俺は、ギターの神様に失礼のないように、
体を拭き清め、パンツをはきかえ、うがいまでしてからアパートを出た(笑)。
服装もカッコよくバッチリ決めた。
電車で40分で川崎の「CLUB CITTA」に着く。
「ここか・・クラブ・チッタ!ここで会えるのか・・!!」
長い間、恋焦がれ(笑)夢にまで見た憧れのギタリストに会えるのだ。
まるで夢のようである。夢なら覚めないでくれ・・!!
ライブがはじまった。
間違いなく本物のS・ハケットがそこにいた。
俺は、1曲目の「ウォッチャー・オブ・ザ・スカイズ」で涙していた。
すでに感動していた。自分でも驚いた。もう涙が・・。
黄金期のジェネシスのメンバーとしては、S・ハケット以外はそこにはいない。
しかし、天才ドラマーF・コリンズの代わりに、(髪フサフサの)堅実なドラマーがいて、
カリスマヴォーカルのP・ガブリエルの代わりに、P・ガブ似の声の金髪のヴォーカル、
そして、T・バンクスの代わりに、2人のキーボードいて、
内1人は、サックスやフルートをこなすパーカッションを担当している。
ベースも相当な腕前だとわかる。プロフェッショナルなメンバーだった。
合計6人で、しっかりとジェネシスの名曲を奏でてくれた。
感動のあまり、俺は、2曲に一回は涙して、目の下をぬぐっていた。
クライマックスの大曲「サパースレディ」では、さらにヴォーカルが加わって、
その時には、もう感動の涙で、声が出そうになるのを耐えながらの沈黙の号泣だった。
それでも、足でドラムのリズムを刻んで、手でキーボードやS・ハケットの指を追い、
体を揺らしながら、曲全体の流れに乗って、ジェネシスに陶酔していた。
感動という名の美しい虹色の天使が、何人も俺の前に現れて、
「さあ、飛んでいきましょう」と誘っている。
俺が「ああ・・でも、僕には、空を飛べるような翼はないんです」と言うと
天使は「いいえ、ほら、貴方にも翼がありますよ」と言う・・。
自分の背中を見ると、本当に白くて大きな翼が生えていた。
そして、虹色に翼を羽ばたかせて舞い上がっていった。
空の雲の上の、S・ハケットが奏でるジェネシスという名の天国の世界へ・・。
S・ハケットが奏でるギターの世界に、俺は飛翔していた。
感動し、陶酔し、歓喜して滑空していた・・・。
20代で彼のギターに出会った。
ジェネシスのギタリスト、S・ハケットのリリシズム、ロマンチシズム、
大空を滑空するかのような爽快な心地よいギターの音色!!
遥かなる時を越えて、ようやく彼の姿を自分の目でとらえ、この耳で聴いているのだった。
その喜びといったら・・その嬉しさといったら・・!!
総立ちのアンコールでは、ついに「ファーズ・オブ・フィフス」が奏でられる。
これだ!!この曲でのハケットのギターが聴ければ、もう死んでもいい!!
そして、あの曲のあの・・あのギターが・・・・(泪×∞)!!!!
最高に幸せでした。
幸せな時間でした。
美しい虹色の夢のような音楽の世界に酔いしれました。
自分の人生において、あんな幸せなライブはもうないかもしれません。
そして、心から楽しく幸せだと思える時間って、
本当にあっという間に過ぎ去っていくものなのですね。
帰りの電車で、「スティーブ・ハケットは、まだ日本にいるんだな」と思うと、
それだけでもなぜか嬉しい気持ちになるのでした
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