北朝鮮の独自の外交パワーは、中国の50分の1程度の力量しかない。世界経済に占める比重も、全世界が完全に経済封鎖しても、世界に大不況を及ぼすようなものではない。日本の一都道府県よりも、経済世界への影響は小さい。人口が2000万である。中国は、過去に江沢民政権が東北経済に強いため、北朝鮮との蜜月を重ね、便宜供与してきたが、ここに不正の温床、特に国営の石油部門の問題が隠されてきた。習体制の確立により、北朝鮮は一切の過去の裏パイプが塞がれた。中国共産党は、朝鮮戦争に参戦したために、中共の党内には、北朝鮮からのパイプが張り巡らされてきた。この関係が、官僚の悪の温床として、習総書記にみなされた。国連レベルの経済封鎖とは違う、北朝鮮側に味方する中国共産党内の分派が昨年秋の党大会で一掃された。北朝鮮は、経済規模では中国の一つの省、特別自治区よりもランクが低い。強大化した習総書記が、無期限の国家主席への正式就任を「被宗主国」として、最初に慶祝したのが、今回の金正恩の北京への覆面訪問である。
なぜ、習総書記が北朝鮮の関係を改善したのか?それは、和戦両様での準備である。アメリカには、朝鮮戦争の持続、台湾の海峡封鎖という時代錯誤の軍事冒険主義者たちが息を吹き返してきている。最悪、第2の朝鮮戦争、台湾海峡封鎖を警戒するため、中朝の軍事同盟をスリープからウエイク・アップする必要がある。まず、この軍事の備えとして、緊急時に備えた顔合わせ、緊急連絡網、軍事情報の共有という備えがいる。習総書記は、国家中央軍事委員会の主席でもある。こうして、中朝軍事同盟が、改めて再起動できた。この条件を備えたうえで、北朝鮮による朝鮮半島非核化をめぐる対米譲歩の最終ラインを決めたものと思われる。ともかく、中国は望まないのに、北朝鮮が鬼門であり、わずか2000万の部族国家のために大国の国運を左右され、ようやく脱却したのに、改めて北朝鮮問題が、中国の国運を左右しかねない重大問題になってきたのである。