「婦人画報」今月号(7月号)に音楽家の坂本龍一さんとアイスランドの作家、活動家、オピニオン・リーダーであるアンドリ・スナイルさんとの対談を中心としたアイスランド・ミニ特集が組まれています。
さて私の意見では、この対談は少々アイスランドでの変化についてポジティブ過ぎる点があるように思われますが、それでも対談自身は良いサジェスチョンに満ちていて面白いものです。
その「ポジティブ過ぎる点」と言えるのも実は今では4月末の国会選挙の結果を見て言える部分があるので、この対談が持たれた時点の2月3月とは異なった事実があるからなんです。この点では前回批判した「後出しジャンケン」です、スミマセン。

坂本龍一さん in Iceland
例えば対談の冒頭で坂本さんは「空前の金融危機から脱却し、アメリカ資本のアルミ工場と決別する方向へ歩み始めた最近のアイスランドの動向は、全人類にとって重要だと思います」とおっしゃってくださってますが、これは少々楽観的すぎるでしょう。
私自身もそうなのですが、まだ金融危機から脱却していないと感じているアイスランド人は多いと思います。特に負債を抱えている人たちは。脱却した、と感じている人も確かに多いかもしれません。昨今の消費の傾向などを見ていると、そう感じざるを得ない面もあります。
iPadやiPhone、贈答用の装身用ジュウェリーなどの売れ行きによると、一部の人々の消費活動はみるみる復活しているようです。でもそれがそのまま危機脱却の証左とはなりません。むしり「脱却したという錯覚」である可能性もあるのであって、そうだとしたら再びミニバブル崩壊の危険性もあることになります。
「危機脱却」を実感していない負債を負った人たちは、今回の選挙で左派政権の粛々とした政治路線にフラストレーションを募らせ、保守回帰しました。
「危機脱却」を実感または錯覚した人たちは、左派政権の高税路線に嫌気がさし保守回帰しました。つまりどちらも同じ保守回帰に行き着いたわけです。
というのが、私自身の今回の選挙に関する見方です。保守政権というのは独立党と進歩党(という名前の保守党)の連立であり、まさしく1990年代の後半から金融危機に至るまでの「ダム造り、外国資本誘致」路線を敷いてきた勢力です。
実際に政権交代以来、すでに新たなアルミ工場誘致とそのための発電所建設が政治日程に上がってきていますし、坂本さんのおっしゃったような「アルミ工場との決別」は早くもキャンセルされてしまった感があります。
アンドリさんは、先の金融危機を評して「金融破綻は男性の筋肉質的な考え方が原因で起きたと考えています。この国では文化的なムーブメントや環境保護運動は女性主導の場合が多いんです。そういった女性たちが、この国で活動的な同性愛者やアーティストらと結びついた。このグループの共通項は、境界線を広げることに貢献したということです。スーツを着た男性たちが引き起こした危機の責任をとったような形になりました」と述べていますが、このコメントには頷かされます。
アンドリさんはまた「問題なのは人間はユートピアを作ったら、次にディストピアを作るようになるということ」とも述べていますが、確かに今回の選挙に当たっての国民の選択はこの線に沿っているとも思えます。
前政権は経済危機の最悪のシナリオはなんとか回避したと評価していいでよう。しかしながら国民はそれよりももう少し良いところを期待していた。もう少し辛抱してより良いシナリオに書き換えるというよりは、別のシナリオを手にとる取る方を選んだ、といってよいでしょう。
そう考えると、私はアイスランドの将来に関してそうそう楽天的な立場には立てない気がするのです。
どのような政権であれ、つい最近の失敗から学ぶことを拒否せず、両極端に振れない路線を取ってほしいものです。
応援します、若い力。Meet Iceland
さて私の意見では、この対談は少々アイスランドでの変化についてポジティブ過ぎる点があるように思われますが、それでも対談自身は良いサジェスチョンに満ちていて面白いものです。
その「ポジティブ過ぎる点」と言えるのも実は今では4月末の国会選挙の結果を見て言える部分があるので、この対談が持たれた時点の2月3月とは異なった事実があるからなんです。この点では前回批判した「後出しジャンケン」です、スミマセン。

坂本龍一さん in Iceland
例えば対談の冒頭で坂本さんは「空前の金融危機から脱却し、アメリカ資本のアルミ工場と決別する方向へ歩み始めた最近のアイスランドの動向は、全人類にとって重要だと思います」とおっしゃってくださってますが、これは少々楽観的すぎるでしょう。
私自身もそうなのですが、まだ金融危機から脱却していないと感じているアイスランド人は多いと思います。特に負債を抱えている人たちは。脱却した、と感じている人も確かに多いかもしれません。昨今の消費の傾向などを見ていると、そう感じざるを得ない面もあります。
iPadやiPhone、贈答用の装身用ジュウェリーなどの売れ行きによると、一部の人々の消費活動はみるみる復活しているようです。でもそれがそのまま危機脱却の証左とはなりません。むしり「脱却したという錯覚」である可能性もあるのであって、そうだとしたら再びミニバブル崩壊の危険性もあることになります。
「危機脱却」を実感していない負債を負った人たちは、今回の選挙で左派政権の粛々とした政治路線にフラストレーションを募らせ、保守回帰しました。
「危機脱却」を実感または錯覚した人たちは、左派政権の高税路線に嫌気がさし保守回帰しました。つまりどちらも同じ保守回帰に行き着いたわけです。
というのが、私自身の今回の選挙に関する見方です。保守政権というのは独立党と進歩党(という名前の保守党)の連立であり、まさしく1990年代の後半から金融危機に至るまでの「ダム造り、外国資本誘致」路線を敷いてきた勢力です。
実際に政権交代以来、すでに新たなアルミ工場誘致とそのための発電所建設が政治日程に上がってきていますし、坂本さんのおっしゃったような「アルミ工場との決別」は早くもキャンセルされてしまった感があります。
アンドリさんは、先の金融危機を評して「金融破綻は男性の筋肉質的な考え方が原因で起きたと考えています。この国では文化的なムーブメントや環境保護運動は女性主導の場合が多いんです。そういった女性たちが、この国で活動的な同性愛者やアーティストらと結びついた。このグループの共通項は、境界線を広げることに貢献したということです。スーツを着た男性たちが引き起こした危機の責任をとったような形になりました」と述べていますが、このコメントには頷かされます。
アンドリさんはまた「問題なのは人間はユートピアを作ったら、次にディストピアを作るようになるということ」とも述べていますが、確かに今回の選挙に当たっての国民の選択はこの線に沿っているとも思えます。
前政権は経済危機の最悪のシナリオはなんとか回避したと評価していいでよう。しかしながら国民はそれよりももう少し良いところを期待していた。もう少し辛抱してより良いシナリオに書き換えるというよりは、別のシナリオを手にとる取る方を選んだ、といってよいでしょう。
そう考えると、私はアイスランドの将来に関してそうそう楽天的な立場には立てない気がするのです。
どのような政権であれ、つい最近の失敗から学ぶことを拒否せず、両極端に振れない路線を取ってほしいものです。
応援します、若い力。Meet Iceland
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