「脳力開華」という啓発を掲げるユーチューバー、それが村松大輔である。東京大学の卒業というふれこみ。実はここが一番に怪しい。「量子力学」と「唯識論」とを無理やりに結合し、なりたい自分、やりたい課題に対し、「志」というエネルギーを注入すると、いつか、必ず自己実現できるという。これは、大正時代から存在するエセ科学であり、ポピュラーサイエンスの典型である。「量子学」は素粒子の運動のエネルギーで構成されるが、人間の脳内での素粒子の運動のメカニズムは解明されていない。生命の科学として、遺伝子の構造は深く探究されているが、それと「唯識論」との橋渡しは、科学としては未踏の領域である。言葉と言葉では繋がるが、モノとモノの素粒子のメカニズムとして、唯識論が探究が深められたことはない。「東大」というブランドには騙されがちであるが、多くの虚偽の学が帝大という包装紙で世に悪をもたらした例は、一つや二つではない。僕の世界でも、中国近代史を毛沢東の思想をベースにした中国共産党の中国近代歴史に当てはめたのが、東大、京大である。僕は、欧米の中国研究を導きの糸として、ケンブリッジ・ヒストリー・オブ・チャイナの描いた歴史像の精密化を試みた。お陰で、その理論の優位性でいまでも中国分析ができる。さて、「唯識論」は、いまや東大の医学部の研究から提唱された「唯脳論」にとって代わられた。能のメカニズムをモノとモノとの相互作用で説明する学問である。未解明な領域がある。それは、言語という記号がもつ働きである。それが一人一人、自己抑制したり、自己拡張したり、・・・合理的な最適の選択へと進まないのである。こうした複雑な領域につき、「志」があれば脳の力で、才能が開花するという扇動は、宗教である。実は、オウム真理教の「教義」なのである。ついでに言うが、日本共産党の指導者も、創価学会の頭脳も、東京大学という包装紙に包まれ、内部で君臨している。外国語で論文を書き、外国語の国際学会での活動歴があっても、始めて学者といえる。東大4年で卒業させられた程度で、他人の運命を左右することをしてはいけない。
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