワーポイント資料が(神話学の頁)に掲載されています。

後記:本動画作成にはマイクロソフト・オフィス365パワーポイントの新機能(2024年3月から交付された)「動画記録」を使っている。スライドの記録が動画化され、口頭説明(ナレーション)と演者の説明ぶり動画として右下に張り付いています。この機能を用いれば高等な撮影技法、高級な資材、ソフトを用意しなくても、ソロで適当でそこそこの動画が作成可能です。本Blogに接近する皆様にも、Youtube動画を作成する目標を持つ方が多いかと思います。全くの動画素人でもこれくらいは行けるーご参考になればと記しました。
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