疾風の如く!

美人画と弓道に生きる日々。

ゆがけ物語

2012年04月24日 | Weblog





弓引きが、右手にはめる道具を弽(ゆがけ)という。

これがなくては、弓を引くことはできない特に大切な道具である。






この春、高校3年生になった近藤君(二段)が、道場に来ていた。

俺が更衣室に入ると、袴の紐をほどいて脱いでるところだった。



俺は「あれ?・・もう帰んの!?」

稽古は、まだ始まったばかりの時間帯だ。


近藤君は、笑いがなら言った「弽(かけ)を・・・忘れたんで・・・」


張り切って稽古に来たはいいが、肝心の弽を忘れたらしい(笑)

なんとも情けなさそうに帰っていく近藤君に俺は言った。



「近藤君・・・・・まだ今度(近藤)^^」

近藤君は、「ははは・・・」と仕方なさそうに笑った。






その日の稽古の終わりだった・・・

俺は、道場の外の総合運動場の広い更衣室に、大学生のB場さん(三段)といた。



稽古が終わったので、あとは着替えて帰るだけだ。

ちなみに、B場さんは、将来、歯医者さんになるセレブな男だ。

お父さんも歯医者さんなので、結構なお金持ちだが、人柄も良く、実に謙虚で善い人間である。

俺たちは、着替えながら談笑していたら、そこへ・・・・




Y沢さん(五段)がやってきた。

Y沢さんは右手に何か持っている「これ・・・B場さんのじゃないですか?」

それは、B場さんの弽だった。

道場に忘れてしまっていたのを、Y沢さんが見つけて、急いで追いかけてきて届けてくださったのだ。



B場さんは言った「あああーー!!すいません!ありがとうございます!!」

B場さんは、俺を見て言った「うわーー!!あぶねええ~~~~~!!



昨日は、1日に2人も、弽を忘れるのを、俺は目撃してしまった(笑)。





そんな今朝の稽古の時だった。

俺は、いつものように、皆さんと楽しく、そして真剣に稽古をしていたら、


俺の動き回るその先々で

「なにか、焦げ臭い匂いがするわね」とか「なにかクサイな」とか

「なにかしら?・・・なにか燻製のような臭いがするけど・・・なにかしら?」

と云う様な声が常々聞こえてくるのであったが、

どうやら、俺の真新しい弽から、発散されている臭いであった(笑)。



新しい弽独特の、鹿の皮を燻(いぶ)した臭いが、かなり強烈なのである。

今しばらく、道場の皆様方にも、我慢していただくしかあるまいが、

このクサイ臭いを「いい香りね」と言ってくださる方もいらした。^^



帰ってきて、歯を磨いていると、自分でも右手の臭さにとまどう(笑)。

弽をはずしても、この臭いは取れることがない。確かにかなりクサイ。



これが、いい香りなのだろうか??? 

俺は「うぅーん」と首をかしげだ。





そんなこんなの、それぞれの弽のお話でございました。







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