( 研究室近くのカフェテリア )
ブライアンの奥さんの研究室に寄っても、いないことが多い。
教室に講義に行っていることもあるし、コンピュータルームに行くこともあるし、会議、来客の応対などで外に出ることもあるのだ。
エレベータで5階まで上がって、彼女の部屋をノックしても返事が返ってくることの方が少ない。
別に、いなくてもどうっていうことはない。「今日もいないかあ!」と思いながら立ち去る。
どうしても会いたいときは、前もって電話をすればいいことである。事実彼女は、「電話をしてよ!」と言っているが、いればよし、いなければ残念でした、というくらいの気持ちである。
この前、いつものようにふらっと彼女の研究室に立ち寄り、たいして期待しないでドアをノックした。意外にも、" Yes ! " (イエス!)という声が聞こえてきたのには、むしろびっくりした。
ドアが開いて、彼女が顔を出し、 " Oh ! Yamada-San ! " ( オウ! ヤマダサン! )と言った。
その時は、もう午後の5時を過ぎていて、彼女はひと段落して、ちょうどブライアンに電話をして、一緒に帰ろうかと思案している時のようだった。
「ちょうど良かった!コーヒーを飲む理由ができた」と言った。「下のカフェテリアでコーヒーを飲みませんか?」
「そうしましょうか!」
彼女は、帰り仕度をして、カバンを持ち、ドアに鍵をかけ、一緒にエレベーターに乗った。
ハワイ大学には、いくつもカフェテリアがある。
大学直営のもあるし、街でよく見かけるマクドナルド、バーガーキング、パンダエクスプレス、ヤミー、ベアーズなど、色々な業者が店を開いている。
マノアガーデンに行けばビールを飲むこともできる。
ダウンタウンの医学部には立派なカフェテリアがあって、トシは、ここが気に入っていて、時々出かけたりしている。
夕食に時間も近いし、食事の時間ではなかったが、奥さんは、ウインドーを見ているうちに、急に、
「見て!あのエビ、おいしそう!」と言った。
まさかと思ったが、「エビを注文するから、二人で分けあわない?」
夕食前だし、それはないだろうとは思ったが、結局一人分のプレートとコーヒーを二人分注文してしまったのである。
プレートには、ピラフ、ブロッコリー、ポテイトなども乗っていた。
それを屋外のテーブルに運び、テーブルを挟んで対坐する形に座り、両側からつつき始めたのである。
( キャンパス内の研究室の横の通り )
( トシの美術館: クリスティのお母さんからもらった花を描いたもの )