モローは、美女を描ける才能を持った希少な画家である。
ただし、この人の絵は、マイナスの波動が怖ろしく強い。
それは、見る人の心にインパクトを与えるべく、魔性の女を選んで描いたからだ。
男を虜にして、最後はぶっ殺してしまう・・そういう類の女たちばかりを描いた。
それでいて美女なのだから非常に困った人なのである。
ご本人は「歴史画家」と言うほど、歴史上の(性悪)女に興味を持ったが、
古代神話にヒントを多く得ており、その多くは「幻想絵画」である。
今回の目玉が「一角獣」の絵で、そこに一つの凝縮されたモローを見ることができた。
一角獣は男性を象徴しているが、その眼は狂気を宿している。また、この世の物ではない。
片や、処女であり純潔の極みである女は、確かに美しいのだが、これもまた魔性を宿しているのだ。
こうしてみると、なかなか手強い画家である。一筋縄ではいかない。
少し前に、日曜美術館でモローをやっていたから、その理由も解けてはいた。
彼は、完全無欠のマザコンで、母とあと一人を除いては、女性と全く関わらなかった。
家の中に引きこもり続け、母に生活の全てをゆだねた暮らしの中で、ひたすら絵を描いた。
結婚はしなかったが、愛する女性もちゃんといたようで、それも母親と同タイプなのだった。
要するに、モローは、現実世界を見ず、ただただ自分の夢幻世界を見て、崇高な絵描きの人生を全うした人なのだ。
晩年、生徒たちも指導していたようだが、人生の大半を絵を描くことのみで完結させた。
絵に打ち込めるのであれば、彼はヒッキーでもマザコンでもよかったのかもしれない。
だからこそ、偉大な画家としても認められ、多くの画家にも影響を与えたのだろう。
日本でも、自分が尊敬する挿絵画家の武部本一郎さんに多大な影響を与えている・・。
長くなった・・(笑)
パナソニック汐留美術館を出て、腹部に、息苦しくドロドロしたものを感じていた。
モローは、確かに美女を描けたが、方向性は自分とは正反対である。
それでも、陰と陽を両方知らなければ、真の美女も描けないと思うので、いい勉強になった。
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