ようやく住み心地のよさそうなアパートをキナウというところに見つけて引っ越した。
しばらくしてブライアン家も大学の官舎を出て、エマーソンというところに越してきた。トシのところから近くで、歩いて行き来できたので、前にもまして交流を楽しむことができたのである。
なにより奥さんが作る夕食にしばしばありつけるようになったのは嬉しかった。
毎日というわけでなかったが、二日に一回は電話がかかってきて、食事の誘いがあったのである。
ブライアンは、当時よくジョギングをしていた。
暇な時間を見つけては走っていて、毎年ホノルルマラソンにも出ていた。
彼の走るコースは3つくらいあって、そのどれもトシの家の近くを走るようになっていた。
ジョギングの途中でトシのアパートの前で立ち止まり、玄関のブザーを鳴らしていたのである。
家に立ち寄って話しこむこともあったし、その後で夕食に誘ってくれて一緒に彼に家まで歩いて行っていた。
いつも招待を受けるばかりで、気おくれしないわけでもなかったが、そのことを言うと、
" We enjoy having dinner with you ! " ( 一緒に食事ができるのが楽しいのです! )ということで、もう遠慮をしないことにした。
( トシの美術館:クリスティのお母さんの花壇をスケッチ )
ハワイに着いた当初は、ゲストハウスを期限付きで提供されていた。
しかし期限が過ぎても住むべき場所がなかなか見つからなかったのである。
取り敢えずワイキキのコンドミニアムに泊まることにした。一週間単位で部屋を借りて、家が見つかるまで延長をしてもいいということで滞在していた。
トシの窮状を見かねたティムとサラ夫妻が、一緒に家さがしを手伝ってくれて、ようやく大学に近いというだけが取り柄のちょっとみすぼらしいアパートが見つかった。
どうゆうわけか住んでいるうちに、アパートにも周りの環境にも馴染んできて、特になにかに不具合を感じることがなくなっていた。
そんなわけで時間がたって行った。
或る時、夜に電話がかかって来た。
" Hello ! This is Ghittie speaking, you know ! " ( 私ギティです! )
とか言ったように記憶しているが、ギティという人にはまったく心当たりがない。
ひょっとして電話のセールスかなあとも思ってあたりさわりのない返事をしていた。ところが電話の途中で、ハッ!と思い当った。
以前家さがしのために、不動産業者を訪ね歩いていた時、あるビルの6階か7階のオフィスに行ったことがある。
奥の方にマネジャーと思える人がいて、カウンターに男性と黒人の女性がいいるごく小さなオフィスだった。
トシに応対したのがこの女性で、家賃がリーズナブルで、大学に近いことなどの条件を書類に書き込みながら話したことがある。
" You have ' credit ', I guess ? " ( ’クレディット’をお持ちですか? )
と言われて、その時はクレディットカードのことだと思った。
ところが、そうでなくて、クレディットというのは、「信用」のことで、不動産を貸す場合、この人が信用を置けるかどうかの社会的地位、保障、あるいは、ちゃんとした保証人がいるかどうかということのようだった。
トシの場合、大学での地位、身分証明、収入、更には、身分を保障する人ということになるが、ハワイに来たばかりで、「保証人」が問題だった。
付き合って間もないティム夫妻、大学の教授を思いついたが、知り合って間もない人たちで、出来ればこのようなことをお願いすることに逡巡していたのである。
保証人は みなさんどうされているんでしょう・・・
credit で思い出しました。
映画の終りなんかに流れる 「ending credit 」
というのがありますが、
その時に使うcredit はどういう意味なんでしょう??
誰も知り合いがいない時とか、困るでしょうね。
一年分位、前払いとか出来るのでしょうか?
未知の世界、この歳になっても興味があります。
それにしても、寒いですね。
ハワイに行きたくなるでしょう?
私も可能なら、2~3ヶ月滞在したいです。
仰るように、映画の最後に出てくる字幕をアメリカではクレディットと言っています。
映画の冒頭では、主演の俳優や監督、プロデューサーなどしか出て来ませんが、最後の字幕には、映画を作ることに携わった人、団体などすべて網羅してでてきます。
目撃者A、B,警官A、B、スーパーの店員、カメラ、照明、衣装、編集者など、あまり見る人には関心がない人も字幕に出て来ます。
あるいは、「この映画を作るに当ってロスアンジェルス市警には、ことのほか協力をいただいています。ここに謹んでお礼を申し上げます」などといった字幕などもできます。
これらを、英語で Ending credit と呼んでいます。
考えてみれば、当然のことですが。
ハワイに着いたばかりで、日本にはいくらでも保証人になる人はいるのですが、と言っても、これは通じませんでした。
このときは、まだブライアンとは知り合っていない頃で、後で奥さんにこのことを言ったら、笑いながら、いつでも保証人になってあげますよ、と言っていました。
それにしても寒いですね。
こんな時にハワイに行くと、着いてすぐ空港で薄着に着替えるのが大変です。